著者
中川 ゆり子 金田 純平 林 良子 佐野 真弓 佐藤 正之 関 啓子
出版者
日本言語聴覚士協会
巻号頁・発行日
pp.174-183, 2010-11-15

MIT日本語版は発語失行の治療技法であり,その有効性は,1983年,関らにより確認された.しかし,それ以降日本語版に関する報告はなく,わが国で日本語版が普及しているとは言い難い.そこで,本研究の目的を①日本語版の有効性を客観的に再検証する,②音響分析で前後の発話特徴を比較する,こととした.対象は58歳男性,脳梗塞発症1年1か月後の重度Broca失語症者で,MITを10日間行い,前後の発話を比較した.MIT後,訓練課題およびこれと同アクセントの非訓練課題で音の正答数が有意に増加し発話明瞭度が改善したが,異アクセントの非訓練課題では改善しなかった.本研究では維持期の失語症者に,効果測定デザインを用いて短期介入を行い,介入効果と,その他自然回復などの要因を可能な限り区別した.発話判定を第三者が行った本研究はMIT日本語版の有効性を客観的に証明したといえる.