著者
佐々 茂
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.248-251, 2007 (Released:2007-10-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

ヘムタンパク質から遊離するフリー・ヘムはヘム・オキシゲナーゼによって,鉄イオン,ビリベルジンIXα,COに分解される.この反応はこれまで代謝・分解反応として考えられて来たが,一方この酵素反応の結果(1)酸化的ストレスであるフリー・ヘム濃度が減少する事,(2)鉄イオンはフェリチンの誘導を介して酸化的ストレスを軽減する事,(3)ビリベルジンIXαおよびその還元体であるビリルビンIXαはいずれも重要な抗酸化作用を示す事,(4)COはストレスによる細胞死を抑制する事,などの事実も明らかになった.従ってヘムの代謝産物はいずれも酸化的組織障害に防御的貢献をしている.すなわちヘム・オキシゲナーゼ活性,およびフリー・ヘムによるヘム・オキシゲナーゼ遺伝子の活性化はいずれも生体防御反応において重要な役割を果たしている.フリー・ヘムはさらにいろいろな遺伝子の活性化機構にも関与している事も明らかになり,この章ではフリー・ヘムの遺伝子活性化に及ぼす影響を概説した.ヘムによる遺伝子活性化機構の解明は組織防御を始めとする各種の重要な生体反応の理解に極めて重要であると考えられる.