著者
住田 清芽
出版者
日本監査研究学会
雑誌
現代監査 (ISSN:18832377)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.25, pp.50-61, 2015-03-31 (Released:2017-06-27)
参考文献数
13

2015年1月に,監査報告書の記載内容を大幅に変更する国際監査基準(ISA)が公表される見込みである。改正ISAは,監査意見に加えて,監査人が被監査会社の当期の監査において最も重要と判断した事項(監査上の主要な事項(KAM))を上場企業の監査報告書に追加的に記載することを求めており,被監査会社の監査に特有の情報が記載されることになる。これは,従来の定型的な監査報告書からの大きな変革であり,監査実務だけでなく,財務報告プロセス全体に大きな影響を及ぼすことが想定される。KAMに象徴される監査報告の改善は,経済社会における財務諸表監査の価値及び目的適合性を維持する上で重要と位置づけられている。利用者の視点に立って監査報告書の情報価値を高め,同時に,監査の透明性の向上により監査品質,最終的には財務報告の質の向上をもたらすことが期待されている。その際,ISAに先行して,企業開示制度全体を見直し,コーポレート・ガバナンスの強化とともに監査報告書の改正を行っているUKの取組みが参考になる。