著者
伊藤 芳恵 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.52-58, 2017 (Released:2022-09-03)
参考文献数
25

機能性月経困難症は月経のある女性の約半数が経験する婦人科疾患で,激しい下腹部痛によりQOLの低下及び経済的損失が報告されている.本疾患の疼痛管理として経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation: TENS)の研究が報告されているが電極貼付部位は様々である.本研究の目的は機能性月経困難症に対するTENSの鎮痛効果を電極貼付部位に着目して調査することである.医師に機能性月経困難症と診断され,特に疼痛の強い女子学生2名を対象にTENSの介入研究を行った.調査期間は月経3周期とし,各周期でそれぞれ設定した電極部位の鎮痛効果を調査した.電極部位は,Th12/L1/L2とS2/S4デルマトームに電極を貼付する群(全髄節刺激),Th12/L1/L2デルマトームのみに電極を貼付する群(一部髄節刺激),無関係なL3/L4デルマトームに電極を貼付する群(非髄節刺激)とし,TENSの刺激は月経痛が強くなった時から60分間実施した. TENS前後にVisual Analog Scale(VAS)とMcGill Pain Questionnaire-Short Form(MPQ-SF)を測定した.VAS値は全髄節刺激で37.5±16.5 mm,一部髄節刺激で64.0±14.0 mm,非髄節刺激で18.0±7.0 mm低下した.MPQ-SF(情緒的項目)の改善が認められた.VAS値は一部髄節刺激,全髄節刺激で30.0 mm以上低下し,臨床的に重要な鎮痛が可能だった.MPQ-SFの結果より,鎮痛による精神的苦痛の改善が期待できる可能性がある.