著者
伊藤 昌夫
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
no.29, pp.33-50,図5p, 1969-12

この研究は,岩手県・平泉・中尊寺蔵の木彫古仮面3面のうちの,老女面と伝えられている仮面について,その造形上の特徴を,特に人体美学・美術解剖学の立場から計測・観察し,老女面に表現されている特異なdeformation(歪曲性)やasymmetry(左右非対象)などの美的効果について考察論及したものである。人体美学的方向からは,その形態的特徴の中心的要素を,私は特に2重捻転性による効果としてとらえることをこころみた。 また美術解剖学的方向からは,この老女面と一般的な老婆の表情とを比較し,老女面の歪曲性を矯正してみることによって,更にこの仮面の特異性を考察してみたものである。また,あわせて類似面の作例の比較を若干こころみた。