- 著者
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佃 吉晃
- 出版者
- NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
- 雑誌
- 自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, no.1, pp.17-29, 2017
<p>本研究は他校通級児童男児Aへの支援を通して、担任との連携・協力の在り方や通級による指導の効果、保護者支援について検討した。Aの不快感を下げながら成功体験を増やす在籍校担任と連携した支援や保護者にAへの実際的な養育を促す支援を継続的に行った。その結果、Aは気分のメリハリが残るもののクラスで活動する場面が増え、回避逃避行動パターンを修正するに至った。また保護者と定期懇談会を設定し、具体的な養育について話し合ったものの、保護者がそれに基づいた養育の実行や進路決定に多くの時間を要した。しかし6 年生より在籍校に特別支援学級が新設されたことに伴い、保護者は納得して学びの場を変更することができた。クラスや通級指導教室での自己達成的な学習によりAの活動の増加及び行事の成功体験が生じ、担任と情報を共有し支援方法を綿密に相談できたことがAの変容につながったと推察された。通級担当者は担任のクラス運営を考慮に入れた上で、対象児童や保護者の支援をする俯瞰的な視点をもつ必要性が示され、その上で担任と互いの実践に敬意を払い、主体的な実践を支え合うことが『協働』であると考察された。保護者支援はその個別性が課題であるが、保護者とつながり続けるための児童への丁寧な支援の繰り返しや共感的・未来志向的な就学相談が、共に「丁寧に生きる」支援者の必然的な姿勢として示唆された。</p>