著者
佐々木 由比 南 豪
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.519-529, 2018-09-05 (Released:2018-10-04)
参考文献数
42
被引用文献数
1

ケモセンサはミクロな分子認識現象を,光学変化を使って読み出すことができる分子サイズのセンサであるが,天然由来の分子認識材料のような高選択性の実現は容易でない.ケモセンサアレイは,これまで欠点とされた人工レセプタの交差応答性を活用したセンシングシステムであり,パターン認識に基づいて多成分の同時検出が可能である.迅速かつ正確な検出を行える当該システムは有用であるが,その構築には,標的種に合わせて数多くのケモセンサを,有機合成化学的アプローチに基づいて作製していかなければならない.著者らは,合成的労力を軽減しながら,少ないケモセンサ数で多くの標的種の分析が行える手法の開発に取り組んでいる.すなわち,ケモセンサの分子内/分子間会合を巧みに制御し,程よい選択性と交差応答性を生み出すことで,たとえ体液や夾(きょう)雑物中に含まれる標的種の検出であったとしても使用可能なケモセンサアレイを提案している.簡易に作製されるケモセンサアレイは,多くの場面で有用な分析ツールとなり,超分子センサの実践応用に向けた第一歩となるであろう.