著者
八幡 正之
出版者
京都産業大学通信制大学院経済学研究会
雑誌
京都産業大学経済学レビュー (ISSN:21880697)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-28, 2016-03

本論文は、2001年から2014年までの個別銀行レベル(都市銀行・地方銀行・第二地方銀行)の財務データを用いて、地域銀行の資産構成および収益構造の現状について概観するとともに、近年、地域銀行の資産および収益に占める割合が増加しつつある有価証券業務に焦点をあて、有価証券運用が地域銀行の収益性や健全性といったパフォーマンスにおよぼす影響について、実証的な検証を行ったものである。 本論文で得られた主な結果は以下3点である。第一に、地域銀行(地方銀行・第二地方銀行)においては、有価証券投資収益比率や有価証券業務収益比率は、一部の推定を除いて、銀行のROAや自己資本比率に対して統計的に有意な正の効果をもち、地域銀行の有価証券運用の積極化は、収益性や健全性の向上に寄与する可能性が示された。第二に、いずれの業態においても、有価証券投資収益比率や有価証券業務収益比率は、ROAボラティリティに対して統計的に有意な正の効果をもたず、有価証券運用の増加は、必ずしも銀行収益の変動リスクを高めるわけではないことが示された。第三に、有価証券投資収益比率や有価証券業務収益比率のROAや自己資本比率に及ぼす効果は、係数の大きさで見ても、統計的な有意性で見ても、第二地方銀行において最も強く、有価証券運用が銀行の収益性や健全性を高める効果は、第二地方銀行においてより顕著であることが示された。