著者
側嶋 康博
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.205-206, 1993-09-27

従来の機械翻訳では文脈処理が行われないため、文脈に依存した表現は訳し分けは困難であった。これまで、対話文翻訳のための文脈処理として、ヒューリスティックに特定領域のプランを作成する手法、発話行為タイプ(IFT)の推移をn-gramなど統計的に処理する手法などが提案されているが、「文」を単位とした入力言語のモノリンガル解析に中心が置かれている。しかし、2.で述べるように、現実の翻訳では、文対応の割合は高くない。本研究は、用例主導翻訳の考えを文脈処理、特に訳語の選択に応用しようとするもので、IFTを付与したバイリンガル・コーパスを、対話文翻訳のための文脈知識として利用している。隣接するバイリンガル用例知識と翻訳対象とを比較して得点化し、最高得点の訳語を選択するこの局所文脈解析によリ、高頻出の「はい」「いいえ」「そうです」「が」「けれども」など、対話の進行に重要な表現の訳語を高精度で選択することができた。本稿では、この局所文脈解析の概要と、この処理を用いた翻訳実験の結果について報告する。