著者
酒井 温子 岩本 頼子 伊藤 貴文 佐藤 敬之
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.69-79, 2008 (Released:2011-08-01)
参考文献数
16
被引用文献数
6 4

窒素雰囲気下で熱処理されたスギ辺材およびアカマツ辺材の耐朽性, 耐蟻性および吸湿性を検討した。熱処理の温度は140~240℃で, 熱処理の時間は24時間とした。スギ辺材の熱処理木材から木口断面20mm×20mm, 繊維方向10mm の試験片を切り出して, オオウズラタケおよびカワラタケによる12週間の強制腐朽試験を実施したところ, 処理温度が高いほど腐朽による質量減少率は低下し, 220℃および240℃の処理で質量減少率は1%以下となった。また, ファンガスセラー試験においても, 12カ月経過時点で, 無処理試験体の腐朽度が5となっても, 220℃および240℃処理試験体の腐朽度は0のままであった。一方, 室内耐蟻性試験では, 240℃処理試験体のイエシロアリ食害による質量減少率は11%であり, 耐蟻性は十分ではなかった。JIS K 1571: 2004に準拠した野外試験の結果, 奈良県森林技術センター明日香実験林におけるスギ辺材熱処理材の腐朽とヤマトシロアリによる被害も, また鹿児島県日置市吹上浜におけるアカマツ辺材熱処理材のイエシロアリによる被害も, 処理温度が高いほど軽減されることが明らかになった。高い生物劣化抵抗性を示す熱処理木材は, 吸湿性も大きく低下しており, 両者に密接な関係があることが示唆された。