著者
倉田 達
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.91-104, 1966-07-09

(1)全体として頻度の高い動詞はsing, tell, live, say,……を中心とした場合である。年代的には19世紀20世紀初期にかけて盛んに使用されたと云い得る。従って1930年前後から使用頻度は総体的に下降の傾向を示している。但しlive-lifeは20世紀に入ってから前世紀以上に良く使用され1930年以後の用例も多く,tell-taleは19世紀に良く使用されたが20世紀に入ってその用法はtell-storyに取って代られている。(2)同属目的語の前に形容詞を伴う場合形容詞と名詞との間には慣用性は見られない。(3)double object構文に用いられるcognate objectはsing-song, tell-storyの結合であるがこれらは動詞の性質に由来するものであろうし,又受身構文に用いられる結合にfight-battle, live-life, run-race, tell-tale等があるが此等両構文に用いられるcocrnate objectの種類は全体の極一部に限られていて頻度も低い。同属目的語を含む受動態構文に関しては次の如く三大別できる。i) fight-battle, run-raceの如く能動,受動両方に使用されるのもあるが,能動態構文に比し極めて低い頻度で受動態に使用されるlive-lifeの如きもの,ii) sing-song, say-wordを中心とするものは能動構文に多く使用されているが受動構文はない。又dream-dream其の他の如く能動構文の使用頻度の低いものはbreathe, dance etc.を中心とした場合の如く受身構文はない。iii) fight-fightは受動態構文のみで能動構文はない。以上の如く同属目的語を含む能動構文は受動構文を必ずしも形成できると限らないし又その逆も云い得る。(4)O. E. D.の定義或はH. Sweetの云うようにcoernate objectを取る動詞は'intransitive'である云いO. E. D.はdie-deathを示している。同様にlive-life, run-race, dream-dream, dance-dance……が同じ範疇に入る。同じintransitiveでも目的語を取る点で普通のSVと異なり,VとOの関係が意味上kindredという点で普通のSVOと異る。従ってSVとSVOとの中間的存在であるが構造はActor-Action-Goalと説明される。一部の結合であるが(3)の如くdouble objectや受身構文に用いられた場合は機能上からのみ見た場合は普通のtransitiveの動詞と異らない。唯普通のSVOOと異なるのは動詞と直接目的語とが意味上kindredであるという点だけである。(5)19世紀より20世紀初期にかけてcognate objectが盛んに使用された理由として,(i)市河博士の指摘するようにsing-song, tell-tale, live-life, dream-dream, breathe-breath, run-race, dance-danceの如くalliterationを踏むものが多いこと。又dream-dream, dance-dance等動詞と目的語とが完全反覆をする場合が或る程度多いことによるであろう。(ii) sing-song, tell-tale, dream-dream, dance-dance等,動詞と同属目的語がrhyme word となっているのも見逃せない。(iii)英語における名詞構文好みの傾向も理由の一つであろう。(iv)I型とII型との使用頻度を比較するとsing-song 6 : 15, tell-tale 4 : 4, tell-story 12 : 10, live-life 2 : 23, sav-word 9 : 6, fight-battle 1 : 4, dream-dream 1 : 5 ……となっていてJespersenの云うようにdream-dreamの場合及び同じ範疇に入ると思われるfight-battle, live-lifeに関してはI型は少いので'extremely rare'という表現はそのまま当るのであるが,tell-story, say-wordの結合の場合はI型の方が頻度は高い(tell-taleはI型とII型同じ)。此等3種のI型がII型と頻度が同一かそれ以上の同属目的語の場合には特に次の理由が考えられる。即ち同属目的語の前に不定冠詞や定冠詞が来た場合cognate objectをとる動詞も目的語も単音節語の場合が多いので----型の文章上rhythmicalなことも理由の一つであろう。此のrhythmicalなことはII型の場合も同様と考えられる。次にcognate objectの良く使用された文をC. Bronteから引用しておく。"Mr. Rochester, if ever I did a good deed in my life - if ever I thought a good thought - if ever I prayed a sincere and blameless prayer - if ever I wished a righteous wish, I am rewarded now. - C. Bronte, Jane Eyre (6)細江博士はcognate objectとadverbial accusativeは時に区別し難き場合のあることを述べているがその場合のcosrnate objectは類例と考えられるIII, IV及び,V型,VI型を指しているのであろう。以上usageを中心としてcognate objectを論じたのであるがusageや結語論の外に文体論・意味論よりの考察が行なわれなければならないがそれらは稿を改めることとする。