著者
大隣 辰哉 大田 慎三 関原 嘉信 西原 伸治 大田 泰正 佐藤 倫由 田中 朗雄
出版者
産業医科大学、産業医科大学学会
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.231-242, 2015-09-01 (Released:2015-09-12)
参考文献数
25

脳脊髄液漏出症は特発性または時に外傷性に発症し,起立性頭痛や誘因のない慢性硬膜下血腫(CSDH)の原因となる稀な疾患である.我々はこの連続20例の治療経験があり,この疾患の現状と問題点も含め報告する.2006年4月から2014年3月までにCTミエログラフィー(CTM)または脊髄MRIで硬膜外髄液漏出を確認した連続20例(女性11例,年齢44.7±12.1歳,22-65歳)の臨床的特徴を後ろ向きに調査した.症状は,起立性頭痛のみが10例,起立性頭痛にCSDH合併が6例,体位と無関係の頭痛にCSDH合併が4例であった.治療は,2例で直達術での縫合またはフィブリン糊による瘻孔閉鎖を施行した.14例で硬膜外自己血パッチ(EBP)を施行(うち1例は上記直達術),後半9例は血管内カテーテルを用いた腰椎からの単回アプローチでの広範囲EBPを施行した.穿頭血腫ドレナージ施行の1例を含む残る5例は,輸液のみで治療した.症状が頭痛のみの10例中9例は,この消失または軽減が得られた.CSDHを合併した10例は,1例で穿頭血腫ドレナージ後に輸液のみで治療,9例でドレナージ後にEBPを施行して全例再発を抑制できた.脳脊髄液漏出症はいまだ病態が不明だが,CTMおよび脊髄MRIにて的確に診断し,点滴加療が無効,起立性頭痛が高度またはCSDHを繰り返す症例には,血管内カテーテルを用いた広範囲EBPでほぼ治癒可能とわかった.