著者
砂本 順三 佐藤 智典
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.2, pp.161-173, 1989-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
70
被引用文献数
4

卵黄レシチンリポソームの構造強化と標的指向性を達成するために, 本研究では疎水性アンカーとしてパルミトイル基やコレステリル基で一部修飾した天然由来多糖でリボソーム表面を被覆した。多糖被覆リボソームの構造安定性は, 内包蛍光ブローブの流出抑制およびリボソームの酵素的分解抑剃により確認された。また多糖の構造に依存した標的指向性も発現した。すなわち, アミロペクチンやマンナン誘導体で被覆したリボソームは貧食細胞との親和性に優れ, 動物に静脈投与したのち肺への特異的な集積がみられた。この特異性を利用して, 抗菌剤 (アンホテリシンB, ミノサイクリンおよびシソマイシンなど) や免疫賦活剤 (ポリアニオンポリマー) をこれらの多糖被覆レポソームにカプセル化することで, それぞれ, 細胞内増殖菌に感染した動物モデルでの抗菌活性およびマクロファージの活性化を顕薯に向上することに成功した。つぎに, がん細牌への特異牲を付与するために, プルラン被覆リポソームへ抗体を化学的に結合した immunoliposomeを作製した。認識素子として CSLEX1 のサブユニット IgMs を結合したリボソームは, 特異がん細胞との高い結合性および, PC-9 肺がん移植マウスでの腫瘍指向性を示した。また, 抗がん剤アドリアマィシンを immunolipasame にカプセル化することで, 動物モデルでの顕著な腫瘍増殖抑制効果も観察された。