著者
朝倉 佑実 河野 洋平 佐藤 将嗣 青山 隆夫
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】慢性裂肛には、ニトログリセリン等を含むクリームを患部に塗布し、肛門静止圧を低下させる治療が行われている。しかし、副作用や高い再発率が問題であり、有用な新規薬剤が求められている。芍薬甘草湯は内服で筋弛緩作用を示すことが知られており、外用薬としての有用性が期待できると考えられる。本研究ではラットを用いた肛門内圧測定法を構築するとともに、芍薬甘草湯クリームによる内肛門括約筋の弛緩効果を評価した。【方法】芍薬甘草湯クリームは、精製水に懸濁した市販エキス細粒2.5 gに、添加剤の流動パラフィンとグリセリン、および基剤の親水軟膏を加え、全量を7.0 gとした。肛門内圧測定用のプローブは、カテーテル(6 Fr)の先端にポリエチレン製のバルーンを装着して作成した。プローブにかかる圧力は、血圧トランスデューサと圧力用増幅器を用いて測定し、解析にはPowerLabを用いた。肛門内圧測定精度の検証では、クリープメータを用いてプローブにかけた一定の荷重と圧力測定値間の相関性を評価した。SD系雄性ラットを無作為に芍薬甘草湯群または対照群に振り分けた2剤2期のクロスオーバー試験では、吸入麻酔下でクリーム塗布前と塗布(0.1 g/kg)後3 hに肛門内圧を測定し、算出した肛門内圧変化率で効果を評価した。【結果・考察】プローブに一定の荷重(0.01–0.1 N)をかけて圧力を測定した結果、荷重と圧力の間に良好な相関が認められ(R2=0.996)、本測定法の定量性が確認された。肛門内圧変化率は、芍薬甘草湯群の塗布後3 hで78.8±13.5%(n=10, mean±S.D.)となり、対照群に比して有意に低下した(p<0.05)。以上のことから、芍薬甘草湯クリームは慢性裂肛の治療薬として有用である可能性が示された。