著者
佐藤 洋一 相澤 純 田島 克巳 伊藤 智範
出版者
岩手医学会
雑誌
岩手医学雑誌 (ISSN:00213284)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.75-87, 2019 (Released:2019-07-31)
参考文献数
28

科学における不正(偽造・捏造,改ざん,盗用)が繰り返し起きている.とりわけ,科学者の就職や昇進時において研究業績が求められるようになってから,不正の事例が表立って報告されるようになってきた.多くの事例を調べてみると,研究不正の動機として,1)知的満足感を得るため,2)周囲から注目されたいため,あるいはいたずら心,3)結論ありきで,ストーリーに沿ったデータを求める上司,あるいは本人,4)営利企業に有利な結果を出すことによる資金獲得という誘惑,があげられる.また,背景として若い時に受けた研究不正に関する不適切な指導と,実験研究の細部まで目を配ることができなくなった研究体制があげられる.査読や同僚評価,あるいは煩雑な不正防止規程は抑止策として十分とは言えない.研究不正は科学の進歩に計り知れない損害を与えるだけに,教育課程の中でしっかりした研究を実体験させる必要がある.