- 著者
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鈴木 厚
傍島 裕司
早川 哲夫
- 出版者
- 一般社団法人 日本糖尿病学会
- 雑誌
- 糖尿病 (ISSN:0021437X)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.3, pp.183-187, 2005 (Released:2008-04-11)
- 参考文献数
- 15
症例は59歳, 男性. 多発性膵管内乳頭腫瘍で膵全摘術を施行され, 術後血糖管理の目的で当院に転院した. 膵内分泌機能は完全に欠落し, 超速効型インスリン毎食前6単位のBolus法で高血糖が持続した. 就寝前に中間型インスリン (NPHヒトインスリン) を6単位追加し, Bolus-Basalの4回法に変更した後, 深夜から早朝にかけて低血糖を頻回に起こした. NPHインスリンを2単位まで減量したところ, 夜間の低血糖は消失したが, 今度は夕食前から急速に血糖が上昇した. 基礎インスリン分泌補充をNPHインスリンから持効型ヒトインスリンアナログのグラルギンに変更すると, 就寝前2単位投与で血糖値は安定した. 膵全摘後の糖尿病は, 深夜のインスリン必要量が極端に少なく, 従来のインスリン治療では生理的な基礎分泌の補充が困難であったが, 持効型インスリンにより安定した血糖を保つことが可能になったことで, 低栄養や合併症抑制による予後の改善が期待された.