著者
伊藤 朋恭
出版者
大妻女子大学
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 (ISSN:13417843)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.149-159, 2007

化石燃料から排出される二酸化炭素が地球温暖化を引き起こしていることはすでに通説として定着している。確かに大局的に見れば温暖化に向かっており、少なくてもその一因が人為的二酸化炭素の排出にあることは確かであろうし、将来に備える予防的見地から対策を考えることは合理的である。しかし一方では人為的温暖化という通説を疑問視する見方も多く存在しており、その中には合理的な意見も少なくない。本稿ではこれらの懐疑的意見を5つに大別して整理することを試みた。懐疑論の中で最も中心的な意見は、温暖化に寄与している大きな要因は人為的なものではなく、太陽活動の変動などの自然現象にあるとするものである。残念なことに、これらの懐疑論の存在は世間からは事実上無視されている。なぜ無視される状態が生じているのか。その原因として二つ挙げることができる。一つは、温暖化がすでに科学の世界を離れて政治的課題になってしまっており、科学的な正当性を議論するよりは政治的判断が優先していることである。もう一つは、何事に関しても「悪いニュース」に偏りがちなマスメディアの報道姿勢である。人間活動がすべての原因であることを大前提として、「大変だ」という環境情報を一方的に報道する傾向にあり、結果的に一般大衆がそれ以外の要因の寄与について考える機会を奪っている。