著者
仲里 到 倉科 巧 前田 伸悟 木村 雅巳 夏目 隆典 武田 尊徳 中村 有希 竹中 良孝 野口 千春 海田 長計
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.134, 2011 (Released:2011-08-03)

【目的】 当院では、理学療法標準プログラムを作成しH21年4月より運用している。理学療法標準プログラムとは、詳細な理学療法プログラムを組み込み、フローチャート・ステップアップ方式を導入した治療プログラムである。当院の特徴として毎年10名以上の新人セラピストが入職している。そこで、経験年数を問わず、提供する理学療法にばらつきが出ず、一定の質を保った理学療法を提供する事を目的に作成された。この理学療法標準プログラムの効果について検証を行った。 【対象と方法】 対象は、H19年4月からH22年12月までの3年間に当院整形外科に入院し、人工股関節全置換術を施行、理学療法介入があった症例のうち、後方視的にデータ収集が可能であり、創傷治癒に関わる術後感染や合併症のある症例は除外した70症例とした。方法は、群間分けを理学療法標準プログラム導入前の症例(以下A群)、50症例51股(男性14名・女性37名、年齢65.3±9.7歳)、理学療法標準プログラム導入後の症例(以下B群)、19例19股(男性6名・女性13名、年齢69.9±9.2歳)とした。入院前基本情報は、年齢、BMIとした。治療効果のアウトカムをT-cane歩行150m獲得までの日数(以下杖歩行獲得期間)、在院日数として、当院における理学療法標準プログラムの効果を検証した。統計処理は、R-2.8.1を用いてマン・ホイットニーのU検定を使用し群間比較を行なった。危険率は5%及び1%とした。なお、当院の倫理委員会より承認を受け実施した。 【結果】 入院前の基本情報としてA群とB群のBMI、年齢に有意差を認めなかった(p>0.05)。杖歩行獲得期間の平均はA群21.3±10.6日、B群10.6±3.0日で有意差を認めた(p<0.01)。在院日数の平均はA群34.2±10.1日、B群27.0±4.3日で有意差を認めた(p<0.01)。 【考察】 B群の杖歩行獲得期間と在院日数は短縮した。理学療法標準プログラムを導入する事で、患者個人の機能的、能力的な評価を着実に行い、期間ごとのステップアップ基準を設けることでリハビリの進行状況が確認できる。そのため、遅延した場合は、再評価を行い適切な治療を選択することで機能、能力が向上し杖歩行獲得期間、在院日数が短縮した。これらの結果より、当院における理学療法標準プログラムは一定の効果が得られたと言える。今後の課題として、経験年数が浅いセラピストとそうでないセラピストで杖歩行獲得期間や在院日数の短縮に有意差があるか検証していく。