著者
伊藤 富士江
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.23-32, 2005

近年注目を集めている修復的司法観に基づく実践形態のひとつに,「被害者と加害者の対話(Victim Offender Mediation)」がある.VOMは,犯罪被害者と加害者のニーズに対応し,人間関係の問題解決を図るという点でソーシャルワーク実践としての要素を強くもち,被害者の回復を助長する可能性を有している.北アメリカやヨーロッパでは多数のVOMプログラムが実践され,従来の犯罪者中心の刑事司法に影響を与えてきているが,わが国ではVOMについての認知や理解はまだ限られている.本稿は,実践の蓄積があるアメリカのVOMを取り上げ,その実際,現状と課題について明らかにし,さらにわが国におけるVOMの可能性について被害者支援の視点から論じている.