著者
佐山 裕行 長坂 泰久 田端 健司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.154, no.3, pp.143-150, 2019 (Released:2019-09-14)
参考文献数
19
被引用文献数
2

Quantitative systems pharmacology(QSP)とは,疾患に関連する生体システムと薬物との相互作用を数理モデルによって記述する新しいモデリング手法であり,近年医薬品開発の様々な段階で意思決定に用いられている.従来の経験則に基づく統計学的なモデルと異なり,QSPは生体システムそのものをバイオロジーに基づいて記述するため,創薬標的や疾患関連バイオマーカーの探索,仮説検証,臨床での薬効や毒性の予測などの幅広い目的で使用することができる.一方で,膨大な情報を含むQSPはモデル構造が極めて複雑となり,その構築・活用にはバイオロジーについて深い知識を持つ薬理研究者とモデリング経験の豊富な薬物動態研究者の協働が不可欠である.本稿では,薬物動態研究者から薬理研究者へ,QSPの特徴ならびに企業での実施状況,医薬品開発で効果的に活用していくための課題と将来の展望を解説する.