著者
倉田 あゆ子
出版者
名古屋短期大学
雑誌
名古屋短期大学研究紀要 = BULLETIN OF NAGOYA COLLEGE (ISSN:0286777X)
巻号頁・発行日
no.55, pp.1-12, 2017-03-31

家族介護者支援が制度化されていない日本において、家族介護者支援に関する公的なサービスを探すと、それは介護保険法における「地域支援事業」の中の任意事業の1つである「家族介護支援」である。本論文では、まず日本における家族介護者の現状と家族介護者支援の必要性についてまとめ、介護保険制度成立以前の家族介護者支援と介護保険制度における家族介護者支援の変遷をたどり、今後の家族介護者支援について考察している。地域支援事業による家族介護者支援は、内容的には介護保険制度成立以前の特別対策からの流れをくみながら、現在の介護保険法における地域支援事業の中の任意事業の1つ「家族介護支援事業」として行われてきており、その実施は現在に至るまで「介護用品の支給」を除けば低率の状態が続いている。そもそも介護保険法は要介護者を主対象とした制度であり、介護者支援の先進国の「介護者法」のように家族介護者を主対象とする法制度が必要であり、家族介護者の生活をトータルで支援するための視点からの制度構築が求められている。