著者
日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.185-281, 2016-03-01 (Released:2016-03-18)
参考文献数
667
被引用文献数
3

本ガイドラインは,2012年10月に発足した日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会が作成した。海外では重症患者を対象とした栄養管理ガイドラインが複数存在するが,本邦には存在しない。そこで,国際ガイドラインでは言及されないが本邦で行われている治療,海外では行われているが本邦には存在しない治療なども考慮し,本邦の臨床に適応した推奨を提示した。各推奨作成にあたって,既存のシステマティックレビューとメタ解析,国際ガイドラインの推奨を流用することが可能かを検討し,必要であればシステマティックレビューを行った。なお,栄養管理が生命予後を左右することから,本ガイドラインの名前に「栄養管理」ではなく「栄養療法」を用いた。本ガイドラインは本邦初の重症患者を対象とした栄養療法ガイドラインであり,臨床の現場で適切に活用されることを期待している。
著者
平松 有 矢野 圭輔 湯通堂 和樹 今中 大 佃屋 剛 米澤 大 植屋 奈美 垣花 泰之
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.167-169, 2016-03-01 (Released:2016-03-18)
参考文献数
4

症例は60歳,男性。畑仕事中に竹箒で左前腕外側を受傷した。受傷9日後より左上肢の筋緊張,頸部後屈,開口障害が出現し,翌日当院へ紹介となった。破傷風と診断し,抗菌薬や破傷風トキソイドワクチン,および破傷風ヒト免疫グロブリン製剤の投与を行った。受傷部は既に痂皮化し,軽度の発赤,腫脹,熱感がみられるのみであったが,腫脹が続いたため第4病日に切開したところ,径10 mm×3 mmの竹片が摘出された。竹片の嫌気性培養にてClostridium tetaniが分離された。鎮静下に循環,呼吸器管理を行い,第55病日にリハビリテーション目的で転院した。Clostridium tetaniが分離培養されることは稀とされているが,今回抗菌薬投与中にもかかわらず,異物より分離培養されており,摘出できていなければ症状が遷延や再増悪していた可能性がある。破傷風を疑った場合には,創部での異物遺残の可能性を考え,積極的なデブリードマンと洗浄を行うことが望ましいことを再認識させられた。
著者
日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.569-591, 2017-09-01 (Released:2017-09-21)
参考文献数
178

日本集中治療医学会の重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会は,総論的なクリニカルクエスチョン(CQ)とその推奨で構成した「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」を2016年3月に発刊した。重症患者では臓器障害や病前合併症の状況に応じて,特殊な急性期栄養療法を要する場合も少なくない。その後,これらの個々の状況における栄養療法を行う際の臨床的補助となることを目的に,病態別のCQの立案とその推奨の作成を行い,「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン:病態別栄養療法」を作成した。本ガイドラインで対象とした特殊病態は以下のいずれかの条件に合致するものとした。1)国際ガイドラインでは言及されない治療が本邦で行われている病態(急性膵炎,中枢神経障害),2)国際ガイドラインで言及されている治療が本邦では一般的に行われていない病態(呼吸不全,急性腎障害,急性膵炎),3)国際ガイドラインで対象とされている患者群が本邦の一般的な患者群とは異なる病態(高度肥満),4)一般的な栄養療法を適応できない病態(肝不全),5)本邦の臨床現場で栄養療法の理解に混乱が見られる病態(呼吸不全,急性膵炎)。上記より,本委員会は,呼吸不全,急性腎障害,肝不全,急性膵炎,中枢神経障害,高度肥満の6病態を取り上げ,本邦の臨床に適応したCQを立案し,推奨を策定した。各推奨作成にあたっては,「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」と同様に,既存のシステマティックレビュー(SR)と国際ガイドラインの推奨を検証し,新規のSRおよびメタ解析の必要性を検討した。本ガイドライン作成においては,いずれのCQでも新規のSRを行う必要はなかった。本ガイドラインは,本邦初の重症患者を対象とした栄養療法ガイドラインとして先行刊行した「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン」の補遺として捉えていただき,併せて臨床の現場で広く適切に活用されることを期待している。
著者
日本集中治療医学会J-PADガイドライン作成委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.539-579, 2014-09-01 (Released:2014-09-17)
参考文献数
333
被引用文献数
1 5

本ガイドラインは,それまで日本集中治療医学会規格・安全対策委員会(当時)で進行中であった作業を引き継ぐ形で,2013年3月に発足したJ-PADガイドライン作成委員会が作成した,集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不穏・せん妄管理のための臨床ガイドラインである。その作成方法は米国で作成された「2013 PAD guidelines」に準じているが,内容は「2013 PAD guidelines」以降の文献の検討をも加えたばかりでなく,人工呼吸管理中以外の患者に対する対応や身体抑制の問題なども含み,さらに,重症患者に対するリハビリテーションに関する内容を独立させて詳述するなど,わが国独自のものも多い。わが国の集中治療領域の臨床現場で,本ガイドラインが適切に活用され,患者アウトカムの改善に寄与することが期待される。
著者
一二三 亨 小井土 雄一
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.355-357, 2013-07-01 (Released:2013-08-09)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1
著者
垂石 智重子 上松 友希 酢谷 朋子 高田 基志 鈴木 照
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.39-42, 2014-01-01 (Released:2014-01-22)
参考文献数
13

若年2型糖尿病に合併した糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoasidosis, DKA)により心停止を来した症例を経験した。症例は35歳,男性。2型糖尿病に対し内服治療を受けていた。全身倦怠感を訴え近医に往診を依頼した。診察中に意識消失したため当院救急外来に搬送された。到着後心停止となったが,31分間の心肺蘇生にて自己心拍が再開しICU入室となった。ICU入室時,著明な高カリウム血症と低ナトリウム血症,高血糖を認め,さらに浸透圧利尿による血液濃縮を認めた。軽度低体温療法を施行しつつ,血糖,電解質補正および循環管理を行った結果,第13病日に症状改善し,ICUを退室した。2型糖尿病は本来ケトーシス抵抗性であるが,本症例では清涼飲料水の多飲により,いわゆるソフトドリンクケトーシスを引き起こし,それに伴うアシドーシスなどが誘引となり高カリウム血症を来し心停止に至ったと考えられた。
著者
原田 大 内野 滋彦 瀧浪 將典
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.147-154, 2014-03-01 (Released:2014-03-19)
参考文献数
29

ICUでは一般病棟以上に積極的なチーム医療活動が必要不可欠であり,その一員を担う薬剤師の役割も重要となっている。また厚生労働省も,薬剤師は医薬品の管理責任者としてのみならず,処方内容を含めた治療計画への積極的な関与を行うよう指針を発表している。このような背景より,現在報告されている文献から情報収集し,ICUに薬剤師を常駐させる必要性について考察した。ICUにおける薬剤師の介入によって,医療費削減,薬剤関連エラーの減少,死亡率の減少などの効果が多くの文献において報告されており,薬剤師は医療経済への貢献だけでなく,安全な医療の提供や患者転帰にも大きな影響を与える可能性が示唆された。本邦においても,ICUに薬剤師を常駐させ,日々の診療に積極的に介入を行えば,その臨床的意義は大きいと考えられる。
著者
安田 英人 讃井 將満 日本集中治療教育研究会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.217-226, 2013-04-01 (Released:2013-05-14)
参考文献数
51

近年,米国のカテーテル関連血流感染症予防ガイドラインでは,皮膚消毒薬として0.5%を超える濃度のグルコン酸クロルヘキシジンを含有するエタノール溶液〔クロルヘキシジンアルコール溶液(chlorhexidine alcohol solution, CH-AL)〕の使用が推奨されるようになった。しかしながら本邦では,依然として10%ポビドンヨードを使用する施設が多い。CH-ALのポビドンヨードに対する優位性を示す研究結果が多いが,エビデンスレベルは必ずしも高くなく,CH-AL濃度による予防効果の違いも明確ではない。CH-ALの妥当性を評価するためには,カテーテル関連血流感染症(CRBSI)およびカテーテルコロニゼーション予防における0.5%を含めた複数のCH-ALとポビドンヨードの効果を比較検討する質の高い研究を行う必要がある。
著者
中道 園子 高田 幸治 福光 一夫 木内 恵子 北村 征治 山本 勝輔 里村 憲一 澤竹 正浩
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.141-148, 1998-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
18

1996年7月の大阪府堺市における大腸菌O-157感染症症例のうち,重症脳症を伴う多臓器不全症例を経験した。症例は7歳,女児。発熱・腹痛・血便を認めO-157感染症と診断された。第5病日より溶血性尿毒症症候群の発症と同時に急性脳症を合併し,意識レベルが低下した。2,3日で多発性脳梗塞が急激に悪化,また,血管透過性の亢進した活動性病変が長期にわたって持続し,経過中,心筋炎・血管透過性肺水腫などを合併した。血液透析・血漿交換・エンドトキシン吸着などの治療にもかかわらず,救命不可能であった。他臓器に比べ脳障害はとくに不可逆性で,進行が急速かつ重篤なためその早期診断と治療が最優先されるべきである。
著者
古川 晶子 森川 秋月 早川 峰司 澤村 淳 松田 直之 石川 岳彦 亀上 隆 丸藤 哲
出版者
日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.219-222, 2005-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
16

横紋筋融解症は薬物中毒,外傷,電解質異常,神経筋疾患などさまざまな原因により惹起される。今回,我々は水中毒による希釈性低ナトリウム血症とその補正過程で横紋筋融解症を発症した症例を経験した。水中毒による横紋筋融解症の発症は少なく,今回の症例では,低ナトリウム血症とその補正に伴う急激な血清浸透圧上昇が相加的に作用して横紋筋融解症を来した可能性が示唆された。
著者
梅井 菜央 安宅 一晃 嶋岡 英輝 木西 悠紀 菅 健敬 大塚 康義 宇城 敦司
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.405-408, 2012-07-01 (Released:2013-01-16)
参考文献数
10
被引用文献数
1

発熱を初発症状とする12歳の男児が,血液分布異常性ショック,肝不全,非乏尿性腎不全を呈して来院した。血液検査は,WBC,CRP,プロカルシトニン,サイトカインの上昇を示し,重症感染による敗血症性ショックと診断した。しかし翌日,心機能低下や皮膚粘膜症状に気づき,川崎病と診断した。川崎病は乳幼児期に発症し,年長児以降の発症例はまれである。また,川崎病は免疫系の異常により高サイトカイン血症に至り,敗血症と同様の症状を呈することがある。本例のように,年長児以降に感染を疑う血液分布異常性ショックを呈した場合は,川崎病も考慮する必要がある。
著者
矢野 隆郎 山内 弘一郎 丸田 豊明 丸田 望 窪田 悦二 竹智 義臣 恒吉 勇男
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.375-380, 2011-07-01 (Released:2012-01-15)
参考文献数
9

【症例】34歳,男性。【病歴と経過】化学工場で深さ2 mの35%塩酸タンクに転落し,約10分間全身が塩酸に浸り,転落から10分後(転落の目撃者なく最長予測時間)に発見され,約18分後に当院に搬送された。来院時,意識清明で発語も認めたが,顔面・頭部を含む全身熱傷のため気管挿管した。動脈血液ガス検査で,pH 6.76,PaCO2 26.3 mmHg,PaO2 268 mmHg,BE -27.8 mmol/l,乳酸値124 mg/dl,P50 98 mmHgと高度な代謝性アシドーシス,高乳酸血症,P50の上昇を認めた。重炭酸ナトリウム250 mlを投与したところ,PaO2 492 mmHg,P50 34 mmHgと一時的な改善を認めたが,多臓器不全が進行し2日目に死亡した。【結語】塩酸が皮膚から大量に吸収され,高度な代謝性アシドーシスとP50の上昇を合併した症例を経験した。症状の進行が急速かつ重篤であり,救命には至らなかった。文献上同様な報告は見当たらなかった。
著者
小竹 良文 佐藤 暢一
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.263-272, 2009-07-01 (Released:2010-01-20)
参考文献数
45
被引用文献数
1

重症患者管理において心拍出量測定による酸素供給量の評価は有用であるとされてきた。これまで心拍出量の標準的な測定方法は肺動脈カテーテルを用いた熱希釈法であったが,最近,低侵襲心拍出量モニタが注目されている。これらのモニタの評価にあたっては,精度の評価が重要となる。異なるモニタから得られる結果の一致度を検討する手段としては,相関分析や回帰分析よりも,Bland-Altman分析が適切である。Bland-Altman分析を適切に解釈するためにはいくつかの注意点が存在する。特に一致度の許容範囲をあらかじめ定義しておくことが望ましいとされているが,基準は確立されておらず,モニタの特徴に合わせた評価が必要である。また,繰り返し測定によって1人の対象から複数のデータを収集することが一般的になりつつあるが,この場合は特殊な統計学的処理を必要とする。本稿では自験例を示しながら,これらの点に関して解説を加えた。
著者
河野 崇
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.12-19, 2018-01-01 (Released:2018-01-01)
参考文献数
57

高齢手術患者の増加に伴い,術後神経認知障害への対策が重要課題となっている。術後神経認知障害として,術後せん妄と術後認知機能障害が挙げられる。術後せん妄と術後認知機能障害はそれぞれ異なる疾患単位と考えられているが,共通する病態として脳内炎症が注目されている。脳内炎症は,活性化したミクログリアから過剰に炎症性サイトカインが産生・放出された状態である。特に,海馬ミクログリアは加齢により炎症性反応性が増加することが知られており,高齢者に術後神経認知障害が生じやすい原因と考えられる。また,全身麻酔,手術侵襲に伴う全身炎症,痛み,急性ストレス反応,神経障害などは脳内炎症を誘発する。したがって,これらの要因を最小化することが術後神経認知障害の予防・治療に重要である。本稿では術後神経認知障害の病態に関する最新の研究動向を示すとともに,脳内炎症を標的とした予防・治療戦略を考察したい。