著者
大江 慶治 八谷 百合子 高橋 有嘉子 織田 進 高原 和雄
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.279-288, 1992-12-01

産業医科大学医学部学生の1991年度定期健康診断の成績に重回帰分析を行い, 各種成人病のリスクファクターとしての肥満の意義について検討した. 【○!1】1979年から1991年までの医学部学生の肥満度の平均値は年毎に増加した. 【○!2】1991年度全員の成績で肥満度の増加が血清GPTの上昇に大きく関与することを示す成績が得られ, この所見は肥満者においてはより顕著であったが, 非肥満者では認められなかった. 【○!3】肥満度のGPT上昇への関与は, 過去常に肥満度10%を越す恒常肥満者においては認められたが, 10%内外を変動する変動肥満者では認められなかった. 【○!4】収縮期血圧には肥満度よりも赤血球数の関与が大であった. 【○!5】総コレステロールに対しては, 肥満度を含む代表的な11項目のいずれも特に関与する所見が得られず, 健診項目以外の何等かの指標の関与が疑われた. 以上の所見から, 学生の肥満は, 恒常的となった段階で肝機能障害の発生に大きく関与することが示唆された.(1992年2月5日 受付,1992年10月5日 受理)