著者
佐藤 曉
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.23-28, 1997-03-31 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1

本研究は、漢字書字に困難を示した学習障害児における漢字の書字指導と学習過程を分析した。その結果、漢字形態の構成要素を視覚的に分節化してとらえることやそれらを空間的に配列する構成行為のまずさが、漢字視写の困難をもたらしていることが示された。これに対し、漢字を構成する十の要素(宮下,1989)に注目して漢字の形態をとらえさせるとともにこれらの要素の運筆技能を習得させたところ、漠字視写や直接練習の対象としなかったかな書字に大きな改善が見られた。一方、漢字の書き取りの困難は、視覚的な記憶の問題と深い関わりがあることが示唆された。そこで、漢字一つ一つについて構成要素を言語化させることによって視覚的記憶のまずさを補ったところ、書き取りの成績が向上した。さらに、書き誤りの多い漢字については、書字過程におけるメタ認知やモニター機能(海保・野村,1983)に着眼して指導することによって、書字の誤りが軽減された。