著者
原口 哲子 髙橋 佳子 大久保 晃樹 西小野 美咲 榊 美紀 原口 優清
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.197-201, 2019 (Released:2019-08-27)
参考文献数
15

【緒言】解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンはWHO(世界保健機関)方式がん疼痛治療法では代表的な薬剤の一つとして位置づけられている.【症例】75歳,女性. 左上葉肺がん術後再発.多発骨転移によるがん疼痛に対しアセトアミノフェンを使用していたが,同薬剤の商品を変更しアレルギー症状が出現したため中止し,症状は消失した.同薬剤の別の商品へ変更し継続した.【考察】アレルギー症状はアセトアミノフェンの添加剤が原因と推察された.【結論】アセトアミノフェンによるアレルギー症状の出現時,規格を変更することで薬剤使用を継続できる可能性がある.
著者
桑山 隆志 横田 成彬 可児 毅 村上 尚史 松井 慶太 中村 清吾
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.11-18, 2023 (Released:2023-01-27)
参考文献数
12

【目的】メトロニダゾールゲル(ロゼックス®ゲル0.75%:以下,本剤)について,長期使用時を含む使用実態下の安全性と有効性に関する情報を収集する目的で使用成績調査を実施した.【方法】がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減のために本剤を初めて使用する患者を中央登録方式にて登録した.観察期間は最長1年とした.【結果】安全性解析対象は301例であった.副作用発現割合は3.32%(10/301例)で,すべて非重篤であった.全般改善割合は73.7%(205/278例)であった.最終観察時の医師評価によるにおい改善割合は80.2%(203/253例)で,患者の治療満足割合は70.1%(82/117例)であった.【結論】使用実態下において,本剤ががん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減に対し,安全かつ有効な治療薬であるとともに,本剤の使用により,患者の高い治療満足度が得られることが明らかとなった.
著者
角甲 純 關本 翌子 小川 朝生 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.147-152, 2015 (Released:2015-03-05)
参考文献数
20
被引用文献数
3

【目的】呼吸困難に対する扇風機を用いて顔へ送風する支援は臨床ではよく行われているが,終末期がん患者に対する科学的なエビデンスは明らかではない.本研究では,終末期がん患者の呼吸困難に対する支援の有効性を後方視的に検討した.【方法】2013年7月~2014年1月に,当院の緩和ケア病棟に入院している終末期がん患者のうち,呼吸困難に対して扇風機を用いた支援を受けた9名の患者を分析の対象とした.効果の評価には,支援の実施前後で収集されていた呼吸困難VAS値の変化を用いた.【結果】扇風機を用いた支援実施前の呼吸困難VAS値は40.2±11.8,実施後VAS値は15.6±14.9で,実施前後で有意に減少していた(P=0.004).【考察】扇風機を用いた支援は,終末期がん患者の呼吸困難に対して効果がある可能性がある.今後は,介入研究を行い,前向きに有効性を検証していく必要がある.
著者
大森 崇史 稲永 慶太 柏木 秀行
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.225-229, 2021 (Released:2021-07-06)
参考文献数
15

【緒言】腎不全を合併した不応性の末期心不全患者の呼吸困難に対し,フェンタニル注射剤を用いて良好にコントロールできた症例を経験したので報告する.【症例】76歳,男性,拡張型心筋症のため以前より入退院を繰り返していた.慢性心不全の急性増悪で入院し,実施可能なすべての心不全治療が行われていたが,呼吸困難は改善困難であった.緩和ケアチームが介入し,腎機能低下のためにモルヒネの代替薬としてフェンタニル注射剤を使用した.経過を通して心不全は改善しなかったが,フェンタニルの投与により呼吸困難は改善した.入院41病日に死亡した.【考察】末期心不全患者は腎機能低下を伴うことが多く,呼吸困難緩和目的のモルヒネ使用が困難であることが多い.慎重な観察下にフェンタニルを代替薬として使用することにより,末期心不全患者の呼吸困難を緩和することができる可能性がある.
著者
三輪 聖 森田 達也 松本 禎久 上原 優子 加藤 雅志 小杉 寿文 曽根 美雪 中村 直樹 水嶋 章郎 宮下 光令 山口 拓洋 里見 絵理子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.281-287, 2021 (Released:2021-10-26)
参考文献数
18

【目的】緩和ケア医が苦痛の評価を行う上で知っておくことが必要と考える方言を収集する.【方法】2020年2月から4月に緩和医療専門医・認定医762名を対象とした全国質問紙調査を実施した.緩和ケア医が苦痛の評価を行う上で知っておくことが必要と考える方言とその意味を自由記述で質問し,症状別に分類した.【結果】有効回答492名(64.8%).233名(47.4%)が方言として116語を挙げ,苦痛を表現する方言は101語であった.「倦怠感・特定できない苦痛・全体的な調子の悪さ」(N=62),「疼痛」(N=13),「呼吸器・循環器症状」,「精神症状」(各N=8),「消化器症状」,「神経・筋・皮膚症状」(各N=5)であった.【結語】緩和ケア医が苦痛の評価を行う上で知っておくことが必要と考える方言とその意味が明らかになった.苦痛の適切な評価のために,苦痛を表す様々な方言があることを理解することが必要である.
著者
福島 卓矢 辻 哲也 中野 治郎 石井 瞬 杉原 進介 佐藤 弘 川上 寿一 加賀谷 斉 田沼 明 関根 龍一 盛 啓太 全田 貞幹 川井 章
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.143-152, 2023 (Released:2023-05-16)
参考文献数
24

【目的】がん診療連携拠点病院における入院がんリハビリテーション(リハ)治療の詳細を明らかにし,基礎データを確立することである.【方法】質問紙を用いた調査研究であり,リハ専門職種を対象に,施設概要,入院がんリハ実施の有無,Dietz分類,対象疾患,治療内容を調査した.【結果】Dietz分類の回復で最も関わりが多く,対象疾患は肺,大腸,血液,胃,肝・胆・膵がんの順に多かった.大腸や胃がんでは一般病院,血液がんでは大学病院,骨軟部腫瘍ではがん専門病院,口腔・咽頭・喉頭がんでは大学病院およびがん専門病院での実施割合が有意に高かった.治療内容は歩行練習が最も多く,次いで筋力増強練習,基本動作練習,日常生活動作練習,呼吸リハと続いた.呼吸リハにおいては,大学病院および一般病院での実施割合が有意に高かった.【結論】施設特性に応じて入院がんリハが実施されており,これらの効果検証と発展が課題である.
著者
岡田 雅邦 新城 拓也 向井 美千代 皆本 美喜
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.136-141, 2012 (Released:2012-03-02)
参考文献数
5

一般には動物を病院に連れてくることは許可されないが, 緩和ケア病棟ではペット面会やセラピードッグの訪問を取り入れている施設が多い. 全国の緩和ケア病棟におけるペット面会許可の現状, セラピードッグ導入の現状につき, 2009年2月現在の緩和ケア病棟承認施設193施設を対象に郵送によるアンケート調査を行い, 149施設(77%)より回答を得た. 135施設で病院敷地内でのペット面会を許可し, うち36施設はペットの宿泊を, 121施設は病室での面会が可能であった. セラピードッグは22施設に導入されていたが, 特に宗教を母体とする施設で有意に多かった. 病室にペットが宿泊できるところは宗教を母体とする施設に, 病棟でのペットとの面会は緩和ケア病棟開設年度が古い施設で有意に多かった. しかし, 無宗教の施設や新しく開設された施設でも, 多くの施設でペット面会が行われていた. 昨今の緩和ケア病棟でも癒しや心の温もりが大切にされていることが示された.
著者
新城 拓也 清水 政克 小林 重行 濱野 聖二 岡野 亨 中村 宏臣 石川 朗宏 関本 雅子 槇村 博之 本庄 昭 神戸市医師会 在宅医療懇談会
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.107-113, 2014 (Released:2014-02-04)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

【目的】本研究の目的は, 神戸市内の医師が感じている, 在宅医療に関する困難・負担感の実態を調査することである. 【方法】神戸市内の医療機関を対象に, 2013年7月に質問紙を発送した. 【結果】神戸市内の医療機関1,589施設に発送し, 899施設から返答を得た (返答率 57%). 主調査項目に対して, 返答のあった807施設(51%)を解析対象とした. そのうち, 在宅医療に対する困難・負担感は「かなり感じている」(30%), 「少し感じている」 (31%)であった. 困難の決定因子として, 医師の年齢が80歳以上(P=0.05), 在宅医療に関しての困難として「特定の医療処置」(P=0.036), 「他医療機関・介護職との連携」(P=0.002), 「時間と人員の確保」(P<0.001)が分かった. 【結論】過半数の医療機関で在宅医療に困難・負担感を感じていることが分かった.
著者
佐藤 悠子 藤森 研司 石川 光一 佐藤 一樹 石岡 千加史 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.156-165, 2016 (Released:2016-06-13)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

【目的】保険診療情報が格納されたナショナルデータベース(National Data Base,以下NDB)を用いた,終末期がん医療の質の評価の実現可能性と限界を検討した.【方法】NDBのサンプリングデータセット(Sampling Data Set,以下SDS)を用いて,2012年10月の死亡がん患者を対象に死亡14日以内の心肺蘇生術と化学療法の実施率を算出した.【結果】対象者1,233例を解析した.心肺蘇生術と化学療法の実施率は,入院死亡症例(n=1079)で8.2%,3.5%であった.SDSの仕様では,解析対象の化学療法薬剤の27-70%が匿名化されていた.【考察】SDSでは匿名化処理や入院と外来レセプトが紐付けされない等の問題から,過小評価の可能性があり結果の解釈に注意を要する.しかしながら,NDBの特別抽出であればこれらの問題の一部は解決でき,同様の手法で質の評価は可能と考えられた.
著者
阿部 泰之 堀籠 淳之 内島 みのり 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.134-140, 2014 (Released:2015-02-17)
参考文献数
19

【目的】本研究の目的は,医療介護福祉間の,特に現場においてのバリアをなくす取り組みであるケア・カフェ®を地域に適用することにより,地域の連携がどのように変化するか調査することである.【方法】ケア・カフェ®の参加者を対象とした質問紙による前後比較研究を行った.医療介護福祉の地域連携尺度の点数変化の解析,質問紙の自由記載の内容分析をあわせて検討する混合研究法を用いた.【結果】地域連携尺度の点数は,合計点数および4つの下位尺度において有意に上昇し,その効果量は0.32~0.36であった.自由記載の内容分析において,参加者はケア・カフェ®に参加することにより,多職種の顔の見える関係をつくるという本来の目的以外にも,癒しの場,コミュニケ-ション上の気づき,社会関係資本など,多様な成果を得ていることが分かった.【結論】ケア・カフェ®は,地域における医療介護福祉の連携を改善する有用なツ-ルである.
著者
白石 朝子 安髙 久美子 木村 恵 鍋島 直美 伊藤 誉人 井手 飛香 近藤 貴子 尾崎 彩子 塚田 順一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.65-70, 2022 (Released:2022-06-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1

COVID-19蔓延下の面会制限で入院療養への影響,患者・家族のニーズの把握は重要である.産業医科大学病院 緩和ケアセンターに紹介された担がん患者,家族(以下,患者家族),当該患者のプライマリーナース(以下,PNs.)を対象とし,無記名自記式の質問紙調査を行った.統計解析にはEZRを用い,p<0.05を有意差ありとした.患者31例(男性9例,女性22例,年齢中央値65歳(30~85歳)),患者家族25例,PNs.26例の回答を得た.「面会制限があることで気持ちが落ち込むことがあるか」という質問では患者よりも有意に患者家族への影響が強かった(p<0.05).面会手段に関しては患者と比較して患者家族は直接面会を希望する傾向にあった(p<0.05).面会制限の影響は患者よりも患者家族に大きく,面会制限下では家族ケア・サポートがより重要であると考えられた.
著者
角甲 純 中村 陽一 西 智弘 高木 雄亮 松田 能宣 渡邊 紘章 笠原 庸子 合屋 将 小原 弘之 森 雅紀 山口 崇
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.33-42, 2022 (Released:2022-03-31)
参考文献数
44
被引用文献数
1

【目的】慢性進行性疾患患者の呼吸困難に対する送風療法の有効性について検討する.【方法】医中誌,Cochrane Library, EMBASE, MEDLINEを用いて,2019年10月23日までの期間に報告されたすべての文献について検索を行った.また,2020年6月30日と2021年12月7日に,PubMedを用いてハンドサーチを行った.適格基準は,1)送風療法を扱う無作為化比較試験,2)対象者の年齢が18歳以上,とした.除外基準は,1)重複文献,2)学会発表,とした.【結果】110件中10件が採用され,そのうち5件についてメタ解析を行った.送風療法は標準化平均値差−1.43(95%信頼区間−2.70~−0.17; I2=94%;異質性のp値<0.0001)であり,呼吸困難を有意に改善した.【結論】慢性進行性疾患患者の呼吸困難に対して送風療法は有効であることが示された.
著者
森田 達也 野末 よし子 井村 千鶴
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.323-333, 2012 (Released:2012-04-26)
参考文献数
13
被引用文献数
16 8

「顔の見える関係」の概念と地域連携への影響を探索することを目的として, 多職種の医療福祉従事者207名を対象とした質問紙調査と, 5名を対象としたインタビュー調査を行った. 「顔の見える関係がある」の項目は, 「名前と顔, 考え方が分かる」「施設の理念や事情が分かる」「性格, つきあい方が分かる」「具体的に誰がどのような仕事をしているかだいたい分かる」と0.7以上の相関を示した. インタビュー調査では, 「顔の見える関係」とは【顔が分かる関係】【顔の向こう側が見える関係】【顔を通り超えて信頼できる関係】の3つを含んでいた. 顔の見える関係が地域連携に及ぼす影響として, 【連絡しやすくなる】【誰に言えば解決するかや役割が分かる】【相手に合わせて自分の対応を変えるようになる】【効率が良くなる】【親近感を覚える】【責任を感じる】が抽出された. 顔の見える関係の概念と影響についての予備的知見を得た.
著者
内藤 明美 森田 達也 田村 恵子 大屋 清文 松田 能宣 田上 恵太 柏木 秀行 大谷 弘行
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.115-122, 2021 (Released:2021-04-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

【背景】スピリチュアルペインの統一された定義はない.国内の緩和ケア医と精神科医のスピリチュアルペインに関する認識を調査した.【対象・方法】緩和ケアに携わる緩和ケア医・精神科医を対象とした質問紙調査を行った.【結果】緩和ケア医387名(回収率,53%),精神科医374名(45%)から回答を得た.76/69%(緩和ケア医/精神科医)がスピリチュアルペインと抑うつは異なると答えた.66/71%は定義が不十分,59/60%が抑うつなど治療可能な苦痛が見逃されると答えた.40/47%が定義を明確にするべきとしたが,定義のあり方には意見が分かれた.緩和ケア医と精神科医の認識に大きな差はなかった.【結論】緩和ケア医,精神科医ともスピリチュアルペインの定義が不十分と認識するが,望ましい定義のあり方は一致しない.今後日本におけるスピリチュアルペインのコンセンサスを得ることの意義について検討する必要がある.
著者
平井 啓 山村 麻予 鈴木 那納実 小川 朝生
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.27-34, 2021 (Released:2021-02-05)
参考文献数
27
被引用文献数
1

【目的】医療現場において,意思決定が困難である高齢者のがん治療事例の特徴と,医師による対応について探索的に明らかにする.【方法】腫瘍内科の医師7名に対してインタビューを実施した.調査項目は,意思決定困難な事例やその対応,意思決定支援に関することである.逐語記録をもとにカテゴリー分析を行った.【結果】まず,意思決定困難な事例は,認知機能・身体機能を含む[患者要因]と,周囲の状態である[環境要因]の二つに大別された.前者はさらに特性要因と疾病・加齢による要因に分けられる.次に,医師の対応は,[アセスメント]と[対応スキル],および[環境対応]の3カテゴリーとなった.【考察】患者への情報提供のために,患者要因や環境要因のアセスメントを行ったうえで,それぞれに対応するスキルを発揮する必要がある.具体的なスキルとしては,患者に応じた説明,目標の立案,ナッジを使うことが挙げられた.
著者
大石 恵子 村上 真基 綿貫 成明 飯野 京子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.245-250, 2018 (Released:2018-08-16)
参考文献数
12

【目的】緩和ケア病棟併設のない病院の療養病棟での緩和ケアの実態を明らかにし,療養病棟における緩和ケア推進のための課題を検討する.【方法】東京都の211の療養病棟管理者へ無記名自記式質問紙調査を行った.医療用麻薬の管理と使用実態,緩和ケアに習熟した医師・看護師の存在,がん患者の受け入れ体制,非がん緩和ケアへの認識,療養病棟での緩和ケアにおける困難について質問した.【結果】55施設から回答を得た.89.1%ががん患者を受け入れ医療用麻薬も使用可能だが,緩和ケアに習熟した医師がいる施設は32.7%であった.7割以上が非がん緩和ケアを重要視し取り組んでいた.緩和ケアに習熟した医師のいない施設では,専門知識・技術,麻薬投与,苦痛緩和についての困難感が有意に高かった.【結論】多くの療養病棟でがん・非がん緩和ケアに取り組みつつ,困難感も抱えている.緩和ケアに習熟した医師の存在は困難感を低減させる可能性が示唆された.
著者
佐々木 まなみ 田口 雄也 田上 恵太 押切 華映 前嶋 隆弘 中條 庸子 金澤 麻衣子 佐藤 麻美子 布田 美貴子 井上 彰
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.97-104, 2022 (Released:2022-08-26)
参考文献数
26

【目的】緩和ケアチームで介入する患者の栄養学的問題点を明らかにし,緩和ケアチームにおける管理栄養士介入の効果を調査する.【方法】緩和ケア診療加算・個別栄養食事管理加算を算定した症例を後ろ向きに調査し,①介入時の栄養学的問題点と介入内容,②Verbal Rating Scale(VRS)で評価した介入前後の食に関する苦悩,③エネルギー摂取量を調査した.【結果】患者年齢(中央値)66歳,①介入時の栄養学的問題点は「エネルギー摂取量不足」56例,介入内容は「食事形態変更」53例と最も多く,②食に関する苦悩はVRS(中央値)3から2へ改善し,③エネルギー摂取量は753 kcal±552 kcalから926 kcal±522 kcal/日と有意に増加(p<0.01)した.【考察】緩和ケアチーム管理栄養士の介入は,食事に関する苦悩を軽減させ,エネルギー摂取量を増加させる一つの要素になる可能性が示唆された.
著者
大森 崇史 柏木 秀行 井上 修二朗 古川 正一郎 下見 美智子 宮崎 万友子 原田 恵美 廣木 貴子 岡 佳子 堤 一樹 大屋 清文
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.165-170, 2022 (Released:2022-11-24)
参考文献数
14

心不全患者に対する緩和ケアの必要性が注目されているが,まだ国内では提供体制が十分に整っていない.飯塚病院は福岡県飯塚市に位置する1048床の急性期病院であり,同院において心不全の緩和ケアを提供するためにハートサポートチーム(HST)を創設し,心不全緩和ケア提供体制を構築した.2017年5月にHSTを創設後,2022年3月までに循環器内科から168例の心不全患者の緩和ケア介入依頼があった.介入事例のうち,緩和ケア診療加算の算定基準を満たしたのは25例(14.8%)だった.HSTの創設・運用にあたり,スタッフの確保,育成,持続する仕組みづくりが課題であると考えられた.循環器の専門職だけでなく緩和ケアや精神ケア等を専門とするスタッフと協働したHSTを創設することで,急性期病院で心不全患者に対する緩和ケア提供体制を構築する最初の一歩となった.
著者
天野 晃滋 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.169-174, 2018 (Released:2018-04-27)
参考文献数
25
被引用文献数
1

がん悪液質の病態に基づく患者と家族の食に関する苦悩への関わり方の解明は不十分だが,その要点は,1)患者と家族の食に関する苦悩に注意を向ける,2)がん悪液質の影響を抑制できれば患者と家族の食に関する苦悩は軽減できる,3)患者と家族の食に関する苦悩の主な原因はがん悪液質についての理解不足・体重増加の失敗体験・死の予兆としての認識,そして患者と家族の食に関する感情の衝突である,4)患者と家族にがん悪液質の病態と食に関する苦悩の要因を説明し付随する問題の対処についてアドバイスする,5)がんの進行にともない患者と家族の食に関する苦悩は増強するので個々の患者と家族にあった緩和ケアと栄養サポートを検討する,にまとめられる.がん悪液質に起因する食に関する苦悩には患者と家族で固有のものもあれば双方の関係で生じるものもある.それら苦悩の要因と過程をふまえた緩和ケアと栄養サポートが求められる.
著者
西 智弘 小杉 和博 柴田 泰洋 有馬 聖永 佐藤 恭子 宮森 正
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.337-340, 2016 (Released:2016-12-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本邦における余命の告知が,内容まで含めてどの程度具体的に行われているのかを示した報告は少ない.2013年4月から2016年3月までに,緩和ケア科の初診に紹介された患者について,前医における余命の告知に関する記載について診療録から後方視的に抽出した.結果,248名が調査対象として抽出され,そのうちの43%が「数字断定」の告知を受けていることがわかった.一方,19%の患者・家族は,主治医から余命について「聞かされていない」という結果であった.本研究から,一定の割合で「数字断定」的な余命の告知が行われていることが示唆され,終末期の話し合いについての改善の必要性が改めて示された結果であると言える.