著者
西 祐樹 生野 公貴 南川 勇二 中田 佳佑 大住 倫弘 森岡 周
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.21-22, (Released:2023-02-08)

本研究では,しびれ感を呈する中枢神経系疾患におけるしびれ同調経皮的電気神経刺激(TENS)の効果を検証した.しびれ感を呈する脳卒中患者2名,脊髄損傷患者2名,多発性硬化症患者1名の5名における上肢計8部位を対象とした.介入手続きは,マルチプルベースラインデザインを採用し,ベースライン期,介入期,フォローアップ期を28日間の間で設定した.介入期は7日間とし,しびれ感に同調したTENSを1日1時間で実施した.各期において,しびれ感の強度をNRSにて毎日聴取した.症例間効果をケース間標準化平均値差,症例内効果をTau-Uにて算出した.その結果,症例間効果では,しびれ感はしびれ同調TENS介入期に有意に改善し,その効果量も高いことが示された.また,フォローアップ期においても,その効果は持続していた.一方,症例内効果は全症例において介入期で高い効果量を認めたが,脊髄損傷患者1名の両手指は同一疾患の他症例と類似した重症度にもかかわらず,フォローアップ期で有意な改善を認めなかった.中枢神経障害によるしびれ感に対するしびれ同調TENSの一定の有効性を示唆されたが,介入効果に関わる要因について詳細な調査が必要である.
著者
中村 潤二
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.2023-013, (Released:2023-06-12)

近年の医療技術の発達とともに新たな物理療法モダリティの開発やエビデンスの確立が進んでいる.新たなモダリティとして,体外衝撃波療法(Extracorporeal shock wave therapy: ESWT)や迷走神経刺激(Vagus nerve stimulation: VNS)の報告が増加している.ESWTは,発生させた衝撃波や圧力波を経皮的に照射する方法であるが,ESWTは整形外科疾患の鎮痛や身体機能の改善に影響する.また近年では,脳卒中などの中枢神経疾患の痙縮に対して副作用の少ない方法として報告されており,さらなる発展が期待される領域の一つである.VNSは,侵襲的または経皮的に迷走神経に電気刺激を行い自律神経系に影響を与えることで,関節リウマチや脳卒中後の上肢運動障害,パーキンソン病の運動障害やすくみ足など,広範な領域においてその効果が調査されている.本総説論文では,物理療法全般の最前線というテーマで,ESWTやVNSといった最新の物理療法モダリティを中心にレビューし,物理療法の可能性について示したい.
著者
松木 明好
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.33-38, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
22

理学療法対象症例の病態や予後,介入効果の推定のために神経生理学的評価が用いられることがある.これは脳,脊髄,末梢神経,筋の機能性を評価するものであり,運動に関連する代表的なものに,(1)筋電図,(2)運動誘発電位,(3)H反射を観察する方法がある.(1)表面筋電図は筋収縮に伴って発生する皮膚上の電位変化を記録するものである.これを用いることで異常運動の原因となっている筋活動のタイミングや活動量の異常を捉えやすくなることが期待される.(2)片側運動野への経頭蓋磁気刺激によって対側末梢筋の筋電図上に運動誘発電位が記録される.この運動誘発電位は脳卒中片麻痺の機能回復の予測や,皮質脊髄路機能の変化を推定することに利用されている.(3)H反射は脊髄運動神経群の興奮性を反映して変化することから,痙縮の病態の一部を反映すると考えられる.いずれにおいても,波形の成り立ちや誘発の機序,関与する神経回路,技術的に懸念される点を考慮して活用することが重要である.
著者
中村 潤二 久我 宜正 後藤 悠太 生野 公貴 武田 和也 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.63-71, 2018 (Released:2022-09-03)
参考文献数
34

本研究の目的は,大腿骨頸部骨折患者の股関節外転筋への電気刺激療法と課題志向型練習を併用した際の効果を予備的に検討することとした.対象は,大腿骨頸部骨折術後患者とし,準無作為に電気刺激群(ES群)6名,コントロール群6名に割り付けた.両群ともに,歩行能力向上を目的とした課題志向型練習を実施し,ES群は,術側中殿筋への電気刺激を併用して実施した.介入は10セッション行った.評価は介入前後に股関節外転筋力,膝関節伸展筋力,疼痛,Timed up & go test,6分間歩行テスト(6MWT),圧力計式歩行解析装置を用いて歩行パラメータを計測した.介入後にES群は,コントロール群と比較して,術側股関節外転筋力の有意な改善がみられ,6MWTの改善傾向がみられた.ES群における術側股関節外転筋力の変化量は,歩行速度,術側と非術側の歩幅,ストライド長,6MWTの変化量との間に強い有意な相関がみられた.大腿骨頸部骨折患者の股関節外転筋への電気刺激と課題志向型練習の併用は,股関節外転筋力や歩行能力を向上させる可能性がある.
著者
中村 潤二
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.11-18, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
48

直流前庭電気刺激(Galvanic vestibular stimulation: GVS)は両側の乳様突起に貼付した電極から微弱な直流電流を通電することで,経皮的に前庭器官を刺激するものである.GVSは,姿勢制御や視空間認知に影響を与えるため,中枢神経系の調整的介入が可能であると考えられている.我々は脳卒中後の半側空間無視やPusher現象,パーキンソン病における姿勢異常に対するGVSの介入を実施し,それらの影響に関して報告してきた.特に,Pusher現象や姿勢異常に対する介入は乏しく,GVSはこれらの難渋する障害に対する介入となる可能性がある.また,GVSを応用することで,姿勢制御や筋緊張調節に重要な神経機構である前庭脊髄路の機能が評価可能であるとされ,前庭脊髄路の障害やGVSの影響について検討できる.本稿では,脳卒中後に生じるPusher現象や半側空間無視,パーキンソン病における姿勢異常といった障害に焦点を当て,GVSの基礎,GVSを用いた前庭脊髄路の機能評価の可能性や介入といった臨床応用のための取り組みを提示し,新たなニューロモデュレーションとしてのGVSの可能性について示したい.
著者
宮良 広大 坂元 顕久 宮田 隆司 大濵 倫太郎 下堂薗 恵
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.2023-005, (Released:2023-08-07)

脳梗塞後に右片麻痺を呈した回復期リハビリテーション病棟患者1名に対して,神経筋電気刺激 (NMES) を併用した反復起立自主練習を提案した結果,その継続が可能で良好な経過であったため報告する.通常の理学療法介入に加え,第20病日で反復起立自主練習,第34病日でNMES併用下での反復起立自主練習を導入した.2週間毎の定期評価として,運動機能は,Manual muscle test (MMT),骨格筋量,握力,大腿・下腿周径,バランス能力はBerg balance scale (BBS),歩行能力は10 m歩行テスト,6-minutes walking distance (6MD)を実施した.第20病日と比べ,第48病日で麻痺側膝伸展MMTが2から4,BBSが39から45点,10 m歩行テストが0.32から0.67 m/秒,6MDが265 mへ向上した.NMES併用下での反復起立自主練習は下肢筋力とバランス,歩行能力の改善に繋がる可能性がある.
著者
片山 翔 池田 朋大 太田 晴之 荒嶋 智志 濱田 全紀 千田 益生
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.83-89, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
19

【目的】COVID-19の重症化によりICU管理が必要となった症例に対して,NMESを導入した.感染への対策と実際の方法,臨床経過について報告する.【症例】本症例は70歳代男性であり,COVID-19の診断で当院ICUへ入室した.ICU入室翌日から個人防護服着用下にて理学療法を開始した.第12病日に人工呼吸器管理となりNMESを導入した.【経過】挿管後,筋弛緩剤を併用した腹臥位療法を施行し,機器使用における感染対策・実施プロトコルを設定,NMESを導入した.72日間のICU管理,89日間の人工呼吸器管理を必要としたが第98病日に人工呼吸器を離脱し,離脱後3日目には軽介助レベルで歩行が可能であった.発症後,約6ヶ月後に在宅酸素療法で酸素投与量0.5 L/minを使用し,Barthel Index 95点で自宅退院となった.【結語】重症COVID-19患者へのNMESの使用は感染対策上,安全に実施が可能な介入であり,体位によって制限されることはなかった.そして早期歩行能力の獲得に有用な可能性が示された.
著者
大住 倫弘
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.19-26, 2018 (Released:2022-09-03)
参考文献数
41

本稿では,急性期・慢性期の疼痛メカニズムを概説するとともに,それぞれの病期のリハビリテーションに必要なコンセプトをまとめた.急性期では,“末梢性感作”が主たる病態メカニズムであるため,消炎・鎮痛作用のある物理療法と運動療法を実施していくことが必要である.慢性期では,脊髄あるいは脊髄上位レベルでの“中枢性感作”を含んだ病態メカニズムが存在するため,運動機能障害・心理的問題などにも対処しながらリハビリテーションを進める必要がある.いずれにしても,症状から病態メカニズムを推測した上で病期別の疼痛リハビリテーションを計画することが重要となる.
著者
瀧口 述弘 高松 昇三 佐藤 哲也 雉子牟田 美香 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.21-21, (Released:2023-01-30)

背景:慢性腰痛患者には運動療法を実施すべきと報告されているが,運動時痛により運動が十分に行えていない患者が多い.経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation)は,慢性腰痛患者にも実施されているが,運動時痛に対する効果を検証した報告は少ない.また,TENSは周波数により鎮痛機序が異なるが,腰部運動時痛に対する最適な周波数も明らかではない.本研究の目的として,腰部運動時痛に対するTENSの効果と最適な周波数を明らかにすることとした.試験デザイン:ランダム化比較試験.方法:対象は慢性腰痛患者80名であり,高頻度TENS群(100 Hz),変調TENS群(10-100 Hz),プラセボTENS群にランダムに割付け,TENS実施前,実施直後,30分後に運動時痛評価と運動機能評価を行った.TENSは30分後の評価終了まで実施した.結果:変調TENS群はプラセボTENS群よりも運動時痛が有意に低下したが,運動機能は向上しなかった.結論:変調TENSは慢性腰痛患者の運動時痛を低下させる.
著者
吉川 義之 野中 紘士 滝本 幸治 前重 伯壮 植村 弥希子 杉元 雅晴
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.72-76, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
19

本研究ではヒト皮膚由来線維芽細胞(HDFs)を異なる温度で培養し,細胞増殖に及ぼす影響を検討した.HDFsを5×104 cells/dishの濃度で35-mm dishに播種し,31,33,35,37,39°Cの5条件で培養した.HDFsは24,48,72時間後に剥離し,血球計算板を使用して生細胞数と死細胞数をカウントした.解析には,37°Cで培養した24時間時点での細胞数を基準とした細胞比率を用いた.また,それぞれの温度における細胞生存率を算出した.統計学的検討は温度と時間については二元配置分散分析を用い,細胞生存率については一元配置分散分析を行った.分散分析にて有意差がみられた際にはBonferroniの多重比較検定を行った.結果は二元配置分散分析にて主効果,交互作用ともに有意差を認めた(p<0.01).インキュベーター設定温度の違いによる細胞比率は,48,72時間のいずれの時点においても培養温度の高さに依存して高い結果となった.細胞生存率については有意差はみられなかった.以上のことから,今回検討した5条件においては,31,33,35°Cでは37°Cよりも細胞増殖が低下し,39°Cでは37°Cに比べ細胞増殖が促進した.
著者
吉川 義之 前重 伯壮 植村 弥希子
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.2023-010, (Released:2023-06-15)

創傷リハビリテーション(以下,創傷リハ)においてリハビリテーション専門職(以下,リハ専門職)が多く関わると考えられる糖尿病足病変と褥瘡に対する物理療法について紹介する.創傷リハでは創傷発生予防と創傷管理のリハビリテーションがあり,リハ専門職はその両方に関わることができる.物理療法も同様に,創傷発生予防と創傷管理の両方に関わることができる.創傷予防については電気刺激療法を実施し筋の収縮を促すことにより足底圧や坐骨部圧の分散が可能になる.創傷管理については,創部に電気刺激療法を実施することにより創縮小率が上昇することが確認されている.このように物理療法は創傷発生予防と創傷管理の両方に関わることができるため,積極的に実施していただきたい.今後,創傷領域に関わっていただけるリハ専門職が増えることを切に願っている.
著者
生野 公貴 松尾 篤 吉川 奈々 中原 彩希 庄本 康治 森本 茂 鍋島 祥男
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.69-74, 2014 (Released:2022-09-03)
参考文献数
24

本研究は脳卒中後重度感覚障害に対する経頭蓋直流刺激(tDCS)と理学療法の併用治療の有効性をシングルケースデザインで検討した.症例は左視床出血後約3年経過した50歳代の男性である.表在および深部感覚は脱失で,右上肢に著明な感覚性失調を認めていた.tDCSは左体性感覚野に陽極を置き,刺激強度は2 mAとした.介入頻度は週1回20分とし,続いて40分の上肢練習を行った.練習セッションとベースライン測定に続いて,3セッション目をSham刺激,続く5セッションは真の刺激として,計8セッションの介入を実施した.評価は9-Hole Peg Test, Box and Block Test,感覚検査を実施した.その結果,tDCSによる有害事象はなかった.Sham刺激期間と比較してtDCS期間での全評価項目の有意な改善は認めなかった.感覚障害に対するtDCSは安全に実施可能であったが,本症例の運動および感覚障害に対して明らかな効果を認めなかった.
著者
吉田 陽亮 生野 公貴 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.45-52, 2014 (Released:2022-09-03)
参考文献数
35

【目的】人工膝関節全置換術(TKA)後症例に対する感覚強度の神経筋電気刺激(NMES)の効果について予備的に検討した.【方法】対象はTKAを施行した症例16名とし,NMES群8名と非実施群8名に割り付けた.術後3週目より5日/週×2週間,感覚強度のNMESを大腿四頭筋へ実施した.評価は,最大膝伸展筋力(MVIC),下肢骨格筋量(LSMM),Timed Up and Go test(TUG),2分間歩行テスト(2MWT),Stair Climbing Test(SCT),Visual analogue scale(VAS),Japan Knee Osteoarthritis Measure (JKOM)を測定した.【結果】術後4週目のMVICと2MWT はNMES群で有意に改善し(p<0.05),術後8週目でも改善傾向を示した.【考察】感覚強度のNMESは筋力と歩行能力を改善させる可能性がある.
著者
尾川 達也
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.32-37, 2023 (Released:2023-08-20)
参考文献数
9

日々の臨床の中で物理療法を使う際,Evidence-Based Medicine(以下,EBM)に基づいて実践することは,リハビリテーション専門職の共通認識ではないだろうか.しかし,現在のエビデンスから,EBMの要素の一つである「患者の価値観」が十分に考慮されていないことが指摘されている.この「患者の価値観」とは複数ある治療選択肢の中からどの治療を希望するかという意味を含み,患者の自律性を尊重するためにも不可欠な要素である.近年,この価値観を考慮しEBMを適切に実践するためのコミュニケーション方法としてShared Decision Making(以下,SDM)が提唱され,Informed Consentに置き換わる合意形成方法として期待されている.本稿では,意思決定方法の中でも特にSDMに焦点を絞り,患者と協働して物理療法の使用を検討していく手続きについて解説する.
著者
則本 哲郎 柳原 延章 佐藤 教昭
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.90-94, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
9

近年スポーツ界では,微弱電流刺激治療がスポーツ選手のケアやコンディショニングの分野まで実施されている.本研究では,頸椎から仙椎に通電する微弱電流刺激が自律神経バランスにどのような影響を与えるか検討した.被験者は各群,健常成人27名で,通電群(40.8±17.7歳)及び非通電群(コントロール群)(37.7±18.9歳)であった.ウエアラブルバイオセンサ(小型携帯用心電計)を用いて,自律神経バランス測定を行った.2元配置分散分析の結果,自律神経バランス測定パラメータ7項目の内,6項目で治療前後の主効果に有意差が認められた.治療有無の主効果は2項目(相対的交感神経活動度と交感神経/副交感神経領域比)で有意な低下が認められた.治療有無×治療前後の交互作用は副交感神経機能パラメータの2項目(安静時平均心拍と内在活力)で有意差が認められた.以上の結果より,頸椎から仙椎における微弱電流刺激は自律神経バランス,特に副交感神経機能を高める可能性が示唆された.
著者
三上 達也 吉田 英樹 浮城 健吾 千田 周也 吉田 俊教 大越 康充 前田 龍智
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.48-54, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
26

【目的】変形性膝関節症(以下,膝OA)における鵞足症状に対する超音波療法(以下,UST)の有効性を検討することとした.【方法】対象は,膝OAに伴う鵞足症状ありと判断された34例とした.34例は無作為に介入群,プラセボ群に振り分けられ,パフォーマンス評価(10 m歩行,起立着座,階段昇降)における所要時間,疼痛(VAS)がUST施行前後で評価された.【結果】二元配置分散分析の結果,階段昇降VASで交互作用を認めた.事後検定では,介入群で10 m歩行時間,起立着座時間・VAS,階段昇降時間・VASで有意に減少,プラセボ群で階段昇降時間が有意に減少した.【考察】膝OAにおける鵞足症状に対してUSTを施行すると,階段昇降時の疼痛が減少すると考えられた.また,動作速度(歩行,起立着座,階段昇降)が改善し,疼痛(起立着座,階段昇降)が介入群で軽減する可能性が考えられた.
著者
徳田 光紀
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.2023-014, (Released:2023-06-12)

物理療法による疼痛治療は,病期別の疼痛メカニズムを十分に理解したうえで,物理療法を適切に選択し,実践する必要がある.急性期では,著明な疼痛と炎症症状が身体機能の予後不良に繋がる大きな要因となることから,消炎・鎮痛作用を有する物理療法が選択されるべきである.慢性期では,疼痛に対する直接的な作用を求めるだけでなく,運動療法をアシストするような間接的な役割が可能な物理療法を選択することも含めて治療戦略を考えるべきである.本稿では,病期別の疼痛メカニズムや疼痛治療に応用できる物理療法について概説するとともに,疼痛に対する物理療法の治療戦略について提示する.
著者
尾崎 新平 草場 正彦 植田 耕造 宮本 定治 恵飛須 俊彦
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.32-36, 2017 (Released:2022-09-03)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Lateropulsion は,脳幹損傷後で起こる左右方向の姿勢制御障害として報告されているが,介入報告はほとんど見当たらない.近年,介入として直流前庭電気刺激(GVS)が注目されている.今回,lateropulsionを呈した一症例にGVSを実施し,即時効果を検証した.症例は60歳代の男性で,診断名は脳梗塞(小脳,橋,中脳).実験デザインは,シングルケースデザインの操作交代デザインを使用した.刺激条件とControl条件を5回ずつ乱数表に基づいてランダムに実施し,各々の条件中の足圧中心(COP)動揺を重心動揺計で計測した.解析方法は,randomization検定を用い,刺激条件とControl条件でCOP変数を比較した.評価時期は発症から38日目に実施し,計測は1日のみで即時効果を判定した.結果は,左に偏倚していた重心位置がGVS中ほぼ正中になり,GVSの即時効果があることが示された.