著者
兒玉 幹夫
出版者
関東学院大学人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.102, pp.41-59, 2004

フランス革命のスローガンであった「自由,平等,友愛」は、広く近代社会の普遍的価値として認められている。自由と平等については、これまでしばしば論じられてきたが、友愛に関する議論は極めて少ない。そこで、まずフランス革命期に友愛思想がどのようにして登場してきたかを追究する。次いで、革命後にサン-シモンが博愛思想を展開するに至る思考過程をたどる。続いてコントによる愛他主義の社会学理論としての性格づけをおこなった。これらの思想をふまえた上で、友愛,博愛,愛他主義の社会学史上の意義を検討して、主観主義と客観主義の両面から研究する必要を主張した。最後に、友愛思想の現代的意義を探り、災害、福祉、国際協力などにおける組織的ボランティア活動に実践としての友愛を認めた。