著者
永野 雅英 芳沢 礼佑 織笠 俊樹 西澤 健吾 八子 多賀志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.1197-1201, 2011 (Released:2013-01-19)
参考文献数
12

症例は16歳, 男性. 既往歴なし, 冠危険因子なし, 喫煙歴なし. 通学バス内で突然胸部圧迫感を自覚し続いて意識消失した. 数分で意識改善したが胸部症状が残存しており当科受診. 頭部CT, 胸部単純X線写真, 心電図, 心エコー図検査などすべて異常なかったが, 心筋逸脱酵素上昇(CK/-MB 780/55) およびトロポニンT陽性を認め, 精査加療目的に当科入院となった. 入院後は症状なく経過し心筋逸脱酵素も低下した. 冠動脈CTで有意狭窄なし. 1肋間上方で記録した心電図も正常. 冠攣縮性狭心症精査のためにアセチルコリン(acetylcholine; Ach) 負荷冠動脈造影検査を施行した. 左右冠動脈ともAch 50µg負荷で, 入院前と同じ症状を伴う亜完全閉塞を示した. カルシウム拮抗薬内服開始のうえ退院. その後は症状なく当科外来通院中である. 今回われわれは, 多枝冠攣縮から急性心筋梗塞症を発症した未成年男性の1例を経験したのでここに報告する.