著者
久保 正二 竹村 茂一 坂田 親治 田中 肖吾 中沼 安二 圓藤 吟史
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.763-771, 2014-12-31 (Released:2015-01-28)
参考文献数
30
被引用文献数
1

有機溶剤の高濃度暴露を受けた印刷労働者に,胆管癌が高率に発症した.胆管癌診断のきっかけの多くはγ-GTP高値の肝機能異常,CA19-9などの腫瘍マーカー上昇や超音波検査での異常所見であった.画像診断上,腫瘤像,胆管狭窄像,主腫瘍による末梢側胆管拡張像に加えて,主腫瘍と関係のない限局性の肝内胆管拡張像がみられた.主腫瘍は,腫瘤形成型あるいは胆管内発育型肝内胆管癌や乳頭型肝外胆管癌で,その多くは総肝管から肝内胆管第3次分枝の比較的大型胆管に存在した.広範囲の胆管に慢性胆管傷害像およびbiliary intraepithelial neoplasia(BilIN)やintraductal papillary neoplasm of the bile duct(IPNB)などの前癌病変がみられ,多段階発癌機序が推測された.ジクロロメタンや1,2-ジクロロプロパンにさらされる業務による胆管癌が,業務上疾病に分類され,新たな職業癌として認識されるようになった.
著者
石原 寛治 田中 肖吾 橋場 亮弥 大畑 和則 上西 崇弘 山本 隆嗣
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1223-1226, 2013-11-30 (Released:2014-02-05)
参考文献数
13

要旨:症例は30代の男性。3日前,左下腹部鼠径靭帯頭側を圧挫し出張先で近医受診,腹部所見・腹部X線検査で異常なく自宅安静となったが腹痛と発熱が増強し当院受診した。循環動態は安定し左下腹部の鈍的外傷痕も軽微であったが,腸蠕動音減弱と腹部全体の筋性防御を認めた。腹部単純X線・CT検査で両横隔膜下・S状結腸間膜側に遊離ガス像を認め下部消化管穿孔を疑い緊急開腹手術施行した。糞便による汚染はほとんどなく肉眼的にS状結腸間膜側の穿孔は1cm程度であったが,挫滅穿孔部を含めS状結腸部分切除し一期的端々吻合した。切除標本の検索で穿孔は間膜側半周におよんでいた。腹部鈍的外傷が軽微で受傷早期に消化管穿孔の所見がなくとも,腸間膜側損傷の場合は遅れて所見が出ることがあり,経時的腹部所見の観察が必要である。
著者
田中 肖吾 石原 寛治 倉島 夕紀子 大野 耕一 山本 隆嗣
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.99-103, 2013-01-31 (Released:2013-04-17)
参考文献数
41

患者は86歳,女性。以前から左鼠径ヘルニアを自覚していたが放置していた。また認知症があり食べ物を飲み込む習慣があった。平成23年10月発熱を主訴に来院。触診上,腹部全体に圧痛および筋性防御を伴っていた。左鼠径ヘルニアは疼痛もなく用手還納は可能であった。血液検査上著明な炎症所見の亢進を認めた。腹部CT像上,わずかな遊離ガスおよび左鼠径ヘルニアを認めたが,穿孔部位は同定できなかった。また異物の描出も認めなかった。汎発性腹膜炎の診断で緊急開腹したところ,Douglas窩膿瘍の中に爪楊枝を認め,左鼠径部に陥入していた小腸に穿孔部位を認めたために小腸部分切除を施行した。術後経過は良好で,術後6日後に鼠径ヘルニア修復術を施行した。その後家人より受診2日前に作った串揚げにつかった爪楊枝と串が数本無くなっていたとの報告をうけ,術後8日後にCTを撮影したところ,盲腸に線状の高吸収域を認めたため遺残異物と診断した。線状高吸収域は術後13日後には横行結腸に移動していた。術後15日後に大腸内視鏡を施行したところ横行結腸に串を認め,摘出した。経過良好で術後22日後に退院となった。異物誤飲に対しては詳細な病歴聴取と術後症状がなくても遺残がないかCT検査を行うことが重要と思われた。