著者
中村 美鈴 村上 礼子 清水 玲子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.1-12, 2013 (Released:2017-04-05)
参考文献数
19
被引用文献数
3

目的:救急領域における延命治療の選択を意思決定する家族と医師との話し合いのプロセスとそれに伴う医師の考えや行動を明らかにし、家族への看護支援について示唆を得る。 研究方法:救急領域における延命治療の選択について家族と話し合いの体験のある医師を対象に半構造化面接法を行った。分析は内容分析を参考に行い、時間軸に沿って話し合いのプロセスを構造化した。 結果:医師9名、面接平均時間37分。病状の説明、延命治療の選択の話し合い、家族への対応等に関する記述182、〈サブカテゴリ〉42、【カテゴリ】19であった。家族と医師の話し合いのプロセスは、「回復が見込めないと判断した時は、意思決定の時期を察してもらえるよう早い段階で話をする」→「まずは回復の見込みが無い状況をありのままに説明する」→「次に延命治療について具体的な話をする」→「決定する治療は医師が想定し、もう回復が望めない状況を理解して家族が意思決定できるよう話を進める」→「最終決断では、さらに状況の理解を確認し、家族で話し合って決めてもらう」→「治療方針の決定後は基本的にそれ以上の話し合いはしない」であった。さらに、医師の考えや行動のカテゴリは話し合いのプロセスに関連して構造化された。 結論:家族と医師の話し合いのプロセスを踏まえ、看護師は話し合いに可能な限り同席し、家族に十分な情報提供のもと、患者の気持ちを尊重した家族の意思決定が図れるための看護支援や意思決定後の家族への看護支援の重要性が示唆された。
著者
江㞍 晴美 篠崎 惠美子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.9-18, 2020 (Released:2020-06-06)
参考文献数
36

目的:集中治療後症候群(post intensive care syndrome;PICS)に対する看護支援の国内外の既存の文献をレビューすることで、国内のPICSに対する看護支援を検討する基礎的資料とする。 方法:CINAHL、PubMed、医学中央雑誌Web版を用いて、過去10年間の英語または日本語の文献を検索し、重複等を除外して研究目的に該当する14文献を対象とした。マトリックス方式を用いたうえで1編ずつコードとして表し、類似したコードをグループ分けした。 結果:PICSに対する看護支援は、離床に関する文献(2 件)、ICU(intensive care unit, 集中治療室)日記に関する文献(2 件)、継続的支援と評価に関する文献(9 件)、集中治療を受けた患者の語りに関する文献(1 件)に大別された。14文献の国別では、北欧7件、オランダ2件、米国5件で国内の文献は見当たらなかった。 考察:本研究の結果から、PICSに対する看護の動向として、離床とICU日記に関する内容、継続的支援と評価、集中治療を受けた患者の語りが行われていると考える。国内のPICS に対する看護支援の課題として、PICS について看護師が理解を深めて患者への長期的な支援を行うとともに支援の評価が重要である。また、多職種による継続的な支援体制の体系化が必要である。
著者
前田 晃史 八田 圭司 相馬 香理 新地 実花子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.19-25, 2016 (Released:2016-08-02)
参考文献数
24

2013年7月にヨード造影剤によるアナフィラキシーで心停止になった症例を経験した。その後、ヨード造影剤による異常薬物反応(ADR)の重症化に関連する臨床的特徴の検証のために、即時型ADR 55例を対象として調査を行った。2010年1月1日から2013年7月31日までの3年7カ月間に発症した即時型症例を軽症群(n=49)とアナフィラキシー群(n=6)に分け、2群間でヨード造影剤によるADRの危険因子を比較した。その結果、アナフィラキシー群の【年齢】(p=.034)、【過去の造影剤ADR既往】(p=.003)、【過去の造影回数】(p=.0007)、【造影剤浸透圧350mgI/mL以上】(p=.002)、【危険因子の項目数】(p=.037)の5項目が有意に多かった。A施設は、CT室とMRI室に医師が常在しておらず、医療安全の観点から、これらの重症化に関連する因子のある症例へは造影剤投与前に医師へ報告する基準作成を検討する。しかし、これらの因子に関係なくアナフィラキシーが発症する症例や救急では意識障害により情報が収集できない症例があるため、発症時には迅速に対応できる体制づくりも必要である。 本研究とADRの危険因子を比較した先行研究との異なる点が即時型ADR重症化の特徴であるといえる。しかし、先行研究からアナフィラキシーを含めたADRの危険因子をすべて抽出できておらず、抽出した因子の妥当性の検証も不十分であった。また、症例数も十分でなかった。そのため、重症化に関連する他の因子が存在する可能性がある。今後も危険因子の検証を含めた追加調査が必要である。
著者
山勢 善江 山勢 博彰 明石 惠子 浅香 えみ子 木澤 晃代 剱持 功 佐々木 吉子 佐藤 憲明 芝田 里花 菅原 美樹 中村 美鈴 箱崎 恵理 増山 純二 三上 剛人 藤原 正恵 森田 孝子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.37-47, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
20

2019年11月に中国で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、わが国でも全国に拡大し、2020年4月には第一波、夏に第二波、そして11月には第三波が到来した。 本学会では、COVID-19緊急事態宣言下での救急看護の実態と課題を明らかにすることを目的に、学会ホームページを通じて、本学会員を中心にWebアンケート調査を実施した。調査内容は、COVID-19患者への所属施設の対応、具体的対応、感染防止策、看護師の認識や思い等である。調査には425名が回答した。 多くの施設で、待合室や診察室として「新設の専用エリア」や「陰圧室」を使用していたが、「他患者と同じエリア」を使用していた施設もあり、ハード面の迅速な設置の困難さが明らかになった。また、半数以上の者が、感染防護具、看護師の不足を感じていた。さらに、救急看護師は未知の感染症への対応で、自分自身や家族への感染の恐怖、行政や所属施設、上司への不満などネガティブな感情をもつ者が多く、調査時点で心理的不安定を経験していた看護師は29.6%いた。 今後の医療の課題と対策には、感染対策指針やマニュアルの整備、検査体制の強化、ワクチンや治療薬の開発促進、専門病院の整備、専門的スタッフの配置、日本版CDCの設置、医療者への報酬増額があった。
著者
國松 敬介 石田 宜子 高見沢 恵美子 北村 愛子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.51-59, 2019 (Released:2019-03-07)
参考文献数
17

目的:二次救急医療機関で救急隊とのホットライン対応において看護師が感じる困難および対処について明らかにする。 方法:二次救急医療機関で現在救急隊とのホットライン対応を行っている救急外来看護師11名に対し半構成的面接調査を行い、逐語録を作成し、困難および対処を表す部分を抽出し、コード化・サブカテゴリ化・カテゴリ化した。 結果:ホットライン対応の困難は【救急隊から必要な情報が得られない】【患者受入困難に納得できない相手への対応に困る】【電話での医師との連携に困る】【医師と患者受入決定の折り合いがつかないことに困る】【知識不足で情報の収集や選択に迷う】【自分の判断や対応を相手に否定されて困る】【繁忙時、ホットラインに対応しきれずに困る】の7カテゴリであった。ホットライン対応の困難への対処は【アセスメントしながら欲しい情報を意図的に収集する】【医師が迅速に患者受入判断ができるよう情報伝達する】【医師や看護師へ調整を図り連携する】【相手と良好な関係を築くよう対応をする】【医療スタッフに相談する】【その場が円滑に収まる行動をあえてする】【他者や自己と対話する】の7カテゴリであった。 考察:ホットライン対応の困難から、看護師と他職種との連携不足や看護師の知識不足、救急隊との認識の違いが見出された。対処から、今ある知識や能力で工夫すること、多職種との連携強化が見出された。明らかになった困難と対処から、教育や連携への支援の一つとして、医師・看護師・救急隊との合同勉強会の実施が考えられた。
著者
伊藤 真規 明石 惠子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-11, 2019 (Released:2018-12-13)
参考文献数
12

本研究の目的は、心肺停止で搬送された患者の家族援助に関する看護師と医師の役割について、看護師と医師の認識とそれぞれの認識の違いを明らかにすることである。救命救急センターに勤務する看護師7名と医師4名に半構造化面接を行い、家族援助に関する看護師と医師の役割を語ってもらった。そして、面接から得られたデータを質的記述的に分析し、カテゴリ化を行い、看護師と医師それぞれから抽出されたカテゴリを比較した。分析の結果、看護師の役割について、看護師・医師ともに死の受容の過程を支え、患者と家族の最期の場を整え、家族の心情に添ったケアを行うことなどを認識していた。ただし、患者搬送直後から家族とかかわるという役割の認識は看護師のみにあり、医師の認識と異なっていた。医師の役割については、看護師・医師ともに家族の精神的ケアを行い、死の受容の過程を支えるという認識があった。しかし、看護師は患者家族の意向に沿った処置と誠意のあるお見送りを役割として認識しているのに対して、医師は死因の究明と死亡後の処置を認識している点が異なっていた。心肺停止で搬送される患者の家族援助において、看護師と医師は同じような役割を認識していたが、家族が来院した直後や患者の死後における役割についての認識は異なっていた。この結果を理解し、認識が異なる役割について互いに認め合うことで、より質の高い家族援助が実践できるようになると考える。
著者
鍬崎 美和 藤村 望 森 悟子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.29-36, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

目的:救命救急センターで働く中堅看護師の困難な状況を乗り越えさせる認知を明らかにすること。 方法:質的記述的研究デザインにより、A病院救命救急センターに新卒採用で入職した看護師経験年数4~7年目の看護師5名に半構成的面接調査を行い、得られたデータから6つの認知的変数に該当するデータを演繹的にコード化し、それらを帰納的に分析して、サブカテゴリー、カテゴリーへと統合した。 結果:〔対処可能性〕は【過去の体験を将来に活かす】【適切な対処を取れる】、〔信念〕は【逃げたくないというプライド】【やっぱり救急看護がしたい】等の4カテゴリー、〔期待〕は【能力を高めたい】【組織全体を見据えた目標】等の4カテゴリー、〔自己効力感〕は【自分自身の成長を実感】【同期の存在で頑張れる】【患者や家族との関わりが原動力】、〔考え方〕は【割り切りながら仕事をする】【腹をくくって仕事をする】【振り返ると悪いことばかりではなかった】等の7カテゴリー、〔構え〕は【リーダーとしての責任】【自分がやりたい所だから頑張れる】等の6カテゴリーで構成された。 結論:救命救急センターで働く中堅看護師は困難な状況に直面した時、誇りを持ち逃げずに立ち向かいたいと思いを持っていた。また、明確な目標を持ち柔軟な考えを持つことで自らの健康管理を行い、救急看護師としての自分を見失わないようにしていた。
著者
千明 政好 片貝 智恵 原田 竜三 濱元 淳子 山勢 博彰
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.23-30, 2013 (Released:2017-04-05)
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究は、救急看護の基礎教育や現場教育および専門教育に生かすことを目的に、多くの看護技術や能力の質問紙調査から重要な項目を抽出することで、「ここ1~2年救急看護の現場で重要性が高まっていると思われる技術・能力」および、「救急看護に携わる救急看護師に現在不足している(今後強化したい)技術・能力」を具体的に明らかにすることである。 全国の500床以上の救急科標榜病院200施設の救急看護経験が3年目以上の看護師400名に、独自作成した質問紙調査をした。その結果、ここ1~2年救急看護の現場で重要性が高まっていると思われる技術・能力は、「JNTECの実践」 、「災害時のトリアージ能力」 、 「災害や外傷者のストレスマネージメント能力」の順に重要と認識しており上位は「救急関連技術」であった。救急看護に携わる看護師に現在不足している(今後強化したい)技術・能力では、 「災害や外傷者のストレスマネージメント能力」 、 「災害時のトリアージ能力」、「インフォームドコンセントを確実に実施する脳死患者・家族」、「災害訓練時のリーダーシップ」、「フィジカルアセスメント能力がある」であった。災害看護関連や救急看護関連の技術や能力ばかりではなく、フィジカルアセスメント、家族ケアなどの技術・能力が不足していると認識していた。
著者
村川 由加理 作田 裕美 永井 春歌 島本 千秋 荒井 文恵 市村 由紀乃 田中 和代 松岡 仁美
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-9, 2020 (Released:2019-10-18)
参考文献数
14

目的:A病院救命救急センターにおいてシャドウイングによる新人教育を受けた新人看護師の気づきを明らかにすることである。 方法:A病院救命救急センターに勤務する新人看護師6名を対象に、シャドウイング新人教育後1カ月の時点において、「シャドウイング指導で学んだこと」をテーマに400字程度での自由記述を依頼し、収集した自由記述から、新人看護師の気づきを抽出し質的に分析した。 結果:シャドウイング新人教育による新人看護師の気づきは、①〈救命救急センター先輩看護師の看護の特徴〉と②〈救命救急センター看護師として私がこれから身につけなければならないこと〉に分類することができた。①では、【よりよい看護への使命】【ケアリングの実践】【安全と安楽と合理性の追求】【緻密な観察を重視する】【効果的なエビデンスの活用】【メンバーシップを発揮する】が抽出された。②では、【看護師に求められる姿勢の確立】【先輩から学ぶ】【貪欲な知識の摂取】【救急看護実践の習得】が抽出された。 結論:新人看護師育成に取り入れたシャドウイング新人教育により、新人看護師は、救命救急センター看護師の特徴をとらえながら同時に救命救急センターで必要な看護や看護専門職のアイデンティティの形成に必要な項目を能動的に導き出すことができていた。シャドウイングによる教育は、自己啓発や自己研鑽への意識を向上させる教育として効果が高いことが示唆された。
著者
林谷 学 升田 由美子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.19-29, 2021 (Released:2020-07-01)
参考文献数
28

救命救急センターで勤務する看護師のWork Engagement(以下、WE)に達成動機と自律性が及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。全国の救命救急センター288施設の中から、単純無作為標本抽出した120施設を対象とし、915名に郵送法による無記名自記式の質問紙調査を実施した。回答数329名(回収率36.0%)、有効回答数318名(有効回答率34.8%)を分析対象とした。UWES(Utrecht Work Engagement Scale)総得点の基準点に基づき低値207名(65.1%)、普通81名(25.5%)、高値30名(9.4%)に分類された。WE を従属変数、属性、就業内容、職務に関する認識、達成動機、自律性を独立変数とした重回帰分析の結果、達成動機測定尺度総得点、仕事への満足、継続意志、「看護婦の自律性測定尺度」総得点で影響があった。また、WE の下位概念である「活力」「熱意」「没頭」のすべてに「達成動機測定尺度」総得点が影響を示していた。達成動機は自分なりの基準で価値をおいた目標の達成であり、ポジティブな情動に繋がると考えられる。目標に向けて看護師が自らの責任で行動を起こすことは専門職としての自律につながり、WEに影響すると考えられる。看護師のWEに影響を及ぼす「達成動機」「仕事への満足」「継続意志」「自律性」はWE の規定要因である“個人の資源”であり、WE を高める要因であることが示唆された。
著者
大川 滋美 佐藤 直美
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-11, 2022 (Released:2022-03-30)
参考文献数
41

目的:救命救急センター勤務年数5年未満の看護師におけるSense of Coherence(首尾一貫感覚)、職業上のストレッサーと精神健康度の関連を明らかにする。方法:看護師経験年数10年未満かつ、救命救急センター勤務年数5年未満の看護師296名に質問紙を配布した。Sense of Coherence尺度29項目(以下、SOC-29)、臨床看護職者の仕事ストレッサー測定尺度(以下、NJSS)、GHQ精神健康調査票28項目(以下、GHQ-28)を用い、GHQ-28を従属変数、GHQ高群・低群間の比較において有意差のあった変数を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。結果:193名から回答を得た。看護師経験年数4.6±2.9年、救命救急センター勤務年数2.1±1.3年、精神的不調者が131名であり、精神健康度には、「把握可能感」と「看護職者としての役割に関するストレッサー」が影響していた。考察:職業経験の浅い看護師は、適切なフィードバックを受けるなどの「把握可能感」の形成につながる一貫性の体験が少ないと考えられた。また、「看護職者としての役割に関するストレッサー」には、キャリア発達段階によって求められる役割や救急領域の看護師に求められる役割への葛藤が考えられた。結論:精神健康度を改善するためには、「把握可能感」と「看護職者としての役割に関するストレッサー」の実態を明らかにし、介入方法について検討する必要がある。
著者
本田 智治 橋爪 可織 松浦 江美 永田 明 大山 祐介
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.20-28, 2022 (Released:2022-05-24)
参考文献数
18

目的:救命救急センターの救急外来における実習の学びの語りから、看護学生の体験を明らかにする。方法:成人看護学実習を履修し救急外来実習を選択したA大学3年次生の看護学生6名に半構造化インタビューを行った。インタビュー内容は、実習中の体験や実習指導者および教員のかかわり、実習前後の救急看護のイメージなどで構成し、質的記述的研究法を用いて分析した。結果:看護学生の救急外来での実習にかかわる体験を示すコードから12個のサブカテゴリーを抽出し、《メディアで形成された希薄な救急医療のイメージが実習によって具体的になる》《救急医療における医療者・患者・家族の姿から、医療現場の現実を学ぶ》《救急外来でも病棟と変わらない自分が学んだ看護が存在することを確認する》《救急看護師の姿を通じて自分の将来における選択肢が増える》の4個のカテゴリーが見出された。看護学生は、救急外来での実習によって現実的な救急医療を学び、患者や家族の感情の代理的経験をすることによって共感が生じていた。そして、救急外来における看護を確認し、将来の選択肢の拡大という変化が生じていた。結論:本研究では、救急外来の実習によって救急看護のイメージが具体的なものとなり、患者・家族、実習指導者である看護師の姿を通じて、救急医療の現実を学び、自分自身が学んだ看護を確認するとともに将来の選択肢が増えるという看護学生の体験が明らかになった。
著者
越道 香織 岡田 淳子 植田 喜久子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.33-41, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
33

心停止の発生場所は一般病棟が多く、急変の第一発見者は看護師である。そのため一般病棟の看護師の急変予測が可能になれば、多くの患者の生命を救うことになる。本研究は、一般病棟に勤務する看護師の急変予測の実態を明らかにし、急変予測の経験と関連する個人特性の検討を目的とした。一般病棟に勤務する看護師237名に質問紙調査を実施し、分析は記述統計とχ2検定、フィッシャーの直接確率検定を用いた。一般病棟の看護師は、意識レベルや血圧等を変化に気づく情報として入手していたが、呼吸数や検査データを入手する割合は少なかった。情報の入手方法は、モニターの数値や本人の訴えなど包括的に使用していた。しかし、観察を情報の入手方法として使用する割合は6割に満たなかった。生命危機につながるかの判断は、目の前で起きている患者の変化とこれまでの患者の様子を比較して正常か異常かを考えるなどを実施していた。急変予測の経験は、二次救命処置研修受講、急変対応の経験、急変に気づいた経験と関連があった。一般病棟の看護師が急変予測をより可能にするためには、呼吸数入手の重要性を認識し、急変に伴う検査データを解釈できるようになり、急変の前兆を見逃さない観察方法の習得が求められる。また、自身が経験した症例を振り返ることも重要である。そして、さまざまな研修を受講できる環境を整備し、急変予測の実施につながる支援を組織的に行う必要がある。
著者
野島 敬祐
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.11-18, 2016 (Released:2016-08-02)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究の目的は、救急外来のトリアージナースの役割や能力に関するストレッサーの内容を明らかにすることである。トリアージを導入している一次、二次および全次・ER型の救急告示病院の救急外来に勤務しているトリアージナース15名に対し、1回限り30分程度の半構造化面接を実施した。面接では、トリアージを行う中で、どのようなことにストレスを感じるか具体的に話してもらい、役割と能力に関する記述を抽出し、分析を行った。その結果、トリアージナースの役割に関するストレッサーの内容として、【人命にかかわるトリアージのプレッシャー】【患者や家族との対応】、能力に関するストレッサーの内容として、【トリアージの困難さ】【トリアージに必要な能力の不足】の4つのカテゴリーが抽出された。トリアージナースは医師の診察よりも先に問診を行い、1人で患者や家族の対応を行わなければいけない状況や、限られた時間でトリアージレベルを判定する能力の不足を感じているといったトリアージナースの特殊性に関するストレッサーが存在していた。そのため、トリアージナースのストレッサーを軽減させていく具体的な方策の必要性が示唆された。
著者
谷島 雅子 中村 美鈴
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.35-44, 2015 (Released:2017-04-05)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本研究の目的は、救急領域で終末期を考える際に、Do Not Attempt Resuscitationが選択または決定がなされ亡くなる患者が多いことに着眼し、救急領域における看護師が認識するDNARと、DNARと認識された患者の家族に対する看護実践を明らかにし、今後の看護支援を検討することとした。 研究方法は、質的記述的研究デザインとし、インタビューガイドを作成、同意の得られた3施設の看護師10名に半構造化面接法を用いた。得られたデータは、Klaus Krippendorffの内容分析を参考に分析した。 結果、看護師10名(女性8名、男性2名)より得られたデータからの分析は、DNARの認識に関しては、6カテゴリ、看護実践に関しては、8カテゴリが見出された。 看護師が認識するDNARは、医学的見地からの認識、家族の様相からの認識、看護の視点からの認識の3つの要素が相互に影響していたと考えられる。家族に対する看護実践において、【突然の入院による家族の心情を考え、待機している状況を把握し休息が取れるように調整する】、【生命維持困難な患者のケアを家族のペースで参加できるように配慮する】、【短期間で死を迎える家族が、患者との最期の時間を過ごす環境を整える】は、入院後DNARと認識された患者の家族に対して行われる特徴的な実践内容と考えられる。 今回の調査で抽出された実践内容は、DNARが選定された患者の家族に対して、どれも重要な看護実践であり、今後も継続していく重要性が示唆された。
著者
日坂 ゆかり 柿田 さおり
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-8, 2020 (Released:2020-06-06)
参考文献数
16

目的:意識障害と高次脳機能障害や片麻痺のある脳出血患者の、発症直後からの意識障害や病態が回復する過程での自己の障害に対する認識の変化を明らかにした。 方法:脳出血を発症した複数の障害のある患者に対して参加観察を行い、研究対象者の言動や表情、その時の出来事、診療記録をデータとして質的記述的に分析した。 結果:対象者は50代前半の男性で、右被殻視床混合出血・脳室穿破と診断され、発症時は中等度の意識障害と高次脳機能障害や左片麻痺を認めた。参加観察は発症直後から転院までの18日間行い、意識障害の回復に伴い第1期〜第4期にデータを分類し、自己の障害の認識の変化を明らかにした。第1期は自己の障害を認識していない、第2期は自己の障害の認識はあるが一時的なものと考えている、第3 期は自己の障害による日常生活動作の困難さを認識する、第4期は自己の障害が完全には治らないことを認識する時期であった。 考察:発症時に脳出血による意識障害と片麻痺のある本症例では、発症後数日は自己の障害に対して認識がなく、 意識障害の回復に伴って自己の障害が治らないことを認識していった。中等度の意識障害のある時期は、苦痛の軽減や生理的欲求の充足を行い、記憶できなくても繰り返しの説明が重要である。意識障害の回復や病状の安定に伴い日常生活動作を拡大する訓練を行いながら、患者の自己の障害の認識に合わせた支援が重要である。
著者
工藤 晴美 田中 絵弓 蓬田 淳 梶原 絢子 中島 美和
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.40-48, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
12

本研究は、救急外来における酩酊状態にある患者の現状を把握し、看護実践の課題を明らかにすることを目的とした。救急外来看護師を対象に、無記名自由記述式質問紙調査を行い、質的帰納的に分析を行った。分析の結果、酩酊状態にある患者に対する看護実践の課題は、【飲酒による行動予測の困難さ】、【飲酒による判断力の低下に関連した対応困難事象】、【院内での迷惑行為】、【不測の事態への医療者の心理的負担】、【酩酊状態にある患者・付き添い者のケアにおける苦慮】に分類された。結果より、酩酊状態にある患者は、意思の疎通が図り難く、行動の予測が困難で、迷惑行為による医療者への危害の可能性がある中で、看護師は状況に応じて看護実践を行っていることが明らかとなった。さらに、酩酊状態にある患者の症状は一時的であるため、軽症と認識される傾向になる中で、その看護実践に焦点を当てた報告は少なく、対応に苦慮していた。救急外来という時間的制限がある中で患者や付添者を含めた再発予防への指導が必要であるため、飲酒行為の背景を情報収集しながら、状況に応じた危険予測、患者指導を含めたツールの作成が必要である。
著者
鈴木 ゆか 城丸 瑞恵
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.67-75, 2015 (Released:2017-04-05)
参考文献数
18

クリティカルケア領域において患者の命に関わる気管チューブの自己抜管予防は重要課題である。しかし自己抜管体験者としての看護師に生じる感情、行動などに着目した研究は十分ではない。本研究では自己抜管を体験した看護師が抱いた感情、さらにその後の行動変化について明らかにすることを目的とした。関東圏内A病院のクリティカルケア領域の看護師7名に半構造化面接を行い分析した。 その結果、自己抜管を体験して起こった感情として、【自己抜管事例を体験した衝撃と恐怖】、【自己抜管事例を起こした自分に対する不信感】、【自己抜管予防は不可能という感情】、【患者は信じてはいけないという感情】の4カテゴリーが生成され、自分と患者・スタッフに対して不信・怒り・諦念などの感情を抱くことが明らかになった。体験した自己抜管事例に対する問い直しとして【援助の適切さに対する自分自身の問い直し】、【他者からの言葉による問い直し】、【仕事環境に対する問い直し】、【自己抜管原因を探求した問い直し】の4つが生成され、実施した援助の問い直しを行うことで、体験を消化する過程がみられた。自己抜管事例体験後の行動変化として、【予防に重点をおいた援助への変化】、【アセスメントする視点の変化】、【チームで協力しようとする行動への変化】の3つが生成された。研究参加者は一連の過程を通して多くの学びを得たことが伺われ、リフレクションが有用である可能性が示唆された。