著者
菅野 道廣
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.217-222, 2017 (Released:2019-08-05)
参考文献数
31

本誌17巻第2号(2017)に掲載されたビタミンとしてのコリンの生理活性についての日比野の論文1)は関連分野の理解に大いに資するものであが,コリンの代謝産物で,健康と関わりがあるトリメチルアミン-N-オキサイド(TMAO)に関しては割愛されている。 摂取したコリンの一部は腸内細菌によってトリメチルアミンに変換され体内に取り込まれ,肝臓においてTMAOに変換され,動脈硬化の危険因子となることが指摘されている。したがって,TMAOは安全性と関わる成分でもある。実際には,コリンはそのものとしてよりも大部分がホスファチジルコリン(PC)として摂取れているが,PCは動脈硬化予防的に働くことが指摘されていて,問題は複雑である。卵はコリンのよい供給源であり(Lタイプで147 mg),1 日1~2個程度の摂取では血清中のTMAOレベルの上昇は認められないようである。腸内細菌との関わりは,コリンの認知機能とも結びつく興味深い話題の1つでもある。
著者
奥山 治美 山田 和代 宮澤 大介 安井 裕子 市川 祐子
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.8, no.10, pp.421-427, 2008 (Released:2013-06-01)
参考文献数
24

“動物性脂肪とコレステロールの摂取を減らして高リノール酸植物油を増やすと, 血清コレステロール値が下がって心疾患が予防できる” というコレステロール仮説は誤っていた。この説に基づく指導を長期に続けても血清コレステロール値は下がらず, むしろ心疾患死亡率が上がり, 寿命が短くなることがわかった。一方, 大部分の人 (40~50歳以上の一般集団) にとっては, 血清コレステロール値が高い群ほど癌死亡率が低く長生きであった。すなわち, “飽和脂肪酸に富む動物性脂肪が血清コレステロール値を上げ, 心疾患の危険因子となっている”, と考える根拠は崩壊した。心疾患の危険因子はコレステロールではなく, 摂取脂肪酸のn-6/n-3バランスであった。最近トランス脂肪酸 (水素添加植物油) の安全性の問題が再びクローズアップされ, 代替油脂としてパーム油がわが国の供給植物油の20%を占めるまでに至っている。しかしパーム油は動物実験で発癌促進, 寿命短縮などの有害作用を示す。他にも動物に類似の有害作用を示す食用油が数種ある。このような安全性の確立していない植物油に対し, 動物性飽和脂肪 (バター, ラードなど) の安全性が強調できる。メタボリック症候群の危険因子はタンパク質, 糖質を含めた栄養素の過剰摂取による過栄養 (over-nutrition) であり, 動物性脂肪は肥満にならない範囲で安全に摂取できる。
著者
青山 敏明
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.3, no.8, pp.403-410,386, 2003-08-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
65
被引用文献数
2

中鎖脂肪酸は, 通常油脂中の長鎖脂肪酸と消化吸収性が大きく異なり, 肝臓に直接運ばれ, 素早く酸化されてエネルギー源となる。この結果, 食後の熱産生が高く, 食後の血中トリグリセリド濃度が上昇しない。また, 中鎖脂肪酸は通常の条件で安全と確認されている。最近, 中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール (MCT) および中・長鎖トリアシルグリセロール (MLCT) の体脂肪蓄積抑制効果がヒトの長期摂取試験で示された。このMLCTは, 中鎖脂肪酸が比較的少量であるが体脂肪蓄積抑制に有効であり, 汎用食用油として有用である。
著者
八木 雅之 髙部 稚子 石崎 香 米井 嘉一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.67-73, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
55

糖化(glycation)はアミノ酸やタンパクと還元糖の非酵素的な化学反応で生体内のさまざまなタンパクに起こる。糖化したタンパクはカルボニル化合物を中心とする糖化反応中間体を経て,糖化最終生成物(advanced glycation end products: AGEs)に至る。糖化ストレス(glycative stress)は還元糖やアルデヒドによる生体へのストレスと,その後の反応を総合的にとらえた概念である。糖化ストレスの評価には糖化反応の過程で生じるさまざまな物質がマーカーとなる。糖化ストレスマーカーには,血糖,糖化タンパク,糖化反応中間体,AGEsがある。抗糖化作用の評価には,タンパクと還元糖を含むリン酸緩衝液中に試料を添加して反応させた後,生成したAGEsや糖化反応中間体の量を測定する。既に,多くの食品,化粧品素材に抗糖化作用が見つかっている。我々はこれらの素材を利用することで糖化ストレスによる老化や疾患を予防できる可能性がある。
著者
小倉 英史
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.13, no.11, pp.533-538, 2013 (Released:2016-02-01)
参考文献数
8

近年,柔軟仕上げ剤市場は拡大傾向にある。従来,柔らかさ等の風合いが重視されてきたが,次々と 「香り」 を訴求した柔軟仕上げ剤が市場へ導入されている。香りも,単に良い香りがするだけでなく,その香りが強く,長く持続することも求められるようになってきた。また,柔軟仕上げ剤の香りは,機能性向上,心理的作用へも寄与する。本稿では,柔軟仕上げ剤の 「香り」 にフォーカスし,良い香りを持続するための技術開発,および香りの効果・効能に関する研究について解説する。
著者
Hiroaki Fujimori Masayoshi Hisama Hiroharu Shibayama Masahiro Iwaki
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.429-436, 2009 (Released:2009-07-08)
参考文献数
26
被引用文献数
8 12

Four types of phytoncide solutions (A-Type, AB-Type, D-Type and G-Type) was evaluated for reduction of cell damage induced by oxidative stress, ultraviolet A (UVA), ultraviolet B (UVB), hydroxyperoxide (H2O2) and t-butyl-hydroperoxide (t-BHP); stimulation of collagen synthesis against UVA irradiation; and inhibition of matrix metalloproteinase-1 (MMP-1) activity induced by UVA in human normal dermal fibroblasts and human reconstituted skin model. The A-Type, AB-Type, D-Type and G-Type of phytoncide solutions pretreatment resulted in significant protection against cell damage induced by UVB, UVA, H2O2 and t-BHP. The amount of type I collagen following UVA irradiation was increased by treatment with phytoncide solutions in a concentration-dependent manner. On the other hand, phytoncide solutions also suppressed the excess MMP-1 irradiated UVA in a concentration-dependent manner. These effects of G-type solution were superior to those of other types solutions.
著者
Kana Kikegawa Kyuuichirou Takamatsu Masaru Kawakami Hidemitsu Furukawa Hiroyuki Mayama Yoshimune Nonomura
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.383-389, 2017 (Released:2017-04-03)
参考文献数
32
被引用文献数
1

Hierarchical structures, also known as fractal structures, exhibit advantageous material properties, such as water- and oil-repellency as well as other useful optical characteristics, owing to its self-similarity. Various methods have been developed for producing hierarchical geometrical structures. Recently, fractal structures have been manufactured using a 3D printing technique that involves computer-aided design data. In this study, we confirmed the accuracy of geometrical structures when Koch curve-like fractal structures with zero to three generations were printed using a 3D printer. The fractal dimension was analyzed using a box-counting method. This analysis indicated that the fractal dimension of the third generation hierarchical structure was approximately the same as that of the ideal Koch curve. These findings demonstrate that the design and production of fractal structures can be controlled using a 3D printer. Although the interior angle deviated from the ideal value, the side length could be precisely controlled.
著者
山口 進
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.283-288, 2012 (Released:2015-02-01)
参考文献数
20

最近のいくつかの研究はアラキドン酸(AA)が食品の美味しさを向上させる効果があることを示唆している。少量のAA含有油脂を植物油脂に添加し,コロッケや炒飯,野菜スープの調理油として使用したところ,それらの食品は通常の植物油脂で調理した時と比べ,うま味やコク味や後味が向上した。 また,鶏肉の味はその鶏にAA を給餌することよって改良できる。鶏肉中のAA含量はその鶏に給餌する餌中のAA含量に比例して増加し,餌によってAA含量が異なるように調製した鶏肉を官能評価したところAA含量の高い鶏肉は低いものより,うま味やコク味が高まった。このようなAAによる食品の美味しさ向上効果のメカニズムを考察するため,本総説ではAAが味覚感知に影響を及ぼすことを示す研究例をいくつか紹介した。その1つとして,マウスを用いた実験によりAA酸化生成物がうま味成分であるグルタミン酸ナトリウムや甘味成分であるショ糖に対する味覚感受性を増強したことが示されている。これらの研究成果は油脂や脂肪酸が食品の味を感じる上で果たす役割の理解や,より美味しい食品の開発への応用に有用であると考える。
著者
Khurram Rehman Mohd Cairul Iqbal Mohd Amin Ng Pei Yuen Mohd Hanif Zulfakar
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
pp.ess15256, (Released:2016-02-15)
被引用文献数
6

Fish oil is composed of various fatty acids among which omega-3 fatty acids are considered as most beneficial. The effects of fish oil on the activity of a topical anticancer drug, imiquimod, and the immunomodulatory activity of omega-3 fatty acids was investigated in human basal and squamous cell carcinoma cell lines. Imiquimod-fish oil mixture exhibited higher carcinoma cell growth inhibition and immunomodulatory activity than imiquimod alone, especially against squamous cell carcinoma cells. Omega-3 fatty acids exhibited growth inhibition of both basal cell and squamous cell carcinoma cell lines and modulated the immune response. Omega-3 fatty acids of fish oil serve as inducers of interleukin-10, an anti-inflammatory cytokine, and as suppressors of interleukin-6 and tumor necrosis factor-alpha, which not only depress tumor growth but also adequately control the inflammatory side effects of imiquimod. Thus, imiquimod administration with fish oil could be beneficial for inhibition of non-melanoma skin carcinoma cells but further in vivo studies are needed to understand their role in skin cancer.
著者
Taiki Miyazawa Kiyotaka Nakagawa Fumiko Kimura Yuya Nakashima Isao Maruyama Ohki Higuchi Teruo Miyazawa
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.773-779, 2013 (Released:2013-10-02)
参考文献数
22
被引用文献数
3 7

Chlorella contains a high amount of carotenoids, especially lutein, and has received attention as a possible dietary source for improving carotenoid levels in human blood. In the present study, we performed a 2-month single arm human study, and investigated the efficacy of Chlorella supplementation (9 g Chlorella/day; equivalent to 32 mg lutein/day) on lutein and other carotenoid concentrations in plasma as well as erythrocytes of 12 healthy subjects. Following Chlorella supplementation, lutein was the predominant carotenoid in erythrocytes, showing a 4-fold increase (from 14 to 54 pmol/mL packed cells). After the one month without Chlorella ingestion, erythrocyte lutein then decreased to a basal level (17 pmol/mL packed cells). Erythrocyte carotenoid (lutein, zeaxanthin, α-carotene, and β-carotene) levels were proportional to plasma carotenoid levels. The results suggest the transfer of Chlorella carotenoids, especially lutein, from plasma lipoprotein particles to the erythrocyte membrane. Chlorella intake would be effective for improving and maintaining lutein concentrations in human erythrocytes.
著者
高木 周
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.10, no.9, pp.317-322, 2010-09-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
11

水中に存在する微細な気泡は, その比表面の大きさおよび液中での停留時間が長いことから気液反応の促進を目的とした化学反応器や水処理の曝気槽などで有効に利用されている。また, 医療応用と関連した分野では, 直径5ミクロン以下の微細なマイクロバブルは, 静脈への注射を通して超音波血管造影剤としてすでに利用されており, 最近では, このマイクロバブルに改良を加え, 血1流を利用したドラッグデリバリー担体としての利用も考えられている。本稿では, マイクロバブルに関する研究について最近の研究動向を紹介した後, 気泡サイズや発生数などの制御性に優れ, 将来の医療応用も期待できるマイクロチャネルを利用したマイクロバブル生成法について紹介する。
著者
髙谷 正敏
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.13, no.9, pp.423-428, 2013 (Released:2016-02-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

エリスリトールは,ショ糖の約75%の甘味をもつ四炭糖の糖アルコールである。ブドウ糖を原料として酵母の発酵により生産される “ブドウ糖発酵甘味料” であり,糖質では唯一のカロリーゼロの甘味料である。消費者の健康志向を背景として,エリスリトールは,あらゆる分野での低カロリー製品の検討やシュガーレス菓子の検討などに利用されている。本稿では,エリスリトールの生理的特性や物理化学的特性を中心に紹介し,その特性を利用した使用例についても紹介する。
著者
丸山 武紀
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.259-266, 2013 (Released:2016-02-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2

トランス脂肪酸を摂取すると心疾患のリスクが高くなることが明らかになってきた。そのため,米国などではトランス脂肪酸を表示している。デンマークやスイス,オーストリアでは使用を規制している。 我が国では,食品安全委員会が日本人の摂取量はWHOが勧告した量を下回るので,通常の食生活では健康への影響は小さいと発表した。これにより国民のトランス脂肪酸に対する関心は薄らいだ。しかし,すべてが解決したわけではないので,本報告はトランス脂肪酸の現状を解説した。

3 0 0 0 OA 吸着の化学

著者
安部 郁夫
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.2, no.5, pp.275-281, 2002-05-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
15

3 0 0 0 OA 泡の化学

著者
小山内 州一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.1, no.8, pp.863-870, 2001-08-01 (Released:2013-04-25)
参考文献数
25
被引用文献数
2 3
著者
Valtcho D. Zheljazkov Charles L. Cantrell Tess Astatkie Ekaterina Jeliazkova
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.195-199, 2013 (Released:2013-03-28)
参考文献数
23
被引用文献数
7 28

Lavender (Lavandula angustifolia Mill.) is one of the most widely grown essential oil crops in the world. Commercial extraction of lavender oil is done using steam distillation. The objective of this study was to evaluate the effect of the length of the distillation time (DT) on lavender essential oil yield and composition when extracted from dried flowers. Therefore, the following distillation times (DT) were tested in this experiment: 1.5 min, 3 min, 3.75 min, 7.5 min, 15 min, 30 min, 60 min, 90 min, 120 min, 150 min, 180 min, and 240 min. The essential oil yield (range 0.5-6.8%) reached a maximum at 60 min DT. The concentrations of cineole (range 6.4-35%) and fenchol (range 1.7-2.9%) were highest at the 1.5 min DT and decreased with increasing length of the DT. The concentration of camphor (range 6.6-9.2%) reached a maximum at 7.5-15 min DT, while the concentration of linalool acetate (range 15-38%) reached a maximum at 30 min DT. Results suggest that lavender essential oil yield may not increase after 60 min DT. The change in essential oil yield, and the concentrations of cineole, fenchol and linalool acetate as DT changes were modeled very well by the asymptotic nonlinear regression model. DT may be used to modify the chemical profile of lavender oil and to obtain oils with differential chemical profiles from the same lavender flowers. DT must be taken into consideration when citing or comparing reports on lavender essential oil yield and composition.
著者
高村 仁知
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.7, no.6, pp.231-235, 2007-06-01 (Released:2013-06-01)
参考文献数
9

脂質に含まれる多価不飽和脂肪酸は構造的に酸化されやすく, 食品においては調理加工や保存の過程などで酸化をうける。その結果, 生じた脂質酸化生成物には食品の風味を損なう, 毒性を有するなど, 食品の品質に悪影響をもたらすものがある。大豆においては, リノール酸がリポキシゲナーゼによって酸化されて生成するリノール酸13S-ヒドロペルオキシドから豆臭の主成分であるヘキサナールが生ずる。大豆種子に存在する3種のリポキシゲナーゼアイソザイムのうち, L-2アイソザイムがヘキサナール生成に最も寄与し, L-3アイソザイムは逆にヘキサナール生成に寄与せず, 逆にヘキサナール生成を抑制する。一方, 魚においては, 従来, トリメチルアミンが魚臭の主成分であるとされてきたが, イコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸などの酸化劣化に由来する多くのカルボニル化合物が存在すること, これらの化合物はさまざまなにおいを有しており, これらのにおいが相まって魚臭となっていることが明らかとなった。
著者
八田 一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.147-153, 2011-05-01 (Released:2013-07-18)
参考文献数
22

産卵鶏の血液IgG抗体は卵黄中へ蓄積される。これは親鳥が獲得した免疫を子孫に伝えるためである。卵黄中の抗体はIgYと呼ばれている。従来, 特異的抗体はウサギやヤギを特定抗原で免疫し, その血液からIgG抗体として得られているが, 現在では鶏を免疫して, その卵から特異的IgY抗体を得ることが可能である。IgYは対応する抗原に対して, ほ乳類の血清IgG抗体と同様の特異性を有し, 臨床検査試薬として有効に利用可能である。また, IgYのその他の重要な利用法として, 病原体や毒素抗原に対して調製したIgYで病原性や毒性を中和する受動免疫療法があげられる。本稿ではIgYの用途として, 臨床検査薬分野への応用および感染症予防分野への応用について紹介する。