著者
鷹津 英 八木 佑加子 大前 隆仁 山口 崇
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.267-270, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
12

本邦では腎不全患者に対してヒドロモルフォンを使用し,神経毒性を呈した報告は多くはない.この度,腎機能障害患者に対してヒドロモルフォンを開始または増量したところ,せん妄を呈した症例を2例経験した.症例1ではがん性疼痛に対してヒドロモルフォン持続注射を2.4 mg/日から3.6 mg/日に増量する過程でせん妄が出現した.減量後,せん妄は改善した.症例2では咳嗽・呼吸困難に対してヒドロモルフォン2 mg/日の内服を開始したところせん妄が出現し,中止後改善した.それぞれヒドロモルフォンによりがん性疼痛や咳嗽・呼吸困難は改善されていたが,有害事象によりヒドロモルフォンの継続が困難なため,オピオイドスイッチングを要した.腎不全患者に高用量,長期間のヒドロモルフォンを使用することで神経毒性を呈する報告はあるが,少量・短期間の投与でも神経毒性を呈することを経験した.