著者
佐藤 倫子
雑誌
鹿児島純心女子大学大学院人間科学研究科紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.20-28, 2007-03-31

本研究では,友人に対する意識の性差と発達的変化を明らかにし,それら友人に対する意識と精神的健康との関連を導き出すことを通して,子どものより健康なこころの状態の実現について検討した。友人に対する意識の性差は,発達段階により異なることがあきらかになった。小学生で性差の見られた項目は,中学,高校でも継続して性差があり,発達にしたがって性差のある項目が増えていた。つまり友人に対する意識の性差は,高校生でピークになる。性差は女子が男子よりも友人に対しより肯定的な意識をもつ傾向にあった。友人に対する意識と精神的健康との関連においては,友人に対する意識が影響を及ぼす精神的健康要因と,及ぼさない要因があることがあきらかとなった。及ぼさない要因は身体症状がほとんどであり,身体化現象の複雑性がうかがえた。友人に対する意識が精神的健康に与える影響は,小・中・高及び性別により異なっていた。友人関係に最も性差のあらわれるのは高校生であった。しかしその友人関係の影響が最も精神的健康に及ぶのは,中学生の時期だった。つまり,友人に対する意識における性差が精神的健康にそのまま影響するわけではなく,友人に対する意識における性差を含めた友人関係のありようが,精神的健康に影響を及ぼしているのである。子どもの呈する症状には複雑な要因が絡んでおり,周囲がどのように子どもの姿を受け止め, どのようにあろうとするかが問われている。