著者
添田 哲平 佐藤 隆裕 角田 圭 長谷川 信 久留利 菜菜 土橋 邦生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D3P1517, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】近年COPD患者に対する身体への酸素の取り込みを総合的かつ簡便に評価できる20秒間息こらえテストが用いられるようになり、先行研究においては20秒間息こらえ開始後の動脈血酸素飽和度(以下SpO2)の変化についての報告はあるが、そのテストの方法論は確立されておらずメカニズムも解明されていない.今回健常成人男性において、息こらえ時の呼吸の止め方の違いによりSpO2や呼気ガスにどのような変化が起きるか、またその変化がどのような個人因子と関連があるのかについて調べ、20秒間息こらえテストの有用性を検討することを目的とした.【方法】対象者は本研究の目的および内容について説明を行い、紙面にて同意の得られた健常成人男性19名を対象とした.測定項目は、呼気ガス分析装置により、V(dot)E、V(dot)O2、V(dot)CO2、ガス交換比(以下R)、呼吸数、パルスオキシメータによりSpO2を測定した.測定は、端坐位にて、安静3分間、その後息こらえ20秒間、息こらえ終了後の安静3分間についてSpO2は5秒毎に記録し、呼気ガス分析の値は一呼吸毎の値とした.息こらえ時の呼吸の止め方は3条件とし、息をこらえる直前の呼吸を、条件1では最大吸気位、条件2では最大呼気位、条件3では安静吸気位で息こらえを開始することとした.また、アンケートにより身長、体重、運動習慣等を調査した.条件1と条件2の平均の比較にはWilcoxonの符号付順位検定を、条件3での群間比較にはMann-WhitneyのU検定を用い有意水準は5%未満とした.【結果】条件1と条件2の比較では、V(dot)Eの値が呼吸再開後の2回目と3回目の呼吸において、Rの値は呼吸再開後の3~10回目の呼吸において、条件1よりも条件2で有意に高値を示した.また、SpO2の値は、息こらえ開始後の25~50秒にかけて条件1よりも条件2で有意に低値を示し、条件2では一旦低下した後上昇し、息こらえ開始後の65~115秒にかけて安静時の平均値を上回った後、息こらえ前の値に近づいた.条件3については、息こらえ後のRの値が1を超えずに徐々に回復する群(以下A群、n=11)と、1を超えた後徐々に減少し回復が見られる群(以下B群、n=8)の2群に分けられ、V(dot)Eの値が呼吸再開後の2回目と4回目の呼吸において、またRについても3~12回目の呼吸においてA群よりもB群で有意に高値を示した.SpO2の値は、B群では値が低下後に上昇し息こらえ開始後の55~100秒にかけて安静時よりも高い値を示した.運動習慣については、A群よりもB群において有意に運動習慣が少なかった.その他のアンケート結果には2群間に差は認められなかった.【まとめ】安静吸気位での20秒間息こらえテストは、そのSpO2の値の変化が運動習慣の違いを反映し、本テストが運動習慣を評価する指標として有用である可能性が示唆された.