著者
山根 恒夫 モハメドモザメル ホック 伊藤 純代 清水 祥一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
油化学 (ISSN:0513398X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.625-631, 1986
被引用文献数
4 36

<I>Pseudomonas fluorescens</I>産生のリパーゼによるとうもろこし油のグリセロリシス反応を小型かくはん槽中で, 回分式実験によって調べた。試料をクロロホルムで抽出, 濃縮し, トリグリセリド (TG), 1, 2-ジグリセリド (1, 2-DG), 1, 3-ジグリセリド (1, 3-DG), 1-モノグリセリド (1-MG), 2-モノグリセリド (2-MG), 遊離脂肪酸 (FFA) の含量をTLC/FID分析計で定量した。かくはん速度の影響を調べたところ, 350rpm以上では, 反応の初速度は一定であった。反応の経時変化を調べたところ, 反応の初期には, 1, 2-DGが1, 3-DGより多く生成したが, 後期に逆転した。MGの2つの異性体のうち, 1-MGが大部分で, 2-MGはほとんど生成していなかった。反応の初速度は酵素濃度に比例した。水分濃度が低いと反応はほとんど起こらなかった。グリセリン中の水分が4%以下では, FFAは生成しなかった。4%以上では, FFAの生成初速度は水分のほぼ2.7乗に比例して増大した。初速度の温度依存性はアレニウスの式に従い, 活性化エネルギーは6.13kcal/molであった。反応平衡時の組成は, 全反応液重量中に占める油の重量割分 (15~35%の範囲), 反応温度 (25~65℃の範囲), 及び酵素濃度によっては変化しなかった。反応平衡時の組成は, 水分濃度によって大きく変動した。グリセリン中の水分が4%以下では, 平衡時の反応生成物中にFFAは存在しなかった。