著者
伊藤 詔子
出版者
松山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アメリカ環境文学のグローバルな影響力を自然表象の変遷のなかで検討し、風景構築と人種的無意識の関係を、主としてソロー、ポーなど19世紀男性作家に探った。また20世紀後半と21世紀、環境文学のもっとも重要なテーマのひとつとなってきた汚染というテーマが、地域の歴史とどのような関係にあり、またどのような身体表象を伴っているかを、ソロー、ポーの影響を受けた現代女性環境文学作家数名を中心に考察した。研究成果は、現代英語環境文学103作(映画や音楽も含む)を、汚染、自然表象、アクティヴィズムと環境正義など10のテーマに分類し、作家概説、作品紹介と文献解題による辞書兼教科書を、監修共編著として出版し、その他共著3冊と、国際学会での発表2回を含む7回の口頭発表、および論文数編に結実した。
著者
伊藤 詔子
出版者
松山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究「文学批評理論としてのエコクリティシズム確立にむけての研究」2年目では、1年目のソローを中心とする研究から、1)エコクリティシズムの批評そのものの現状を分析し、2)環境文学の始まりとなったレイチェル・カーソンの『沈黙の春』を中心に、汚染の言説と環境正義のレトリックの特質を考察し、3)『沈黙の春』以降の女性環境作家作品について、発展的な考察をした。3点についての具体的成果は以下であった。1)ロレンス・ビュエルによる最新のエコクリティシズム研究書Future of Environmental Criticismをエコクリティシズム研究会で研究し、5人で協力してその邦訳を、巻末書誌、環境批評用語解説とともに鶴見書店より2007年5月に出版した。序文と第1章、5章、あとがき、原稿取りまとめ、監修を伊藤が担当した。また英語青年に「ビュエルエコクリティシズム三部作の完成に寄せて」と題して、エコクリティシズムの修正主義である第二波について概説した。2)アメリカ学会・学会誌の特集「自然と環境」に、「Silent Spring--Toxic Infernoを下って沈黙のジェンダー的ルーツを探る」と題する論文を寄稿し、エコクリティシズム第二派が焦点化する、汚染の言説と環境正義のテーマについて考察した。3)ソローとカーソン以降の女性環境作家について、阪大の人文COEプロジェクト「環境と文学」第三回フォーラムで講演し、その他二つの論文で調査研究の成果を発表した。(1)「ソローとホーガンのいきもの表象をめぐって」(日本ソロー学会『ヘンリー・ソロー研究論集』No.33(2)「『沈黙の春』とアポカリプス」ミネルヴァ書房名作シリーズ『カーソン』(2007年5月刊行)