著者
吉村 有博
出版者
京都産業大学通信制大学院経済学研究会
雑誌
京都産業大学経済学レビュー = KYOTO SANGYO UNIVERSITY ECONOMIC REVIEW (ISSN:21880697)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-33, 2022-03

本論文はBernstein-von Mises定理に関する古典的な諸結果を概観し、現代的視点からその歴史的意義を明らかにするものである。具体的には定理に関連する書誌情報、定理の形式、当時の動機、応用例を整理し、頻度論統計学との関連を概観する。本論文の主要な貢献は定理の古典的諸結果の歴史的意義と、拡張された現代の定理との関連の解明である。特に、先駆的貢献者の間で事後分布の漸近正規性を導く動機は大きく異なり、その一部は信頼区間の正当化が動機に関連したことを指摘する。さらに、定理の発展には中心極限定理の発展や確率の公理化の運動が強く影響したことを指摘する。加えて、尤度関数の任意性、事前分布の特定化からの独立性、そして区間を代用する可能性の起源はベイズ統計学史の極めて初期に遡れることを指摘する。
著者
橋本 和明
出版者
京都産業大学通信制大学院経済学研究会
雑誌
京都産業大学経済学レビュー (ISSN:21880697)
巻号頁・発行日
no.1, pp.105-144, 2014-03

2006~2011 年度の中核市の生活保護費(扶助費)及び児童扶養手当(扶助費)の地方交付税の算入不足は、生活保護費は2006 年度に64 億円余りに達したが、2011 年度には逆に26億円余りの算入過大となり、児童扶養手当は2006 年度に48 億円余りに達したが、2009 年度以降算入不足は解消され、2011 年度には9億円余りの算入過大となった。しかし、各団体間の算入過不足の格差は解消されておらず、その要因を分析した結果、生活保護費は、各扶助費の費目毎に設定された扶助別単価が実単価と乖離するほど算入過不足が発生することが実証され、児童扶養手当は、密度補正に用いる単価が本来の地方負担分の単価よりも低く設定されていることで支給者数の多寡が適切に反映されないとともに、所得制限による一部支給者と全部支給者の差による団体間の単価差も格差の要因であることが判明した。地方交付税は地方公共団体の一般財源であり、各団体によりその多寡が生ずるのはやむを得ないことであるが、生活保護費や児童扶養手当のようにその事務執行に裁量の余地が乏しいものは、可能な限り算入過不足が発生しないように算定がなされるべきである。
著者
八幡 正之
出版者
京都産業大学通信制大学院経済学研究会
雑誌
京都産業大学経済学レビュー (ISSN:21880697)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-28, 2016-03

本論文は、2001年から2014年までの個別銀行レベル(都市銀行・地方銀行・第二地方銀行)の財務データを用いて、地域銀行の資産構成および収益構造の現状について概観するとともに、近年、地域銀行の資産および収益に占める割合が増加しつつある有価証券業務に焦点をあて、有価証券運用が地域銀行の収益性や健全性といったパフォーマンスにおよぼす影響について、実証的な検証を行ったものである。 本論文で得られた主な結果は以下3点である。第一に、地域銀行(地方銀行・第二地方銀行)においては、有価証券投資収益比率や有価証券業務収益比率は、一部の推定を除いて、銀行のROAや自己資本比率に対して統計的に有意な正の効果をもち、地域銀行の有価証券運用の積極化は、収益性や健全性の向上に寄与する可能性が示された。第二に、いずれの業態においても、有価証券投資収益比率や有価証券業務収益比率は、ROAボラティリティに対して統計的に有意な正の効果をもたず、有価証券運用の増加は、必ずしも銀行収益の変動リスクを高めるわけではないことが示された。第三に、有価証券投資収益比率や有価証券業務収益比率のROAや自己資本比率に及ぼす効果は、係数の大きさで見ても、統計的な有意性で見ても、第二地方銀行において最も強く、有価証券運用が銀行の収益性や健全性を高める効果は、第二地方銀行においてより顕著であることが示された。
著者
坂本 大祐
出版者
京都産業大学通信制大学院経済学研究会
雑誌
京都産業大学経済学レビュー (ISSN:21880697)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.80-104, 2014-03

我が国の近代水道は明治 20 (1887 )年横浜で初めて創設され、その後、全国で創設・普及していく。本稿は、創設期の近代水道がどような背景で整備され、その財源を日本経済そのもが未熟であった当時にどのように確保し、ま水道経営を維持させてきかを、明治20年から大正3年に整備された近代水道施設を対象にして整理・考察したものである。そして、近代水道整備事業の財源70% 以上が地方債を占め、そのおよそ半分が外資であったこと、また水道料金の適切な設定などによる水道経営を行うことにより地方債の元利償還を図り、水道を経営的に破綻させることなく、常に安全な水を供給できる水道として維持させきた、という史実を明らかにした。
著者
坂本 大祐
出版者
京都産業大学通信制大学院経済学研究会
雑誌
京都産業大学経済学レビュー (ISSN:21880697)
巻号頁・発行日
no.1, pp.80-104, 2014-03

我が国の近代水道は明治 20 (1887 )年横浜で初めて創設され、その後、全国で創設・普及していく。本稿は、創設期の近代水道がどような背景で整備され、その財源を日本経済そのもが未熟であった当時にどのように確保し、ま水道経営を維持させてきかを、明治20年から大正3年に整備された近代水道施設を対象にして整理・考察したものである。そして、近代水道整備事業の財源70% 以上が地方債を占め、そのおよそ半分が外資であったこと、また水道料金の適切な設定などによる水道経営を行うことにより地方債の元利償還を図り、水道を経営的に破綻させることなく、常に安全な水を供給できる水道として維持させきた、という史実を明らかにした。
著者
周 艶
出版者
京都産業大学通信制大学院経済学研究会
雑誌
京都産業大学経済学レビュー (ISSN:21880697)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.17-35, 2017-03

本研究は、Knobe 効果を経済学実験によって検証したものである。Knobe(2003)は人々は悪い副作用を意図的とみなす一方で、良い副作用を意図的とみなさない傾向をもつことを指摘した。哲学分野では、様々な哲学実験を実施し、被験者に、様々な仮想的状況を示した上で、公平無私な第三者の意見を求めるが、被験者が正直に回答している保証がない。本研究は、従来のKnobe効果での副作用(外部性)を引き起こす意思決定者と副作用(外部性)を引き受ける相手との親疎関係を切り替え、謝金に基づいて利己的行動を誘発させる経済実験を行うことによって被験者の回答の信頼度を高める。実験した結果、Knobe効果の普遍性を確認できた。つまり、Knobe効果は副作用(外部性)を引き起こす意思決定者と副作用(外部性)を受ける相手間の親疎関係によらず存在することが示唆された。