著者
倉田 繁雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.188-191, 2005-06-20 (Released:2018-08-25)
被引用文献数
1

「滑らかな運動や安定した姿勢を再獲得する。」このことは理学療法を実施する重要な目的の一つである。関節可動域制限(以下ROM制限)は, この目的を達成する過程において強力な阻害因子となっている。本稿では整形外科領域での理学療法経験から得たROM制限治療に対する私見を述べる。ROM制限の諸因子 ROM制限因子を「固さ」と「痛み」に大別する。前者を「ROM制限の直接的因子」(以下直接的因子), 後者を「ROM制限の間接的因子」(以下間接的因子)と呼ぶ(図1)。1. 直接的因子(固さ) 直接的因子をさらに「骨性因子」「関節構成体性因子」「筋性因子」「関節周囲軟部組織性因子」に分ける。1)骨性因子 (1)骨の変形 骨同士のぶつかりによるROM制限を指す。(2)副運動の消失 正常関節運動には必ず副運動(accessory movement)を伴う。例えば, 足関節背屈運動ではその最終域で「腓骨〜脛骨間が広がる」という副運動を伴う。この副運動が内固定により消失した場合, この固定が解除されない限り正常な背屈運動は出現しない。(3)異所性仮骨 例えば, 筋性仮骨が出現するとその筋の伸展性が極端に制限される。そのため当該筋が伸長される関節運動は制限を受ける。