- 著者
-
髙根 雄也
伊藤 享洋
- 出版者
- 公益社団法人 日本気象学会
- 雑誌
- 天気 (ISSN:05460921)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.3, pp.149-163, 2021 (Released:2021-04-30)
- 参考文献数
- 42
2020年8月17日に静岡県浜松市で観測された日最高気温の歴代最高タイ記録41.1℃について,関連する観測データの特徴を調査した.まず,高温の背景要因を考察した結果,鯨の尾型に準ずる夏型気圧配置の出現とそれに伴う850hPa面の高温・概ね北西の一般風,東海地方における梅雨明け以降の連続晴天がその要因として示唆された.次に,高温の直接的な要因を考察したところ,伊吹山地を吹き下りる気流に伴うフェーン現象と,その後この気流が名古屋都市圏の地表面付近を吹走する際の顕熱供給(非断熱加熱)で気流そのものが高温化するメカニズムで浜松の高温がある程度説明できることが明らかになった.この高温化した風が浜松へ侵入し,浜松のすぐ東側の南風と収束したことが,浜松で最も気温が高くなった要因とみられる.以上のメカニズムは過去の国内における高温事例のメカニズムと類似していることから,上記の背景要因と直接的要因を兼ね備えうる他の地域においても今後40℃を超える高温が発生する可能性がある.