著者
遠藤 辰雄 高橋 庸哉 児玉 裕二
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

世界中の降雨の大部分は、それをもたらす上空の雲に0℃以下の温度領域が十分に含まれており、そこでは酸性雪の形成が支配しているはずである。しかもこの降雪は、採取した時に、降雪粒子の種類・大きさ・結晶形など形成過程の履歴の情報を知ることが出来るので、雨滴の場合より解析的な追跡が可能である。さらに、それらの最も効率のよい成長様式は、霰などの雲粒捕捉成長と雪片などを形成する気相成長とその併合過程の組み合わせによる様式の2つに大別される。しかも、この成長様式は、成長の初期に、いずれかに決定されると、途中で乗換がほとんどできないと考えられるものであり、この研究ではこの2つの様式について降雪試料を化学分析してみた。その結果、雲粒捕捉成長と気相成長による降雪は、それぞれ、硫酸塩と硝酸塩をを他の成分に比べて、顕著に卓越して、含有していることが明らかにされた。しかもそれらをもたらす降雪雲の雲システムから推定すると、前者は、都市である札幌でも郊外の石狩および遠隔地の母子里においても、ほとんど同じ程度の割合で、高い濃度で、検出されることから、いわゆる長距離輸送されて、雲粒に取り込まれて、溶液反応で酸化が促進したものと考えられる。また、後者は落下速度が遅く、かつ下層の風が弱い時に卓越する、降雪様式であること、さらに、札幌や石狩における、下層が陸風で明らかに汚染された気流の中を降下するときに、高い濃度が検出され、母子里では低い値であることから、雲底下の人為起源の汚染質を取り込んだものと判断される。後者の降雪に含まれる硝酸イオンは自動車の排気ガスが主な発生源と考えられるが、さらに、第2、第3番目を常に占める成分は、非海塩性の塩素イオンとカルシュウムイオンであり、発生源として、ゴミの焼却と路面のアスファルトの分散が考えられる。