著者
伊藤 真規 明石 惠子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-11, 2019 (Released:2018-12-13)
参考文献数
12

本研究の目的は、心肺停止で搬送された患者の家族援助に関する看護師と医師の役割について、看護師と医師の認識とそれぞれの認識の違いを明らかにすることである。救命救急センターに勤務する看護師7名と医師4名に半構造化面接を行い、家族援助に関する看護師と医師の役割を語ってもらった。そして、面接から得られたデータを質的記述的に分析し、カテゴリ化を行い、看護師と医師それぞれから抽出されたカテゴリを比較した。分析の結果、看護師の役割について、看護師・医師ともに死の受容の過程を支え、患者と家族の最期の場を整え、家族の心情に添ったケアを行うことなどを認識していた。ただし、患者搬送直後から家族とかかわるという役割の認識は看護師のみにあり、医師の認識と異なっていた。医師の役割については、看護師・医師ともに家族の精神的ケアを行い、死の受容の過程を支えるという認識があった。しかし、看護師は患者家族の意向に沿った処置と誠意のあるお見送りを役割として認識しているのに対して、医師は死因の究明と死亡後の処置を認識している点が異なっていた。心肺停止で搬送される患者の家族援助において、看護師と医師は同じような役割を認識していたが、家族が来院した直後や患者の死後における役割についての認識は異なっていた。この結果を理解し、認識が異なる役割について互いに認め合うことで、より質の高い家族援助が実践できるようになると考える。