著者
元山 公寿
出版者
智山勧学会
雑誌
智山學報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.45-60, 1989-03-31

隋の嘉祥大師吉蔵は、鳩摩羅什によって翻訳された『中論』などをもとに三論の教学を大成した。弘法大師は、この吉蔵によって大成された三論の教学を『十住心論』において第七覚心不生心として取り上げて、二諦説を中心に論じている。そこでこの小論では、この吉蔵の二諦説を明らかにすることを目的として考察してみた。吉蔵の二諦説の中心は、あくまでも約教の二諦説であり、これを於諦、教諦を導入して理論づけしている。また、この約教の二諦説をもとにして、二諦相即説を導きだし、これをさらに発展させて三種中道説を打ち立てている。また、吉蔵はこれとは別に、二諦を重層的に解釈して四重二諦説をも説いている。これらの二諦説を考察することによって吉蔵の二諦説が明らかになるものと思われる。