著者
佐々木 千絵 児玉 雄二
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.47, 2007

【目的】日本における車椅子テニス選手の躍進は目覚しく、ワールドカップ等でも上位に食い込み活躍を見せている。長野県においてもジャパンカップ車椅子テニス大会が開催され、昨年度で第20回を数える。長野県理学療法士会では十数年にわたり、大会期間中の理学療法サービスを実施してきた。今回はスポンサー撤退により、大会が縮小した過去2年間の大会に限定し、車椅子テニス競技の障害特性について報告する。<BR>【方法】大会会場に理学療法室を設置し、治療用簡易ベッド、物療機器、テーピングテープなど用意し、理学療法士を7名程度常勤させ、期間中選手がいつ来室しても対応できる体制をとった。利用が込み合う時間帯は予約制とし、スムーズに運営できるように配慮した。<BR>【結果】過去2年間の大会参加選手のべ112名。理学療法サポート利用選手のべ59名であった。試合前の利用者は11件。試合と試合の間18件。試合後30件であった。障害部位の内訳としては、肩甲骨周囲筋群22件、肩関節6件、利き手肘外側8件、利き手肘内側6件、その他手関節、頚部、腰部等20件であった。症状は筋硬結24件、疲労21件、運動時痛21件、圧痛15件、その他19件であった。障害期は急性期5件、亜急性期3件、慢性期51件であった。対応はマッサージ37件、ストレッチ29件、アイシング8件、テーピング4件、物理療法4件、その他9件であった。<BR>【考察】車椅子テニス競技は、利き手にラケットを握り、車椅子を操作(以下チェアワーク)しながらプレーする競技である。ターン、ダッシュ、ストップなどのチェアワークは勝敗の鍵を握る1つで、練習でも重要視されている。障害発生要因は利き手側の過用症候群のみではなく、チェアワークによる要因も大きいと考えられる。また、車椅子をすばやくターンするときには、上肢のみでなく頚部、体幹、腰等を回旋させているため、頚部・腰等に障害を抱える選手が多いとも考えられる。<BR>【おわりに】障害者スポーツ大会は、スポンサーの有無によりその規模がかわってしまい、かつメディアの注目度はけっして大きくはない印象にある。一方選手の身体特性は元来から有する障害に加え、スポーツ障害を併発しているため、複雑化している場合も多い。当士会では、1998年に冬季パラリンピック大会を支援した経験があり、その事を生かしながら、今後も障害者スポーツの活動を支援してゆきたいと考えている。