著者
今泉 敦美 小川 亞子 鄭 飛 田熊 公陽 阪元 甲子郎 松崎 航平 丸田 健介 矢野 佑菜
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0966, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】長時間の精神作業や精神的ストレス負荷は,眠気の誘発と共に意欲・集中力の低下をもたらす。また,尾上ら(2004)は脳が疲労することにより前頭前野の血流低下がみられることを報告している。脳の疲労回復に効果的なものとしてアロマセラピー,ガムを噛むなどが挙げられているがそれらの効果を比較した文献は見当たらない。本研究の目的は,閉眼安静・ガム・アロマセラピーの3つの項目のうち短時間で脳の疲労を改善する手段を比較検討することである。【方法】対象は健常若年成人9名(男性3名,女性6名,平均年齢22.3±1.4歳)。脳表の血流変化は,光トポグラフィETG4000(株式会社日立メディコ製)を用い,国際10-20法に準じて脳疲労関連部位である前頭前野に3×3のプローブを設置した。今回,脳の疲労回復方法として3つの方法(閉眼安静,アロマセラピー,ガムを噛む)を用い,また脳を疲労状態にさせるため2桁の100マス計算を施行した。方法は1.10秒間安静,60秒間100マス計算を30秒の休憩をはさみ2回施行。その間NIRSによる脳血流量の測定を行う。2.30秒間安静後被験者は3つの方法をそれぞれ5分間実施。(1)安静:光を遮断した室内で閉眼し,5分間の安静をとる。(2)アロマセラピー:香りは精油(レモングラス)を匂い紙に浸したものを被験者より約3cmの距離で吸入させる。(3)ガム(ミディアムタイプ):メトロノームを用いて毎分60回の頻度で5分間咀嚼する。3.その後1分間安静をとり,その間にNIRSによる脳血流量の測定を再度行う。統計学的解析は,SPSS(Ver.21)を用いて多重比較検定を行った。なお,有意水準は5%未満とした。【結果】3つの課題において,閉眼安静がアロマセラピーとガムに比べて左右の背側前頭前野のoxy-Hb量が最も増加した。安静の次にoxy-Hb量の増加がみられたのはガムであり右側背側前頭前野において増加がみられた。また,アロマセラピーは他項目に比べ増加率は少なかったが,左側上部前頭前野のoxy-Hb量の増加が見られた。【結論】本研究では,3つの課題が大脳皮質前頭前野の脳血流に与える影響についてNIRSを用いて脳血流量の変化を比較・検討した。閉眼安静時に最も脳血流の増加がみられた。理由として,高橋ら(2003)は,入眠前になると,副交感神経が活発になり血管が拡張すると報告している。このことから,5分間の閉眼安静による視覚遮断,室内を暗くすることにより睡眠に近い状況に持っていくことで,副交感神経が活発になり心身・身体ともにリラックスできたことで脳血流量増加に至ったのではないかと推測される。また石黒ら(2013)は,測定部位である前頭前野は運動学習の課題遂行性の改善に重要な役割を果たしていると報告している。今後の課題として,臨床において閉眼安静が運動学習効率化に活かせるのかを検討していきたい。
著者
小泉 美緒 奥村 将之 玉木 彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0770, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】呼吸リハビリテーションにおける下肢の筋力トレーニングのエビデンスレベルは最も高いGrade Aに位置づけられている。しかし,呼吸器疾患患者では呼吸困難感などにより筋力トレーニングに必要な高強度負荷をかけられないという問題がある。そこで近年,骨格筋電気刺激(以下,EMS)が注目されている。これまでにEMSの生理学的効果に着目した先行研究は散見されるが,その効果が現れる実施頻度に関する報告は少ない。そこで本研究では,EMSの異なる実施頻度が下肢の筋厚,筋力,運動耐容能に与える効果を検証し,その効果の差を比較検証することを目的とした。【方法】対象は健常成人男女25名(男性9名・女性16名,年齢:20.3±1.2歳,身長:164.5±7.5cm,体重:56.6±8.2kg)とし,EMS非実施群(Control群)と,EMS実施群を週3日実施群(週3群),週5日実施群(週5群)に無作為に分類した。EMS実施群はベルト電極式骨格筋電気刺激装置を用い,非監視下にて1日1回20分の電気刺激を6週間継続して実施した。強度は対象者の耐えうる最大強度とし,毎回指定の用紙に強度を記入してもらうよう指示した。尚,全ての対象者は6週間のうち最初と最後の1週間の活動量をモニタリングし,日常生活における活動量を統一した。EMS介入前には,超音波診断装置を用い大腿部と下腿部筋厚,等尺性膝関節伸展筋力(膝伸展筋力)及び筋疲労率,体組成などを測定し,さらに運動耐容能として心肺運動負荷試験(CPX)を実施し,6週間後も同様の評価を行った。また,CPXと膝伸展筋力の測定日は別日とした。統計処理は各群のEMS実施前後における各測定値の差を対応のあるt検定で,3群間における各測定値の変化量の差を一元配置分散分析および多重比較にて分析した。さらに,大腿部筋厚と膝伸展筋力の関係をPearsonの相関係数を用いて分析した。有意水準は5%とした。【結果】EMS実施後の大腿部,下腿部筋厚は実施前より週3群,週5群で有意に高値を示した(p<0.05)。また,各群における筋厚の変化量はControl群と比較して週3群,週5群で有意に高値を示し(p<0.05),週3群と週5群間には有意差が認められなかった。EMS実施後の膝伸展筋力は週3群と週5群で有意に高値を示し(p<0.05),膝伸展筋力の変化量はControl群と比較して週3群と週5群で有意に高値を示した(p<0.05)。EMS実施後のpeak Wattと右脚筋肉量は週5群のみ有意に高値を示した(p<0.05)。さらに,大腿部筋厚と膝伸展筋力との間には有意な相関関係が認められた。【結論】6週間のEMSの実施により週3群では筋厚,膝伸展筋力に有意な増加が認められ,その変化量は週5群と比較しても統計学的に有意な差は認めなかった。このことから,EMSは週3日という実施頻度でも十分に下肢の筋力トレーニングとしての効果が得られることが示唆された。
著者
根本 伸洋 大橋 夏美 湖東 聡 松永 勇紀 角本 貴彦 柿崎 藤秦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1258, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】胸郭の運動性は、呼吸において重要であるが、身体全体に対して0.479の質量比を持つ体幹の約半分を占める部分である為、歩行などの身体運動にも影響すると考える。実際の臨床においても、胸郭全体の運動性低下や、運動性の左右差が生じている患者では、それに見合った呼吸や身体運動しか出来ないことが観察される。また、そのような患者に対して、胸郭と接する肩甲骨位置を修正することで、運動性や左右差の改善を図ることができ、良好な呼吸や身体運動を獲得できることを経験する。そこで今回は、肩甲骨内外転位置が胸郭の運動性に与える影響を検討したので、ここに報告する。【方法】対象は、本研究の内容を十分に説明し同意を得た健常成人8名とし、各条件での坐位姿勢をゼブリス社製3D-Motion Analysis CMS20Sを用いて測定した。測定した姿勢は、1)安静坐位姿勢、2)安静坐位から胸郭を右側へ並進移動させた坐位姿勢(以下、右変位姿勢)、3)右肩甲骨を外転誘導しての右変位姿勢、4)右肩甲骨を内転誘導しての右変位姿勢とした。なお、右変位姿勢は、骨盤帯が動かない範囲で胸郭を並進移動させ、肩甲骨位置の誘導は、右上肢を内旋位にすることで肩甲骨外転位置へ誘導し、右上肢を外旋位にすることで肩甲骨内転位置へ誘導した。また、測定の順番は、最初に安静坐位を測定した後は、無作為の順で各右変位姿勢を測定した。測定したランドマークは、両PSIS、両ASIS、両腸骨稜、Th1棘突起、Th11棘突起、胸骨頸切痕、剣状突起、第11肋骨先端とし、最も突出した部分または最も陥没した部分に十分注意を払いマーキングした。検討項目は、各ランドマークの空間座標から、1)胸骨頸切痕と第11肋骨先端の距離(以下、胸郭距離)、2)Th11棘突起と剣状突起を結ぶ線とTh11と第11肋骨先端を結ぶ線が水平面上でなす角(以下、肋骨角度)を左右で求め、対応のあるt検定を用いて、それぞれ危険率5%未満を有意とした。【結果】胸郭距離は、肩甲骨の誘導がない右変位姿勢と比較し、肩甲骨外転位での右変位姿勢で、変位させた側の右胸郭距離が有意に増大した。また、肋骨角度の左右差の平均は、肩甲骨内転位での右変位姿勢、右変位姿勢、外転位での右変位姿勢の順に増大し、それぞれ安静坐位と比較し有意に増大していた。【考察】胸郭距離、肋骨角度の左右差が肩甲骨内転位で増大していた結果から、胸郭の運動性が増大したと考えた。これは、肩甲骨外転位では肩甲骨が胸郭側方に位置する為に、胸郭側方の運動性を妨げるが、肩甲骨内転位にすると肩甲骨は胸郭後方に移動し、胸郭側方の運動を妨げない為であると考えた。今回の結果から、肩甲骨の位置を考慮することで、胸郭の運動性を引き出し、呼吸や身体運動の改善に繋げられる可能性が考えられた。
著者
大森 絵美 西上 智彦 渡邉 晃久 脇 真由美 河田 健介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3054, 2009

【はじめに】日常臨床上,気象の変化による痛みの増強を訴える症例をよく経験する.これまでに,佐藤らはモデルラットを用いて気圧・気温の低下が痛み閾値を低下させることを明らかにした.また,国内で実施された「健康と気候に関するアンケート」の調査結果において,一般生活者及び慢性疾患患者の約7割が天候や季節変化による体調への影響を経験していることが報告されている.しかし,臨床現場において,実際に,気圧・気温の変化が痛みを惹起しているかは明らかでない.そこで,本研究の目的は気圧や気温が痛みに関与するか検討することである.<BR><BR>【方法】対象は本研究を理解し同意が得られ,調査期間中に他に痛みが増強する要因がなかったことを確認した本院外来通院患者21名(男性7名,女性14名,平均年齢68.3±13.0歳)とした.まず,調査初日に気象の変化が痛みに影響するかについて意識調査を行った.痛み,気圧,気温の調査は10月中旬から同年11月中旬の不連続な計10日間に行った.痛みの程度は毎回午前9時から午前10時の間にvisual analogue scale(以下:VAS)を用いて評価した.気圧・気温については気象庁ホームページより,本院から最も近い観測所のデータを参考にした.解析対象は,気圧については調査日の午前9時における気圧及び気圧変化量(午前8時の気圧から午前9時の気圧を引いた値)とした.気温については調査日の午前0時から午前8時までの間の最低気温及び気温変化量(調査前日の午後10時の気温から調査当日の午前6時における気温を引いた値)とした.統計処理はSPSS11.5Jを用いて行った.まず,VASと気圧・気圧変化量・気温・気温変化量のそれぞれの相関係数を求め,相関係数0.8をカットオフ値として2群に分割し,気象の変化が痛みに影響するかの有無とのFisherの正確確率検定を行った.また,VASを目的変数とし,気圧,気圧変化量,気温,気温変化量を説明変数としたStepwise法による重回帰分析を行った.なお,有意水準は5%未満とした.<BR><BR>【結果】気象の変化が痛みに影響すると回答したのは21名中16名であった.Fisherの正確確率検定において有意な差は認めなかった.重回帰分析によりVASに影響を与える説明因子として21名中20名に気圧を認めた.<BR><BR>【考察】気象の変化が痛みに影響を及ぼすかの意識と実際の気象と痛みの関係は乖離していた.また,佐藤らは人為的に起こした気圧低下・気温低下においてモデルラットの痛みの増強を確認しているが,自然な気象変化の中で行ったヒトにおける本研究では,気圧・気圧変化量・気温・気温変化量のうち,気圧がもっとも痛みに影響を与える因子であった.本研究から,気圧の低下が痛みを増強していることが明らかになり,理学療法実施時には十分考慮した上での評価,治療が必要と考えられる.
著者
酒井 章吾 石橋 敏朗 浦辺 幸夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0609, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】様々なスポーツにおいて,運動中に声を発する場面をしばしば目にすることがある。これはシャウト効果(Shout effect)を期待しており,自ら発声することによって最大努力時の筋力が増加するというものである。シャウト効果については様々な先行研究があるが,筋出力時の言葉の種類について言及したものは少ない。筆者らは,もし言葉の種類によってシャウト効果に差が生じるのであれば,スポーツ場面で選手が発する言葉を選択することで,より高い筋力発揮ができると考えた。本研究では,母音の種類によるシャウト効果に違いがあるか検証を試みた。【方法】一般成人男性30名(平均年齢21.6±1.1歳)を対象に無発声,「あ」「い」「う」「え」「お」の各母音の最大発声をランダムに行い,各母音発声中の等尺性膝伸展筋力を測定した。筋力の測定には,Cybex 6000(メディカ株式会社)を使用し,1条件に対し2回測定を行い(筋出力時間は5秒間),測定間の休息時間は60秒間とした。また,各条件間の休息時間は10分間とした。測定肢位は,膝関節は60°屈曲位,背もたれ角度は110°(座面が基本軸)とした。統計処理には,PASW statistics 18を使用し,1元配置分散分析を行い,事後検定には,Bonferroniの方法を用いた。危険率5%未満を有意とした。【結果】無発声および各母音の発声時の筋力測定値の平均値を示す。無発声で2.70±0.53(Nm/kg),「あ」で2.97±0.63,「い」で3.01±0.52,「う」で2.88±0.66,「え」で3.00±0.47,「お」で2.90±0.57だった。「え」では無発声に対して有意に筋力が増加した(p<0.05)。「あ」「い」「う」「お」では無発声に対して,全て筋力が大きくなったが,有意な増加ではなかった(NS)。【結論】シャウト効果が生じる要因について,先行研究では,音刺激による心理的影響や脊髄前角細胞の興奮順位の増強により,筋力発揮が増加すると考えられている。また,「い」「え」を選択すると運動能力が向上したという報告もある。本研究結果では,「え」の発声時のみ,無発声時よりも筋力が増加した。先行研究では「い」「う」「え」の発声時に,精神的緊張が高まるとされており。この緊張と筋出力のタイミングが合致することで運動に対し有効に働くとされている。今回,「え」のみで筋力の増加が認められたが,発声に関与する筋や頸部周囲筋の特性を含めて検討を進めたい。
著者
原 耕介 松島 知生 小保方 祐貴 西 恒亮
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0087, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】近年,股関節唇損傷の病態や治療に関する報告が増えている。損傷メカニズムは股関節運動時に大腿骨頚部と臼蓋前縁が衝突することとされている。臨床では,股関節屈曲時に鼡径部につまりや疼痛を訴える患者に対し,徒手的に骨頭の後方滑りを補助することで症状の軽減やROMが改善することを経験する。また,LeeやSahrmannは股関節屈曲運動に伴う大腿骨頭の後方すべりの減少に起因する関節前面のインピンジメントを成書のなかで示している。Sahrmannは,自動SLR時の大転子の軌跡を追うことで,大腿骨頭の後方滑りを評価しているが,股関節屈曲運動に伴う大腿骨頭の動態について報告しているものは見受けられない。そこで今回,他動股関節屈曲運動時の大転子の軌跡を分析し,大腿骨頭の動態を明らかにすることを目的とする。【方法】対象は健常成人男性10名20股(年齢24.5±2.2歳,身長171.2±3.cm,体重66.8±7.0kg)で,股関節屈曲時に鼡径部につまり・疼痛を感じる群(P群:6股)と感じない群(N群:14股)に分け,基本特性として,股関節0°および90°屈曲位における股関節内外旋角度を測定した。被験者は骨盤・股関節中間位の背臥位とした。骨盤中間位は両側上前腸骨棘(以下;ASIS)と恥骨結合が並行になる位置とし,股関節内外転中間位を維持するために膝蓋骨中央をマーキングし,さらに膝蓋骨中央が上方を向いた位置を股関節内外旋中間位とした。その後,骨盤の代償が可能な限り起こらないように,非検査側の大腿部および両側のASISを非伸縮性のベルトで固定し,さらに徒手的に両側ASISを固定した。測定は他動股関節屈曲運動を最終域まで行った。最終域は検者がエンドフィールを感じた時点もしくは被検者が鼡径部につまり感を感じた時点とし,その際の可動域を測定した。その際,大転子最突出部(以下;Tro)を触診し軌跡を追い,屈曲10°ごとにTroをマーキングした。マーキング後に両側ASISを結んだ線の延長線上でTroから60cm,床から60cmの位置に設置したデジタルカメラにて縦・横とも1ピクセル0.2mmに設定した画像を撮影した。撮影した画像を,Image Jを用いX軸は頭側を正,尾側を負とし,Y軸は腹側を正,背側を負として,各股関節屈曲角度におけるTroの座標を求めた。股関節屈曲0°の座標を原点とし,原点からのTro移動量(以下,原点移動量)をmm単位で屈曲角度ごとに求めた。さらに,各屈曲角度間におけるTroの移動量(以下,角度間移動量)も同様の方法で求めた。統計処理はSPSSver21.0を用い,各股関節屈曲角度におけるX軸・Y軸の原点移動量および角度間移動量,股関節屈曲可動域および90°・0°内外旋可動域をN群とP群で比較した。群間比較にはMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者に目的及び内容,対象者の有する権利について口頭にて十分説明を行い,書面にて同意を得た。【結果】股関節屈曲可動域はN群が優位に大きい値(N群:107.50±6.72°,P群:98.33±3.67°)を示した。股関節内外旋可動域は群間で差は認められなかった。X軸原点移動量では屈曲10°から40°においてP群で有意に頭側へ移動し,Y軸原点移動量は屈曲10°から最終域の全屈曲角度でP群有意に腹側へ移動した。角度間移動量では両軸とも屈曲0°から10°の間にN群で有意に尾・背側に移動した。【考察】他動股関節屈曲時にP群では屈曲0°から10°における大転子の背側移動量が減少し,その後も背側に大転子が背側へ移動せずに,N群よりも腹側に大転子が位置していることが分かった。Joshuaらによれば,大転子の移動量は股関節中心の移動量を反映しているため,大転子が背側へ移動しない,つまり,大腿骨頭が後方へ滑らないまま屈曲することが鼡径部のつまりや疼痛の一因である可能性が示唆された。後方滑り減少の原因として,本研究では,群間で屈曲可動域に有意差は認められたが,内外旋可動域に差がないことから,諸家により報告されている短外旋筋群の伸張性低下が股関節屈曲可動域や大腿骨頭の後方滑りに影響を与えた可能性は本研究においては低いと考えられた。今回の結果から,股関節屈曲0°から10°での大腿骨頭の後方滑りが減少していた原因を断定することは困難であり,また,大転子の軌跡が真に大腿骨頭の動態を反映しているかは議論の余地がある。今後は関節エコーなどを用いて,関節内の大腿骨頭の動態とそれに影響を与え得る因子を明らかにするとともに,本研究で用いた方法の妥当性を検証していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】他動股関節屈曲運動時に鼡径部につまりや疼痛を訴える場合,大転子の背側移動量が減少していることが明らかとなった点において意義があると考える。
著者
大森 絵美 西上 智彦 渡邉 晃久 脇 真由美 河田 健介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3P3054, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】日常臨床上,気象の変化による痛みの増強を訴える症例をよく経験する.これまでに,佐藤らはモデルラットを用いて気圧・気温の低下が痛み閾値を低下させることを明らかにした.また,国内で実施された「健康と気候に関するアンケート」の調査結果において,一般生活者及び慢性疾患患者の約7割が天候や季節変化による体調への影響を経験していることが報告されている.しかし,臨床現場において,実際に,気圧・気温の変化が痛みを惹起しているかは明らかでない.そこで,本研究の目的は気圧や気温が痛みに関与するか検討することである.【方法】対象は本研究を理解し同意が得られ,調査期間中に他に痛みが増強する要因がなかったことを確認した本院外来通院患者21名(男性7名,女性14名,平均年齢68.3±13.0歳)とした.まず,調査初日に気象の変化が痛みに影響するかについて意識調査を行った.痛み,気圧,気温の調査は10月中旬から同年11月中旬の不連続な計10日間に行った.痛みの程度は毎回午前9時から午前10時の間にvisual analogue scale(以下:VAS)を用いて評価した.気圧・気温については気象庁ホームページより,本院から最も近い観測所のデータを参考にした.解析対象は,気圧については調査日の午前9時における気圧及び気圧変化量(午前8時の気圧から午前9時の気圧を引いた値)とした.気温については調査日の午前0時から午前8時までの間の最低気温及び気温変化量(調査前日の午後10時の気温から調査当日の午前6時における気温を引いた値)とした.統計処理はSPSS11.5Jを用いて行った.まず,VASと気圧・気圧変化量・気温・気温変化量のそれぞれの相関係数を求め,相関係数0.8をカットオフ値として2群に分割し,気象の変化が痛みに影響するかの有無とのFisherの正確確率検定を行った.また,VASを目的変数とし,気圧,気圧変化量,気温,気温変化量を説明変数としたStepwise法による重回帰分析を行った.なお,有意水準は5%未満とした.【結果】気象の変化が痛みに影響すると回答したのは21名中16名であった.Fisherの正確確率検定において有意な差は認めなかった.重回帰分析によりVASに影響を与える説明因子として21名中20名に気圧を認めた.【考察】気象の変化が痛みに影響を及ぼすかの意識と実際の気象と痛みの関係は乖離していた.また,佐藤らは人為的に起こした気圧低下・気温低下においてモデルラットの痛みの増強を確認しているが,自然な気象変化の中で行ったヒトにおける本研究では,気圧・気圧変化量・気温・気温変化量のうち,気圧がもっとも痛みに影響を与える因子であった.本研究から,気圧の低下が痛みを増強していることが明らかになり,理学療法実施時には十分考慮した上での評価,治療が必要と考えられる.
著者
米元 佑太 京極 真
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1752, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】理学療法には多様な専門領域のあり方や関係を基礎付ける学問的基盤となる機能をもつメタ理論がない。その弊害は,理論や方法を選択するための基準が不明瞭となり,「どのような理学療法がよい理学療法か」という問いに答えうる価値判断の基準が存在しない点にある。本論の目的はこの問題を解消する理学療法のメタ理論を構築することであった。【方法】本論では,メタ理論工学を用いた理論研究を行った。理論構築の方針は,異なる立場からも了解可能な原理になるように論証することであった。その方針のもと,①全ての理学療法に共通する理路の整備,②理学(physical)=身体の原理的基礎付け,③それらに立脚した介入プロセスの提示を行った。【結果】①全ての理学療法に共通する理路原理的に考えると,実践とは「ある状況と目的のもとで確率的に遂行される」といえる。これを「実践の原理」とよぶ。状況や目的と全く関係ない理学療法や,実践し終える前から事後の状態を確定できる理学療法はないことから,理学療法は例外なく実践であるといえる。そのため,実践の原理は全ての理学療法に共通する理路であるといえる。②身体の原理的基礎付け哲学史を通覧すると,本論と同型の目的をもつ理路に現象学的身体論がある。主な論者であるフッサール,ハイデガー,メルロ=ポンティらの最も原理的な理路を抽出すると,身体とは主観と客観が同時に成立する場であり,人間の存在可能性の根拠であり,世界と人間を繋ぐ媒体として働き,情状性=気分と相関的に構成される対象でもある,と再構成できる。これを踏まえ,本論では「身体は超越論的主観性において気分相関的に構成された媒体であり,それは世界と主体を繋ぐものであると同時に,可能性を担保しつつ制約する構造である」という「身体の原理」を定式化した。③介入プロセスの提示①と②をふまえると,理学療法は主体の可能性を確保することを目的として実施されるといえる。したがって,理学療法は「何らかの状況で,対象の可能性の確保を目的として,身体に介入することであり,その有用性は事後的に決まる」と定式化できる。これを臨床に落とし込むと,1.身体の原理に基づく評価,2.対象の可能性の確保に向けた行動計画立案,3.理学療法介入の実践,4.有用性の検討の4ステップで表現できる。①~③で構成されるメタ理論を「原理に基づく理学療法(Principle Based Physical Therapy:PBPT)」と命名した。PBPTの価値判断の基準は「対象の可能性の確保」であり,それに寄与しているかどうかで理学療法の成否を判断できる。【結論】立場が異なっても了解できる理路を構築することによって,あらゆる理学療法を基礎付けるメタ理論を開発できた。良い理学療法とは何かという問いに対して,PBPTは目的を達成できる理学療法が良い理学療法であると答えることができる。
著者
山本 圭彦 浦辺 幸夫 前田 慶明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1211, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】静的ストレッチング後に,筋力発揮が低下することは知られている。これは,神経筋の生理的反応とされている(Marek SM, 2005)。ストレッチング後に筋収縮を加えることで,筋力低下が解消できると考えた。本研究は,ストレッチング後に筋収縮を伴う抵抗運動を行わせ,筋力がどのように変化するかを検討した。仮説は,ストレッチング後に筋収縮を加えることで筋力低下が解消するとした。【方法】対象は,健康な男性15名(平均年齢:20.9±1.5歳,身長:169.9±7.1 cm,体重:68.4±7.4 kg)であり,ハムストリングを対象筋とした。一側の下肢を安静肢,他側の下肢をエクササイズ肢(以下,Ex肢)に分けた。なお,安静肢とEx肢の測定は1日あけた。筋力測定は,等速性筋力測定器(Biodex system3,BIODEX社製)を用いて300°/s,180°/s,90°/sの3種類の角速度で計測した。ストレッチングの方法は,背臥位で股関節屈曲90°,膝関節屈曲90°から検査者が膝関節を他動的に伸展させた。最大膝関節伸展可動域を1分間保持するストレッチングを2セット実施した。測定手順は,両肢ともにストレッチング前とストレッチング直後に筋力を計測した。その後,安静肢は5分間の安静,Ex肢は5分間のエクササイズを実施した後にストレッチング5分後の筋力測定を行った。エクササイズは,等速性筋力測定器にて角速度120°/sでの膝関節屈伸運動を5回3セット実施し,セット間は1分間の休息を入れた。統計学的解析は,測定時期(ストレッチング前,直後,5分後)と2条件(安静肢,Ex肢)を2要因とした反復測定二元配置分散分析を用いて検討し,有意な効果が得られた場合には,FisherのPLSD法による多重比較を行った。いずれも危険率5%未満を有意とした。【結果】ストレッチング直後はストレッチング前と比べ安静肢,Ex肢ともにすべての角速度で7.4~11.2%筋力が低下した(p<0.05)。安静肢はストレッチング5分後も筋力低下(4.8~8.9%,p<0.05)が持続したが,Ex.肢は有意な減少を認めずストレッチング後の筋力低下は解消した。【結論】ストレッチングによる低下筋力は,筋収縮を加えることで即時的に解消することが確認できた。静的ストレッチングは筋力低下をもたらすため,スポーツ現場ではウォーミングアップに静的ストレッチングを取り入れることは考慮すべきという意見がある。しかし,今回の結果から静的ストレッチング後に筋収縮を加えれば筋力低下に対する問題は解決できることが分かった。成長期には,柔軟性を改善することが成長期障がいの予防につながるため,ウォーミングアップ時に静的ストレッチングの励行は有効であると考える。
著者
川井田 豊 福留 清博 上嶋 明 西 智洋 松下 寿史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B3P1321, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】 2007年任天堂からビデオゲーム機Nintendo WiiのコントローラーであるバランスWiiボード(以下Wiiボード)が発売された.端に4つの高性能ストレインゲージ式フォースセンサを内蔵したこのWiiボードは、重心動揺計として機能することが期待できる.臨床の場で重心動揺計は、身体の静的・動的バランスの客観的評価を可能とする.しかしながら、機器が高価であるため、われわれ理学療法士が客観的評価に重心動揺計を用いることは少ない.そこで、低価格なWiiボードをパーソナルコンピューター(以下PC)のMicrosoft Excelから利用できるか、そして重心動揺計として機能するか検討した.【方法】 PCにBluetoothで接続したWiiボードの制御は、公開されているWiimoteLibを利用し、Excelのシートに質量と足圧中心座標値を直接記録できるようにプログラミングした.Wiiボードを重心動揺計として利用できるかを検討するために、AMTI社製BIOMECHANICS PLATFORM BP400600-2000(以下床反力計)を用い、その上にWiiボードを設置し、さらにその上に人(健常成人一名33歳、167cm、78kg)が立ち、床反力計・Wiiボードの両方から重心動揺データを50Hzでサンプリングした.その後、両データに相関があるかを調べた.なお、Wiiボードの出力を、15kg、30kg、45kg、60kg、70kgの重錘を用い床反力計を基準として較正した.この研究は鹿児島大学医学部疫学・臨床研究等倫理委員会の承認を得て実施した.【結果】 ExcelからWiiボードを制御できることを確認した.こうして得たWiiボード出力と床反力計出力(質量)との間には相関係数0.999を得た.重心動揺では、前後方向座標値、左右方向座標値の相関係数が共に0.989であり、回帰直線の傾きはバランスWiiボードに対して前後方向が0.996、左右方向が0.987、と傾きはほぼ1であった.【考察】 今回の結果より、Wiiボードと床反力計両者の足圧中心座標値の相関関係は前後方向左右方向共に0.989と線形性を前提とした回帰分析を許すことがわかった.さらに、回帰直線の方程式も、足圧中心座標値は前後方向の傾きが0.996、左右方向は0.987と、両座標値はわずか1%の差しかなく、よく一致していることがわかる.以上の結果から、Wiiボードは重心動揺計と同じ機能を有するといえる.それにもかかわらず、Wiiボードは実売価格9000円程度と安価であり、数百万円する床反力計と同じ測定結果が得られたことは、理学療法における重心動揺計を利用した客観的評価の観点から普及・利用が期待できる.
著者
大町 聡 宮本 梓 岩崎 翼 福田 潤 鈴木 美幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb0484, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 周径の測定は筋の肥大や萎縮の程度を簡昜に評価する手段として用いられている。また、大腿周径は大腿四頭筋(以下Quad)の筋組織厚や筋力を反映すると従来から考えられてきたが、ハムストリングス(以下Ham)との関係性について言及された報告は我々の調べた限りでは捕猟し得なかった。また近年、超音波測定装置において、人の骨格筋の筋組織厚の測定は高い再現性が確認されており、非侵襲的かつ簡易に測定が可能であるため、臨床の場において繁用されている。そこで今回は、大腿周径とQuad・Hamの筋組織厚について、さらには筋力との関係性についても検討を行い、大腿周径の測定は臨床の場において簡易にできる評価法であり、Quadの評価だけでなくHamも評価できるのかを明確にすることを目的とした。【方法】 対象は健常成人男性14名(平均年齢26.2±3.1歳)とした。周径の測定は、膝蓋骨上縁5cm・10cm・15cm・20cmとし、背臥位、膝関節伸展位にて1ミリ単位で測定した。筋組織厚の測定は、超音波測定装置(FUJIFILM社製)を用いて、大腿部前面筋(大腿直筋・中間広筋、以下RF)、大腿部前面内側筋(内側広筋以下、VM)、大腿部前面外側筋(外側広筋以下、VL)、内側Ham(半腱様筋・半膜様筋、以下MH)、外側Ham(大腿二頭筋長頭・短頭、以下LH)の測定を行った。RF、VM、VLの測定肢位は背臥位、膝関節伸展位、MH、LHは腹臥位、膝関節伸展位とした。RFの測定部位は下前腸骨棘と脛骨粗面を結んだ線と各大腿周径との交点、VMの測定部位は大腿骨軸に対して15°傾斜させた線と各大腿周径との交点、VLの測定部位は大転子と大腿骨外側上顆を結んだ線と各大腿周径との交点とした。MHの測定部位は、坐骨結節と大腿骨内側上顆を結んだ線と各大腿周径との交点とし、LHの測定部位は、坐骨結節と腓骨頭を結んだ線と各大腿周径との交点とした。深触子は皮膚面に対し垂直に接触させ、長軸にて実施した。RFの測定は5cmでの測定のみ共同腱が混在し、測定困難なため除外とした。筋力の測定は、BIODEXを用い、角速度60°/sでの膝関節屈曲、伸展におけるQuad、Hamの最大等速性収縮筋力を測定した。筋組織厚の測定は3回行い、検者内信頼性についての統計手法はICC(1、3)を用いた。また、Quad、Hamの周径・筋力・筋組織厚についてはピアソンの相関係数を求めて検討した。統計処理にはRコマンダーを用い、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 研究に先立って被験者には、研究の目的と方法を十分に説明し、同意を得た。【結果】 筋組織厚の測定の再現性はQuadとHamともにICC=0.96~0.99で各部位とも良好であった。周径と筋組織厚の相関係数は、VM(5cm/10cm)0.84/0.57、RF(20cm)0.86、VL(5cm/10cm/15cm/20cm)0.74/0.76/0.75/0.67,MH(5cm/10cm/15cm/20cm)0.83/0.84/0.77/0.67、LH(5cm/10cm/15cm/20cm)0.64/0.66/0.63/0.74であった。周径と筋力(5cm/10cm/15cm/20cm)の相関係数はQuad 0.61/0.68/0.66/0.70、Ham 0.53/0.65/0.61/0.66であった。筋力と筋組織厚の相関係数はVM(10cm) 0.60、RF(10cm/15cm/20cm)0.61/0.80/0.86、VL(10cm/15cm/20cm)0.81/0.66/0.79であり、MH・LHは相関がみられなかった。【考察】 Quadにおいて、一般に膝蓋骨上縁5~10cmでの周径はVMおよびVLが、15~20cmでは大腿全体の筋群が評価できるとされており、今回の結果からも周径5cmとVM(r=0.84)、周径10cmとVL(r=0.76)、周径20cmとRF(r=0.86)に最も強い相関を認め、一致した。Hamにおいても、最も強い相関を認めた周径10cmとMH (r=0.83)、周径20cmとLH (r=0.74)の結果はMRI装置を用いて筋断面積を算出した先行研究と一致した。したがって、周径の測定はQuadの評価のみではなく、Hamの評価においても有用であり、特に周径5cmではVMの筋組織厚、周径10cmではVL、MHの筋組織厚、周径20cmではRF、LHの筋組織厚とQuad、Hamの筋力を評価することが望ましいと考える。【理学療法学研究としての意義】 大腿周径は、Quadの評価だけでなくHamを評価する手段としても有用である。
著者
堂田 章一 尾田 敦 成田 大一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb0732, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 足趾機能や内側縦アーチなどの足部形態は下肢障害や運動機能,立位姿勢調節と関連が深いといわれている。先行研究では足趾で掴む(以下,把持)トレーニングに関しての報告が多い一方で,足趾で押す(以下,圧迫)トレーニングに関しては,その運動様式が日常生活での足趾の働きに近いという考察があるものの,その効果に関する報告はほとんどない。また,それぞれの足趾トレーニングで十分な負荷量,期間を設けている研究は少ない。そこで,本研究では把持と圧迫の2種類の足趾トレーニング効果を検討することを目的とした。【方法】 健常男子大学生30名30足(右足)を対象(年齢20±2歳,身長172.5±5.2cm,体重64.0±6.9kg)とし,対照群,把持トレーニング群(以下,把持群),圧迫トレーニング群(以下,圧迫群) の3群に各10名ずつ無作為に割り付け,足趾トレーニング効果の検討を行った。把持群には臨床で用いられるタオルギャザーを実施させ,負荷量は実施可能な最大量を設定した。圧迫群には最大努力下で足趾を床に押しつけ,6秒間保持させる等尺性収縮運動を実施させた。このそれぞれのトレーニングを1日1回,週4日,8週間継続させた。また,足趾の筋以外の因子を極力取り除くために各トレーニングは端坐位で実施させ,トレーニング終了の目安は自覚的に「ややきつい~きつい」と感じる程度とした。トレーニングは定期的に監視の下に行い,実施状況の確認や負荷量の調節を行った。効果判定のための評価はトレーニング介入前,介入2週後,4週後,6週後,8週後の計5回実施した。測定項目は把持筋力,圧迫筋力,内側縦アーチ高,重心動揺とした。把持筋力は足趾筋力測定器(竹井機器工業社製 TKK3360),圧迫筋力はデジタル体重計(オーム電機製)を用いて測定した。測定姿勢は端坐位,体幹を垂直位として膝・股関節屈曲90°,足関節底背屈0°とした。いずれも各2回の測定の大きい値を採用し,体重で除した体重比を算出した。内側縦アーチ高の指標としてはアーチ高率を用い,自然立位と片脚立位の2条件にて,荷重位での舟状骨高の足長に対する割合であるアーチ高率を算出した。重心動揺はアニマ社製GS-3000を用い,姿勢は両上肢を前方で組ませた開眼片脚立位で,30秒間の重心動揺を測定した。重心動揺のパラメータとして総軌跡長を採用した。統計解析は介入前の各測定値に群間で統計的に有意差がないことを確認した後,介入前に対する介入後の測定値の変化量に対してTukey-Kramerの多重比較検定を適用し,介入の効果を検討した。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 すべての被験者に本研究の主旨と方法について事前に説明を行い,研究協力への同意を得た。【結果】 対照群ではすべての測定項目にて有意差は確認されなかった。把持群では介入前と比較し,把持筋力が4週後,6週後(p<0.05),8週後(p<0.01)で有意に増加し,総軌跡長が6週後,8週後(p<0.01)で有意に減少した。圧迫群では圧迫筋力が介入前と比較し6週後,8週後(p<0.01)で有意に増加し,アーチ高率は介入前,介入2週後と比較し6週後,8週後(p<0.01)で片脚立位時に有意に増加した。【考察】 把持群では総軌跡長の減少が確認された。一方で圧迫群では総軌跡長に有意な変化を認めなかったが,片脚立位時のアーチ高率の有意な増加が確認された。総軌跡長に関しては先行研究を支持する結果となり,把持トレーニングが筋出力の協調性を向上させた可能性が考えられる。また,圧迫トレーニングによりアーチ高率が増加したことから,片脚立位時における足趾屈筋群,足底筋膜などの筋活動が増大し,舟状骨を頭側へ引き上げたと考えられた。さらに,圧迫運動は等尺性収縮であり,等張性収縮である把持運動と比較して舟状骨を引き上げる作用がより大きいことが推測された。これらの結果から足趾トレーニングを行わせる際には,治療目的により運動様式を考慮する必要性があると考える。今後は,圧迫トレーニングの効果とパフォーマンスとの関連を検討するとともに,アーチ高率の増加が静的,動的な場面での下肢のアライメントに及ぼす影響を検討することにより,その有用性を明らかにすることが課題とされた。また,本研究では有意なトレーニング効果は介入後4~8週で確認された。一般に筋肥大はトレーニング後4~6週後に生じるといわれていることから,今回得られたトレーニング効果は筋肥大に伴うものである可能性が考えられた。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果から,足趾トレーニングによる効果は運動様式の違いによって異なることが示唆され,治療目的に応じて足趾の運動様式を考慮する必要性があることが示された。
著者
筧 重和
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.GbPI1477, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】性同一性障害とは,医学的な疾患名である.性同一性障害の定義は,生物学的には完全に正常であり,しかも自分の肉体がどちらの性に所属しているかをはっきり認知していながら,その反面で人格的には自分が別の性に属していると確信している状態,とされている.治療としては,第1段階(精神療法),第2段階(ホルモン療法),第3段階(手術療法)の順で行なわれる.精神療法では,これまでの経過や今後の人生において,どちらの性別で暮らすのが良いのかを検討する.精神療法は,ホルモン療法や手術療法の前,あるいは継続中,終了したあとにも引き続き行なわれる.第2段階のホルモン療法は,十分な精神療法が行われた後に行なわれる.身体的,精神的な安定感を得るためにはホルモン療法が必要と判断された場合は,ホルモン療法を行なう.男性が女性性を望む時は女性ホルモンを,女性が男性を望むときは男性ホルモンが投与される.第3段階の手術療法は,外性器形成,乳房・内性器切除が必要とされた時に行なわれる.今回,入学試験合格通知後,性同一性障害である事の報告を受け対応を行なったので報告する.【方法】平成15年秋より大学病院にて,3~6ヶ月毎に精神科医師との面談治療を受け,並行して染色体検査や心理検査などを受けていた.翌年春より,院外の美容形成外科にてホルモン治療を開始した.ホルモン治療は,2週間隔で筋肉注射を行っていた.同年夏,同病院にて美容形成手術を行った.改名については,家庭裁判所へ申し立てを行い受理されていた.その後,理学療法士を志し平成16年入学試験受験に至った.入学後,戸籍変更を行うために性別再判定手術を受け,その後書類を家庭裁判所へ提出・受理を経て戸籍変更が認められた.【説明と同意】第45回日本理学療法士学術大会で発表を行うにあたり,本人の同意を得ている.【結果】入学に際し,厚生労働省(以下厚労省)に確認を行った.確認内容は,入学時の戸籍の性別と卒業時の戸籍の性別が変わる可能性があり,このような場合においても国家試験受験資格および国家資格取得に問題は生じないか、という点である.厚労省より,学校が入学を認めれば特に問題はないが文部科学省(以下文科省)にも確認をして欲しい,との返答であった.文科省に確認した所、厚労省との返答と同じであり,学校が入学を許可すれば問題ない,との事であった.問い合わせ,返答についてはすべて電話で行なった.厚労省,文科省の返答後,入学を希望する受験生と現在の状況確認を行なった.受験生よりの希望は,次の2点であった.戸籍上の性別ではないトイレの使用,更衣室の利用,であった.この点に関して,学校で協議し使用の許可を認めた.学校より受験生には,カリキュラムの中で体表解剖学実習や徒手筋力検査の演習講義があり,学生同士でも体に触れる事がある事を伝えた.この点に関しては,受験生より戸籍上の性別ではない学生とペアを組ませて欲しい,との要望があった。この点に関しては,教員がペアの組み合わせを配慮する事により,特に問題なく演習講義を受講することができた.入学後,特に大きな問題は起きず卒業している.【考察】今回,性同一性障害により,入学後戸籍が変わることは国家試験受験資格,国家資格取得に際して何の問題もなかった.学内の対応としては,教員が学生の状況を把握し,教員と学生が綿密に対応を検討する事で学内生活に支障をきたさないようにすることができた.養成施設として受入を行う際には,本人と綿密な打ち合わせを行い,入学後問題が起きないように対応することが重要であると考える.【理学療法学研究としての意義】さまざまな疾患や障害がある中でも,理学療法士を志す者は少なくない.理学療法士が医療技術者の一員として,またリハビリテーションに携わる中では,これらの者に対し門戸を開いていく必要がある.養成施設として入学を許可していく中では,理学療法士資格取得までの対応を今後更に検討する必要があると考える.
著者
池添 冬芽 小林 拓也 中村 雅俊 西下 智 荒木 浩二郎 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】近年,低強度の筋力トレーニングであっても疲労困憊までの最大反復回数で行うと,高強度と同程度の筋力増強・筋肥大効果が得られることが報告されている。しかし,疲労困憊までさせずに最大下の反復回数で低強度トレーニングを実施した場合,高強度と同等の筋力増強・筋肥大効果が得られるかどうか,また筋の質的要因に対しても改善効果が得られるかどうかについては明らかではない。本研究の目的は,健常若年男性を対象に低強度・高反復および高強度・低反復の膝関節伸展筋力トレーニングを8週間実施し,1)低強度・高反復トレーニングは高強度と同程度の筋力増強や筋肥大・筋の質改善効果が得られるのか,2)各項目の経時変化に両トレーニングで違いはみられるのかについて明らかにすることである。【方法】対象は下肢に神経学的・整形外科的疾患の既往のない健常若年男性15名とした。対象者を無作為に低強度・高反復トレーニング群(低強度群)と高強度・低反復トレーニング群(高強度群)に分類した。膝関節伸展筋力トレーニングは筋機能運動評価装置(BIODEX社製System4)を用いて,低強度群では30%1RM,高強度群では80%1RMの強度で週3回,8週間実施した。8回の反復運動を1セットとし,低強度群では12セット,高強度群では3セット実施した。介入前および介入2週ごとに1RM・最大等尺性筋力,超音波測定を行った。1RM・最大等尺性筋力測定には筋機能運動評価装置を用い,膝伸展1RMおよび膝関節70°屈曲位での最大等尺性膝伸展筋力を測定した。超音波診断装置(GEメディカルシステム社製LOGIQ e)を用いて,大腿直筋の筋量の指標として筋厚,筋の質の指標として筋輝度を測定した。なお,筋輝度の増加は筋内の脂肪や結合組織といった非収縮組織の増加を反映している。トレーニングの介入効果を検討するために,各項目について分割プロット分散分析(群×時期)を行い,事後検定にはBonferroni法による多重比較を行った。【結果】分割プロット分散分析の結果,1RM・最大等尺性筋力,筋厚および筋輝度のいずれも時期にのみ主効果がみられ,交互作用はみられなかったことから,いずれの項目も2群間で効果の違いはないことが示された。事後検定の結果,両群ともに1RMおよび最大等尺性筋力はPREと比較して2週目以降で有意な増加がみられた。また両群ともに筋厚はPREと比較して4週目以降で有意に増加し,筋輝度は8週目のみ有意に減少した。【結論】本研究の結果,両トレーニング群ともに筋力増強,筋肥大,筋の質の改善がみられ,その変化の程度や経時変化に違いはみられなかったことから,低強度であっても12セットと反復回数を増やすことによって,高強度3セットのトレーニングと同様の筋力,筋量,筋の質の改善効果が得られることが明らかとなった。
著者
久田 智之 工藤 慎太郎 颯田 季央
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101248, 2013

【はじめに、目的】腰背筋群は内側筋群の多裂筋と外側筋群の最長筋・腰腸肋筋からなると言われており,内側筋群と外側筋群は神経支配,機能とも異なることが知られている.その中で,内側筋群である多裂筋の機能は姿勢保持や腰椎のコントロール,障害予防など臨床的に重要である.多裂筋の筋機能を測定するために表面筋電図が多く使われているが,筋電図学的には腰背筋群を脊柱起立筋群として捉えていることが多く,内側筋群・外側筋群を分けて考えられていない.また,多くの研究で使われている筋電図電極貼付け位置は海外の報告を引用していることが多く,日本人の体型に適しているのかという検討はされていない.さらに,我々は第47 回本学会において,超音波画像診断より内側筋群において多裂筋の同定は困難な例も存在し,横突棘筋と捉えることが望ましいと報告している.そこで,本研究の目的は超音波画像診断装置を用いて,多裂筋を含む横突棘筋における従来の筋電貼付け位置の妥当性を検討することとした.【方法】対象は腰部に障害を有してない健常成人男性20 名(平均身長172.8 ± 6.1cm,平均体重61.6 ± 9.2kg)の右側とした.超音波画像装置にはMyLab25(株式会社日立メディコ社製)を使用し,測定はBモード,プローブには12MHzのリニアプローブを使用した.腹臥位にてL2・4 棘突起から3cm,L4 棘突起から6cm外側の3 部位を測定部位とし,短軸像を撮影した.固有背筋の同定は先行研究に従い,横突棘筋と最長筋を同定し,L2・4 棘突起から3cm外側の位置での横突棘筋の有無を観察した.さらに(a)棘突起から横突棘筋外縁までの距離,(b)棘突起から横突棘筋最表層までの距離,(c)棘突起から3cmの位置に存在する筋の筋厚を計測した.すべての測定は同一検者が行い,測定方法においては検者内信頼性が高いことを確認した(ICC(1,1)=0.90 〜0.99).また,L2・4 の棘突起から横突棘筋外縁までの距離と身長,体重,腹囲,上前腸骨棘間の距離の関係をspeamanの順位相関係数により検討した.【倫理的配慮、説明と同意】対象には本研究の趣旨,対象者の権利を説明し紙面にて同意を得た.【結果】L2 レベルにおいて棘突起3cm外側に横突棘筋の存在した例は2 例,最長筋の存在した例は18 例であった.L4 レベルでは横突棘筋の存在した例は4 例,最長筋の存在した例は16 例であった.L2・4 レベルともに,横突棘筋の表層に最長筋が存在した.L4 棘突起6cm外側にはすべての例において腰腸肋筋が存在した.また,(a)棘突起から横突棘筋外縁までの距離はL2 レベルで2.55 ± 0.41cm,L4 レベルで2.76 ± 0.36cmであった.(b)棘突起から横突棘筋最表層までの距離はL2,L4レベルともに0.39 ± 0.07cmであった.(c)棘突起3cm外側に存在する最長筋の筋厚はL2 レベル2.69 ± 0.01cm,L4 レベルで2.63 ± 0.55cmであった.棘突起から横突棘筋外縁までの距離はL2 レベルにおいて,上前腸骨棘間の距離のみ相関関係を認めた(r=0.44,p<0.05).【考察】表面筋電における多裂筋の電極貼付け位置はVinksらにおけるL4 外側3cmの位置が多く引用されている.しかしながら,本研究の結果からL4 レベルにおいて棘突起から外側3cmの深層には多くの例で多裂筋を含む横突棘筋は存在しないことが明らかになった.さらに,多くの例でL4 レベルの棘突起外側3cmには最長筋を主とする外側筋群が2 〜3cmの厚みで存在する.そのため,現在までの表面筋電における報告は腰背筋群の外側筋群の筋電位を測定している可能性がある.表面筋電の電極貼り付け位置として,横突棘筋が最表層部に来る位置が考えられるが,棘突起から横突棘筋最表層部までの距離は3 〜4mmとなり,棘突起に非常に近く,アーチファクトの影響を受けやすいと考えられる.また,Vinksらは最長筋の表面筋電の電極貼り付け位置として,L2棘突起外側3cm を提唱している.今回の計測においても,L2 外側3cmには最長筋を主とする腰背筋群の外側筋群が存在していた.そのため同部位での筋活動の測定は最長筋の筋活動を測定できている可能性が高い.L2 棘突起から横突棘筋外縁までの距離と上前腸骨棘間の距離に相関がみられた.骨盤から起始し,下位腰椎に付着する横突棘筋は隣接する椎体に停止する線維束と幾つかの椎体をまたいで停止する線維束に分類できる.後者ほど筋束の外縁を走行するため,より高位の横突棘筋は骨盤の大きさと相関したと考えられる.つまり,Vinksらの結果は黄色人種と比較して,大きな人種を対象にしているため,今回の測定結果の相違が生まれたと考えた.【理学療法学研究としての意義】本研究により従来の多裂筋の表面筋電でよく引用されていた電極貼り付け位置は多裂筋ではなく外側筋群の筋電を測定していた可能性がある.そのため従来の研究結果は電極の種類や貼り付け位置を考慮する必要がある.
著者
田中 武一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0627, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】ストレッチングの効果や生理学的な検討は様々な観点で研究されている。その中で可動域の変化を指標とした報告は多いが、そのほとんどが強度を明記していないことが多く、痛みを伴わない程度など主観的に設定している。また、ストレッチングは伸張痛を出現させないのが一般的であると言われているが、伸張痛を伴う強度でのストレッチングでも可動域の向上を認めるという報告もあり一貫していない。そこで本研究では、膝関節伸展位での股関節屈曲(SLR)ストレッチングにおけるハムストリングの筋活動電位(いわゆる防御性収縮)を定量化し、ストレッチング効果を検討することによって、筋活動電位の度合いが客観的な強度として使用できるかを明らかにすることを目的とした。【対象と方法】本研究に同意を得た健常男性10人(平均年齢29.2±4.7歳)を対象とし、測定姿位は背臥位とした。等尺性最大股関節伸展筋力を100%MVCとし、ストレッチングにおける筋活動電位は100%MVCに対する割合で定量化した。SLR角度は2.5%MVCの筋活動電位を認めた時点とし、ストレッチング前後で三回ずつ測定した。ストレッチングとSLR角度測定はBIODEXsystem3(酒井医療)を用いて、等速運動モードで設定速度2°/secにて実施し、ストレッチングは3セット行った。対象群はストレッチングをしない群(C群)、2.5%MVCの強度で20秒ストレッチングする群(S1群)、5.0%MVCの強度で20秒ストレッチングする群(S2群)の3群とし、各群はランダムに日を変えて行った。なお、S1群とS2群ではストレッチング中の伸張痛をVAS変法を用いて評価した。表面筋電図はMyoResearch(酒井医療)を用い、電極設置部位は半腱様筋の遠位1/3とした。統計学的検討には、対応のあるt検定、分散分析、多重比較を用いた。【結果】各群の平均変化率は、C群102.2±3.8%、S1群111.0±5.2%、S2群120.2±11.9%であり、ストレッチングの前後の角度は各群とも有意に増加した。また各群間の多重比較では、C群よりS1群が、C群よりS2群が、S1群よりS2群が有意に増加した。VASはS1群6.8±1.5よりS2群8.1±1.7の方が有意に増加した。【考察】一般的にストレッチングは伸張反射が起こらない痛みのない範囲で行うと言われている。しかしS1群よりS2群に有意な可動域改善を認めたことから、ゆっくりとした速度で5.0%MVCまでの強度であれば、伸張痛を伴ってもより強いストレッチングの方が効果的であることが示唆された。これは、SLRの可動性制限因子が主にハムストリングスだけであることに加え、防御的な筋収縮が起こることでより張力が増し、Ib群線維による自原抑制を助長したのではないかと考えられる。 今回の結果により、ストレッチングに対する客観的な強度設定として、ストレッチングにおける筋活動電位を指標とすることの有用性は示唆されたが、短期的な効果であり、その後の筋の弾力性の評価や長期的経過を今後検討していく必要がある。
著者
酒井 章吾 石橋 敏朗 浦辺 幸夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】様々なスポーツにおいて,運動中に声を発する場面をしばしば目にすることがある。これはシャウト効果(Shout effect)を期待しており,自ら発声することによって最大努力時の筋力が増加するというものである。シャウト効果については様々な先行研究があるが,筋出力時の言葉の種類について言及したものは少ない。筆者らは,もし言葉の種類によってシャウト効果に差が生じるのであれば,スポーツ場面で選手が発する言葉を選択することで,より高い筋力発揮ができると考えた。本研究では,母音の種類によるシャウト効果に違いがあるか検証を試みた。【方法】一般成人男性30名(平均年齢21.6±1.1歳)を対象に無発声,「あ」「い」「う」「え」「お」の各母音の最大発声をランダムに行い,各母音発声中の等尺性膝伸展筋力を測定した。筋力の測定には,Cybex 6000(メディカ株式会社)を使用し,1条件に対し2回測定を行い(筋出力時間は5秒間),測定間の休息時間は60秒間とした。また,各条件間の休息時間は10分間とした。測定肢位は,膝関節は60°屈曲位,背もたれ角度は110°(座面が基本軸)とした。統計処理には,PASW statistics 18を使用し,1元配置分散分析を行い,事後検定には,Bonferroniの方法を用いた。危険率5%未満を有意とした。【結果】無発声および各母音の発声時の筋力測定値の平均値を示す。無発声で2.70±0.53(Nm/kg),「あ」で2.97±0.63,「い」で3.01±0.52,「う」で2.88±0.66,「え」で3.00±0.47,「お」で2.90±0.57だった。「え」では無発声に対して有意に筋力が増加した(p<0.05)。「あ」「い」「う」「お」では無発声に対して,全て筋力が大きくなったが,有意な増加ではなかった(NS)。【結論】シャウト効果が生じる要因について,先行研究では,音刺激による心理的影響や脊髄前角細胞の興奮順位の増強により,筋力発揮が増加すると考えられている。また,「い」「え」を選択すると運動能力が向上したという報告もある。本研究結果では,「え」の発声時のみ,無発声時よりも筋力が増加した。先行研究では「い」「う」「え」の発声時に,精神的緊張が高まるとされており。この緊張と筋出力のタイミングが合致することで運動に対し有効に働くとされている。今回,「え」のみで筋力の増加が認められたが,発声に関与する筋や頸部周囲筋の特性を含めて検討を進めたい。
著者
八木 優英 建内 宏重 栗生 瑞己 水上 優 本村 芳樹 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0278, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】トーマステスト変法(MTT)は片側股関節屈曲により対側股関節を伸展位にし,その際に生じる股関節内外転運動や可動域制限を捉えることで,筋張力が優位に高い股関節屈筋を推定する評価方法である。この推定は各股関節屈筋が有する,解剖学的肢位での股関節屈曲以外の運動作用を基に行われる。しかし股関節伸展位では股関節内外転運動などで,どの股関節屈筋の筋張力が優位に増加するかは明確でないため,MTTの評価結果に科学的な裏付けがあるとは言い難い。そこで股関節伸展位での股関節運動時に筋張力が増加する股関節屈筋を明示し,MTTの解釈についてのエビデンスを得ることを目的として本研究を行った。【方法】対象は健常成人男性12名(23.8±2.7歳)であった。測定肢位は膝関節より遠位をベッドから垂らした背臥位で,骨盤を非弾性ベルトでベッドに固定した。腰椎の前弯が消失するまで非利き足の股関節を屈曲させ,その位置で被験者に両手で大腿部を保持させた。利き足を股関節伸展10°,外転0°,外旋0°,膝屈曲90°の肢位(基準条件)で検者が保持した。利き足股関節角度を基準条件から他動的に動かした外転条件(外転20°),内転条件(内転15°),外旋条件(外旋15°),内旋条件(内旋15°),伸展条件(伸展25°)の5条件と基準条件の計6条件で筋張力を測定した。測定筋は腸骨筋(IL),大腿直筋(RF),縫工筋(SA),大腿筋膜張筋(TFL),長内転筋(AL),中殿筋前部線維(GM)とした。筋へのストレッチ効果を除外するために,条件間に1時間以上休憩し,筋の測定順と測定条件順は無作為に決定した。硬さの指標である筋弾性率により筋張力を推定可能なせん断波エラストグラフィー機能(Super Sonic Imagine社製)を用いて各筋の筋張力を評価した。本研究では伸張による筋張力増加を評価した。そのため各条件で筋張力の増加した筋はMTT時に,測定条件と逆の運動方向に影響することを示す。統計解析は反復測定分散分析後,計画的検定として基準条件と他条件間でWilcoxonの符号付順位検定を用いて筋弾性率を比較した。有意水準は5%とし,計画的検定では筋毎にHolm法で補正した有意水準を用いた。【結果】一元配置分散分析の結果,全筋で条件間に有意差を認めた。ILでは基準条件(23.9:kPa)に比べ外転条件(41.6),外旋条件(35.8),伸展条件(43.0)で,TFLでは基準条件(18.7)に比べ内転条件(43.2)で,RFでは基準条件(30.1)に比べ内転条件(36.7),伸展条件(37.3)で,ALでは基準条件(12.7)に比べ外転条件(20.2)で筋弾性率が有意に高かった。【結論】本研究結果から,MTTでの伸展制限はIL,RFの,外転運動・内転制限はRF,TFLの,内転運動・外転制限はIL,ALの,内旋運動・外旋制限はILの筋緊張亢進または短縮を示す所見であることが示された。本結果は健常成人を対象とした研究ではあるが,MTTの解釈に有用な知見である。