- 著者
-
田中 肖吾
石原 寛治
倉島 夕紀子
大野 耕一
山本 隆嗣
- 出版者
- 日本腹部救急医学会
- 雑誌
- 日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.1, pp.99-103, 2013-01-31 (Released:2013-04-17)
- 参考文献数
- 41
患者は86歳,女性。以前から左鼠径ヘルニアを自覚していたが放置していた。また認知症があり食べ物を飲み込む習慣があった。平成23年10月発熱を主訴に来院。触診上,腹部全体に圧痛および筋性防御を伴っていた。左鼠径ヘルニアは疼痛もなく用手還納は可能であった。血液検査上著明な炎症所見の亢進を認めた。腹部CT像上,わずかな遊離ガスおよび左鼠径ヘルニアを認めたが,穿孔部位は同定できなかった。また異物の描出も認めなかった。汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹したところ,Douglas窩膿瘍の中に爪楊枝を認め,左鼠径部に陥入していた小腸に穿孔部位を認めたために小腸部分切除を施行した。術後経過は良好で,術後6日後に鼠径ヘルニア修復術を施行した。その後家人より受診2日前に作った串揚げにつかった爪楊枝と串が数本無くなっていたとの報告をうけ,術後8日後にCTを撮影したところ,盲腸に線状の高吸収域を認めたため遺残異物と診断した。線状高吸収域は術後13日後には横行結腸に移動していた。術後15日後に大腸内視鏡を施行したところ横行結腸に串を認め,摘出した。経過良好で術後22日後に退院となった。異物誤飲に対しては詳細な病歴聴取と術後症状がなくても遺残がないかCT検査を行うことが重要と思われた。