著者
諏訪 竜一 大見謝 恒太 西原 隆 高橋 昌弘 住 秀和 殿岡 祐樹 河野 恵美子
出版者
公益社団法人 日本アロマ環境協会
雑誌
アロマテラピー学雑誌 (ISSN:13463748)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.19-23, 2020

<p>沖縄県における海洋汚染の主たる原因の一つとして,畑地からの赤土流出が挙げられる。これらの赤土流出保全のため沖縄県においてはベチバー(<i>Vetiveria zizanioides</i>)がグリーンベルトとして広い地域に植栽されている。本研究では,このグリーンベルトとして栽培がされているベチバーから精油の採油が可能であるか,また,市販の精油との比較,さらに採取時期による採油率の変化および成分変動の有無について検証を行った。本研究で比較のために用いた二つの市販精油(インドネシア産およびスリランカ産)では精油中の組成成分の構成が異なっていた。採油を行った精油中の特長では,最も主要な成分ではkhusimolやvetiselinolなどのアルコール類が主要であり,この傾向はインドネシア産と同様であった。また,初夏と初冬における採油率(乾物重あたり)を比較した場合,初夏において0.62%であるのに対して初冬においては0.34%であった。一方,精油製造時に季節を問わず,構成成分の変動が比較的小さかった。このため,採油時期に起因する品質の不安定の懸念が少ないことが示された。今後,グリーンベルトを用いた精油の製造が進むことにより,一次産業とアロマ業界が複合することによる環境保全の促進につながることが想定される。</p>
著者
寺本(稲福) さゆり 住 秀和 金城 秀安 川満 芳信 Inafuku-Teramoto Sayuri SUMI Hidekazu KINJYO Hideyasu KAWAMITSU Yoshinobu 琉球大学農学部 大宜味村シークヮーサー振興室 沖縄県北部農林水産振興センター
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.73-81, 2010-08

琉球列島には多くのシークヮーサー遺伝資源が古くより栽培され,残されている.クガニーとは,これらのうちで果実形質の優良なシークヮーサー(C. depressa Hayata) 系統の総称であり,沖縄県で栽培される主要品種である.これらのうち,特に著名な4種のクガニーの品種(大宜味クガニー,勝山クガニ一,カーアチー,伊豆味クガニー)について,フラボノイド類,フェネチルアミン類,香気成分といった機能性成分を分析し,品種間差の調査を行なった.ポリメトキシフラボノイド類 (PMFs) のノピレチンはすべてのクガニーで高く,タンゲレチン,シネセチンとあわせて3種類のPMFsが未熟果皮に多く含まれていた.フェネチルアミンのシネフリンは,PMFs同様に未熟果皮に多く含まれていた.一方,香気成分とフラパノン類については,伊豆味クガニーにおいて他のクガニーには含まれない1,8-シネオールやネオヘスペリジンといった成分が多く含まれていた.品種間差異は特に香気成分において大きく現れる傾向があり,最も主要な経済栽培品種となっている大宜味クガニーと勝山クガニーとの差は小さかった.これらの結果をもとに,沖縄独自の貴重な地方資源として,今後クガニ一品種毎の特性を活かした加工品開発の進展が期待される.Shiikuwahsa (C. depressa Hayata) that has been cultivated for long time and there are many accessions in Ryukyu Islands. Kuganii is the name of the superior cultivars of shiikuwasha that are also major cultivars in present Okinawa. Among of them, we selected 4 famous cultivars of kuganii and analyzed polymethoxyflavones, flavanones, phenethylamine (synephrine) and volatile constitutions to identify the difference between each cultivar. Nobiletin, it was the most abundant polymethoxyflavone in all of kuganii. Three of PMFs (nobiletin, sinensetin and tangeretin) detected in all kucanii, and they were contained high in immature peels. Synephrine, categorized phenylethylamine, was also high in immature peels of all kuganii. However, the difference had shown clearly in the content of flavanones and aromatic constitution. 'Izumikuganii' contained high percentages of 1,8-cineole in volatile components and flavanone neohesperidin, they were not contained in other kuganii peels. 'Ogimikuganii', the main cultivars in Okinawa was closely similar to 'Katsuyamakuganii' in all phytochemicals that analyzed in this study. These phytochemicals data will be contribute to develop various applications in each cultivar that is the important local resources for further utilization.