著者
佐久間 まゆみ 藤村 知子
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

日本人大学生と外国人留学生による2種の尾括型の論説文による要約文の表現類型と、日本語教師・国語教師・日本人大学生各5名による3種の評価調査の結果を比較して、両者の異同とその要因を明らかにした。その結果、日本語の論説文の「要約規則」を導き出し、要約文の作成方法と評価基準に関する以下のような結論を得た。(1)日本人と留学生による要約文の原文残存必須単位の組み合わせに基づく表現類型には、日本人の要約文は原文と同じ尾括型の類型が多いが、留学生の方は、内容・表現ともに問題のある異質の類型がある。(2)要約文の表現類型と教師と学生による評価には、関連性があり、各集団において、原文に近い類型のものほど偏差値平均は、日本語教師の留学生要約文の評価平均による評価が高く、原文と異なる類型は低いという傾向がある。(3)国語教師の日本人要約文の評価平均よりも高く、大学生の評価もこれに準ずる。(4)要約文の表現類型は、教師の要約文の評価の平均偏差値や評価項目と関連があり、一般に、「結論・要点」を備え、「具体例・要約者の意見・原文以外の内容」を含まず、「文章構成・文のつながり・まとまり・簡潔さ」を満たす要約文ほど評価が高い。これらは、論説文の「要約規則」や「要約技法」と見なすことができる。(5)国語教師は日本人要約文を、文章構成や簡潔さ等の表現面の巧拙を重視して評価するが、日本語教師は留学生要約文を、内容理解や「語句・文法・表記」等の正確さに主眼を置いて評価する。(6)日本語教師の留学生要約文の評価において、評価の高い要約文の偏差値平均は国語教師よりも高く、評価の低い要約文の偏差値平均は国語教師より低い。今後の課題として、より多くの資料を用いて、本研究で得られた結果の妥当性をさらに検証する必要があるが、要約文の表現類型の分類基準の精度を高め、情報伝達の手段としての要約技法を解明することが残されている。