著者
藤井 洋泉 大谷 彰一郎 倉迫 直子 石津 友子 田中 利明 香曽我部 義則 時岡 宏明 大野 貴司
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.49-53, 1998-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(staphylococcal scalded skin syndrome; SSSS)は一般的に乳幼児の疾患とされており,成人発症型はきわめて稀である。今回,椎体・膝関節炎を契機として発症した成人型SSSSを経験した。68歳,男性,腰痛,膝関節腫脹のため当院整形外科に入院し,第3病日より頸部,前胸部,四肢にびまん性紅斑,弛緩性水疱が出現した。Nikolsky現象は陽性であった。高熱,意識障害が出現し,呼吸・循環動態が悪化したためICU入室となった。膝関節液,動脈血より黄色ブドウ球菌を検出し,組織像は皮膚顆粒層の切断による表皮剥離であり,表皮剥脱性毒素(exfoliative toxin; ET)の産生能を認めたため成人型SSSSと診断した。乳幼児では予後良好だが,成人型は死亡率が高く予後不良であり,早期よりの強力な抗生剤投与と集中治療により救命できた。多くの成人型SSSSは免疫能低下患者に発生するが,本症例は明らかな基礎疾患の合併なく発症した稀な1症例である。