著者
佐々木 修二 井口 登與志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.244-248, 2013-04-15

はじめに 下部消化管より分泌されるGLP-1(glucagon-like peptide-1)は,血糖値に応じた膵β細胞からのインスリン分泌促進作用に加え,グルカゴン分泌抑制,胃内容物排出抑制,食欲抑制作用など,多様な作用を有する1).GLP-1受容体作動薬は,このGLP-1の生理活性を薬理学的濃度まで高めた新しい糖尿病注射薬である.これまでの糖尿病治療薬では体重増加・低血糖といった問題が常に懸念されていたが,GLP-1受容体作動薬は体重減少が期待でき,単剤での低血糖リスクが少なく,医療者も患者も安心して使用できるため,2010年にわが国で発売されて以来,2型糖尿病の診療に大きな変化をもたらしている.さらに,血糖降下作用を超えて,膵保護作用や抗動脈硬化作用が期待されている薬物でもある2, 3).