著者
柳原 恵梨 杉本 達哉 佐藤 哲観
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-5, 2022 (Released:2022-01-13)
参考文献数
18

【緒言】悪夢は緩和ケアの臨床において珍しくない症状の一つだが,がん患者における研究は乏しい.今回われわれは,一般的な不眠治療で緩和されない悪夢による苦痛に対し柴胡加竜骨牡蛎湯が有効だった症例を経験した.【症例】82歳,男性.悪性リンパ腫による疼痛,倦怠感と悪夢を伴う不眠を認めた.身体症状はステロイドで改善したが,悪夢と不眠は持続し,一般的な不眠治療には不応であった.柴胡加竜骨牡蛎湯を投与したところ速やかに悪夢と不眠が改善した.【考察】柴胡加竜骨牡蛎湯は,他の睡眠剤や抗不安薬などに比べて有害事象の懸念が少なく,がん患者の悪夢の治療に安全かつ有効に使用できる可能性がある.【結語】柴胡加竜骨牡蛎湯が進行がん患者の悪夢を改善した.